やっちゃったけどスッキリ?
*誤字脱字は諦めて下さい。
*久しぶり過ぎて申し訳ございません。
「おえっぷ…………うっぷ………」
気持ち悪い。
食堂を後にした私はフラフラと覚束ない足取りで、外へと向かって歩いていた。
もちろんマーラインオンするためである。
料理が運ばれてくるまでは、確実にお腹は空いていた。食べて無いのに吐き出したい。
ううっ………きっと胃液しか出ないだろうけど、早く吐き出してスッキリしたい。
口許を押さえながら、ふらつく足元を見ながら歩いていた私は確かに前方不注意でした。
しかしこの後に待っている不運な展開には、私だけが悪い訳じゃ無かったと言い添えたい。全力で。
***
「ガハハハハハ! しっかし、ノビーの奴は情けなかったなぁ!」
「そうっすね、よもやジャイスさんに敵うはずもないってのに逆らうなんて」
「ガハハ! だよな? 俺、最強だよな?」
「シシシ………もちろんっすよ!ジャイスさんがこの街の冒険者の中では1番っすよぉ!」
「にしても、ノビーの奴にはもったいない位のマントだよな」
「そうっすね。対物対魔防御が付加されたマントなんて、ノビーにゃ宝の持ち腐れって感じでしたから、ジャイスさんに羽織られてきっとマントも喜んでるっすよ!」
「ガハハハハハ! そうだろそうだろぉ~」
Cランク冒険者であるジャイスは、本日のギルド依頼を完了させ、その上めったに手に入らないレアな装備品のマントを無料で入手出来た事でご機嫌であった。
腰巾着のネオの誉め言葉にも煽られ、マントを用もないのにバサバサと翻しながら歩いていた。
そんな時、ジャイスの前方からフラフラと覚束ない足取りで歩いて来る少女の姿があった。
しかしネオとの話に夢中だったジャイスは、少女の存在に全く気付いてはいなかった。
―――――――――――――――そして悲劇は起こった。
ビシッッッ!!!
「あぐっ!…………」
ジャイスが翻したマントの裾が、少女の顔面に直撃してしまったのだった。
そして悲劇の幕は上がる。
***
ちゃんと前を見ないでフラフラと歩いていた私が悪いってのはもちろん分かっている。
ただそれを差し引いても相手も悪かったと思う。相手だってこんな人が通る場所で、妙な動きをしていたのだからお互い様だろう。
しかし私が吐き気を我慢して歩いていたという事が、最悪の結果へと帰結する。
突如目の前に現れた真っ赤なマントで顔面を強かに打ち付けられた私は、その衝撃により精いっぱい我慢していた全てを、前方に居たその赤マントの持ち主である男性へと吐き出してしまった。
「あぐっ!…………っぷ! うげろえろえろえ………」
「ぎ、ぎぃやぁぁああぁぁぁぁぁ!!!」
「ヒューウ! 流石ジャイスさん! ゲロの浴びかたも豪快っすね!」
私がマントに粗相してしまったので、叫ぶ被害者の男性と、検討外れの誉め言葉を口にする男性。
「………うっ………ぷ。 ご、ごめんなさっ………」
まだまだ第2次マーラインオンタイムの予兆を感じつつも、直ぐに謝罪をしたのですが、ごめんですんだら警察は要らないと言うように、この状況下では謝って済む話では無かった様で………。
「ざけんなこのガキ! 汚ねぇもん吐きかけやがって! クッソ!このマントがいくらしたと思ってんだ!」
「うっひゃあっ! ノビーからぶんどった癖に、しゃあしゃあと高価アピールっすか? すげぇっす!俺には真似できないっす! 恥ずかし過ぎて」
そうか………誰かからせっかく横取りしたマントを汚されて怒ってるんだね?そりゃあ怒るか…………ん? 横取りって………盗んだとかじゃないよね?あれっ? う~ん………何だか良く分からん。
まぁこっちが汚したんだから洗って返すのが筋だよね?それはどの世界共通だよね?
「……うっ………。 ご、ごめんなさい。よければ洗ってお返ししまっ………ぷ」
うっぷ。 喋るの辛いな。 おえっ………。
「洗らう、だぁ……? そんなんじゃ到底許せねぇな!」
「よっ! 流石ジャイスさん! 心が狭くていらっしゃる!」
「ガハハ! そうだろそうだ…………ん? ネオ、お前さっきからちょいちょい俺のこと貶してねぇか?」
「あっははは! そんな訳ないっすよー。 俺、ジャイスさんの事、マジでそんけーしてるっすから!マジでリスペクトっすよー! ははは」
「お、う? そうか? ああ、そうだよな! ガハハハハハ!」
チョロい。
このジャイスって人、マジでチョロい。ネオって人に手のひらの上で簡単に転がされてる。
それにしても……こっちの世界にも、マジとかリスペクトっていう言葉が同じ意味合いで使われているとはね。ラズリエラの記憶には無いので、周りの貴族は使用しては無かったみたいだけど。
もしかすると、私の様な日本からの転生者とかが居たのかもしれなっ…………うっぷ。
またも|マーラインオンタイムの波《吐き気》が襲って来る。
もうこの場では吐かずに去りたいという私の微かな願いは砕け散る