第二話 剣の立ち合い
朝の絶品料理を食べ終えた俺たちは、学校にもっていく鞄を持った。長い肩にかける紐と鼠色の鞄である。メアリも一緒の学校なため投稿は3人である。
ドアが開き、メアリの短髪な茶髪がなびいた。今日は剣の立ち合いがあるためとても嫌な気分である。
「クレイス、そんなやつれた顔すんなって」
「はぁ...仕方ないだろ。嫌なものは嫌なんだよ...」
「まぁ、クレイスは弱いからな」
「悪かったな...」
そう、俺は弱いのだ。剣の立ち合いをしても、すぐに俺は腹に木刀を当てられ負けてしまう。恐らく相手も溜息しかつかないのだろう。
俺の視界を、俺の橙色の髪が少し遮る。俺の髪は少し長くて、色は橙色である。
「今日も魔法の勉強だぁ・・・」
「メアリは実際戦わないからいいよなぁ・・・」
「クレイス、まさか魔法でもやる気か?」
「で、できないよ・・・」
魔法を習っているメアリが羨ましいのは本当だ。マティスの母もある程度魔法を習得している。火や、水や、氷。一般的な魔法は大人になって使えて当然だ。
火や氷、更には雷や毒など。攻撃型になると大きな学校で訓練されるのだ。騎士だって簡単にはなれないのだ。
マティスとメアリと一緒に普通な会話をしているうちに、すぐ学校についてしまった。村の学校なため小さい学校だ。
入ってすぐマティスはもう教室に向かってしまった。メアリに別れもしないで。
仕方なく俺はメアリに振り返り、別れを言った。
「じゃあ女子は左だから、またなメアリ」
「うん、クレイス兄さん。がんばってね!」
励ましの言葉をもらって少し気分が上がった俺だった。まぁ痛い思いをするのは仕方ないのだ。男は立派な騎士になるっていうのがこの世界の決まりだからだ。
教室に着くと、繋がっている机が6つ並ぶ。椅子は計18。そう、18人がこの教室にいるのだ。もちろん全員男子。
すぐに担任の先生が来た。立派な布を着ている爺さんである。名前はキド。こっそり仇名はキド爺。
「さぁ皆席につけい・・・」
相変わらずゆっくりな喋りで眠くなってしまう。よくみんなは授業では頭がこくんこくんしている。俺もそのうちの一人だが。マティスはたまに爆睡している。
爺さん・・・先生から話されたのはもちろんあのことだ。
「さて・・・今日は剣の立ち合いがある。対戦相手はこっちで決めたぞい」
そういうと黒板にペタッと大きな紙が貼られた。あの爺さんは遅い動きで紙を貼っていた。
大きな紙には対戦相手と一本線で結ばれている。ちなみに俺の対戦相手。それは俺が嫌いな人だった。
クレイス-プーロウ
プーロウ。この学校では一番剣の扱いが上手で、俺は倒されるだけだなと思った。本当にしっかりあの爺は決めているのかと疑うばかりだ。
プーロウに目を向けると、鋭い目。髪は海藻みたいにゆらゆらしていて、ふわふわしている。いっつも口はにやけている。白髪の奴だ。
「へっ、余裕だぜ」
「...はぁ」
俺はなんとも不幸だろうか。まぁこれが終わればしばらくないので今日も乗り切ろう。
剣の立ち合いは一人一回の闘いである。今日はそれで授業が終わりなためすぐ帰れるのだ。だから気楽にいられるのだ。
もちろん痛いが、それは一瞬である。そして一瞬で戦いは決まる。
しばらくキド先生の話があり、終わると皆は席を立ちあがった。学校の外にあるフィールドに移動するのだ。とは言ってもフィールドに立つのは戦う人のみだ。
俺の番はかなり最初なため、もう控室に向かっていた。
石レンガの壁、雑なカーテン、学校ではかなり古いもので、校舎はかなり痛んでいた。
壁を見ながら控室に向かっていると、横にいたマティスが話しかけてきたのだ。
「クレイスの相手って...プーロウだったっけ」
「あぁそうだよ。まさか相手がプーロウだったとは。キド爺はちゃんと決めていたのか...」
「まぁ俺の相手は弱い奴だから勝てると思うけどクレイスはもう勝てる自信は?」
「無いに決まっているだろ?全く、ただ痛いだけじゃないか...」
なんてキド爺の愚痴を言いながら俺たちは控室に入っていった。
俺は赤。プーロウは青の控室に入り、マティスは俺と同じ赤の控室だ。
俺は控室にあった木刀と手に取った。
「こんなもので叩かれるのか...はぁ...」
「けどこれがあるだろ?」
ひょいっとマティスは丸形の盾を俺に投げてきた。これも素材は主に盾であり、持ち手と盾の枠は鉄でできている。
手に取ると、かなり傷が多いが、へこんでいるだけだ。きっと何度も使われたのだろう。
「盾も上手く使えないよ俺は...」
「相手が振ってきたら防げばいいんだよ」
「簡単に言ってくれるな」
控室ではやはり鼓動が上がる。緊張も少しはするのだ。
服装は全く変わらず、ここでは木刀と盾だけ支給される。また、近くには医療セットももちろんある。
控室の椅子に座り、肩を落として俺の番を待っているとマティスが木刀と盾を持ち始めた。
「あれ?もうか?」
「あぁ。俺はこのあとだからな。クレイスも頑張れよ」
「あぁ...」
マティスは装備を持ったままフィールドへつながる扉を開け奥へ進んでいった。
俺の番も次期にくるだろう。少しのびをして深呼吸した。
外では木刀と木刀が激しく打ち合う音が聞こえていた。とても激戦のようだ。
戦っている人の次に入る人はその前の闘いを観戦することができる。つまり今の戦っている音が止んだら、マティスの番なのだ。
すると、試合が決まったようだ。音が止んだのだ。つまりマティスの番だ。
俺はマティスの次の次だ。マティスの試合は見れない。
キド爺が審判なため、はじめの合図もキド爺だ。
「はじめ!!!」
どうやらマティスの試合が始まったようだ。土を蹴る音、そして走る音。
外からぶつかりあう木刀の音。盾で防ぐ音。攻防を繰り返しているようだが、弱い相手らしくすぐ終わるそうだ。
すると、開始してから数十秒後。
音が止み、試合が終わったようだ。恐らく勝ったのはマティスだろう。
俺は椅子にかけていた木刀を手に取り、盾の持ち手を持ち、椅子から立った。
俺の番は次だ。それまでに少しでも体を慣らしておかないとな。しかし、負けるのは俺だ。
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俺の前の試合を見ていたが、なかなかいい試合だった。
そして、戦っていた二人がフィールドから出ると、先に入ったのはプーロウだった。
「へっ、雑魚が相手かよ」
「...」
別に何も言う必要はない。
俺は木刀をしっかり握りなおし、フィールドに立つ。
二人フィールドの中心に立ち、向かい合う形だ。
そして、一礼。
その後、俺たちは互いに20mの幅をとる。
風がなびき、俺の髪とプーロウの髪が揺れていた。服も揺れながら、俺は構えを取った。
腰を落とし、盾を構える。
俺はわかっている。今回も、負けるのは俺なのだ。そうするのだ。
キド爺が腹声を出した。
「はじめ!!!」
キド爺の声がフィールドに響くと、その瞬間プーロウは、にっと笑いながらすさまじい速度で俺のもとへと走り寄ってくる。
プーロウはとても攻撃型で、盾などあまり使わないのだ。プーロウは走りながら剣を後ろへ構えていた。
俺は右足を後ろへ一歩だし、盾を構える。
あまり動かないまま、プーロウが一方的に来るだけだ。
そして、5mまでくると、プーロウの右手に持つ木刀が上から降りかかる。
盾を構え一撃目を防ぐが、プーロウは攻撃後も動きを鈍らさず、下にある右手をすぐ上へ斜め切りする。
激しい勢いの攻撃をどうにか防ぐが、押される一方だった。
「おらおら!!!攻撃してみろよカスがぁ!!!」
「...」
鋭い目は、俺の腹だけを狙っていた。
しかし、俺はひるまず盾で防ぐだけだった。
だんだん後へ下がり、逃げ道も少なくなっていく。このままではいずれ負けてしまう。
俺は振り下ろされたプーロウの右手を見た時、盾をどかし、右手に持っている木刀を左へ振る。
しかし、それも見逃さないプーロウは俺の攻撃を止め、その勢いのまま俺の木刀が弾かれた。
カンッ!と軽い音だけがなる木。弾き飛ばされた俺の木刀はたちまち俺の後へ飛んで行ってしまう。
俺の右手には武器がない。つまり、攻撃手段が少ない。
「へへへっよえぇぇええ!!!」
俺の防いでいた盾も勢いでこじ開け、俺は体を見せる体勢へ持ってかれた。
そこを見逃さず、プーロウは暗い笑みで俺の腹へ木刀を思い切り横降りしてきた。
俺の腹へ思い切り痛い衝撃が走り、それは痛み、気持ち悪さ、苦痛が重なる。
お腹へ横降りされたため、苦しい衝撃も走る。
「うっぁ...」
苦しい声を出し、俺はそこで膝をついてしまう。
膝が土で汚れて、たちまち手をついてしまう。
息を切らし、倒れない体勢で俺は咳をしてしまう。
「ゴホッ・・・」
キド爺がプーロウ側にある手を上げ、大きく叫んだ。
「勝者、プーロウッ!」
俺は、いつも通り負けたのだ。
本当に、いつも通りに。




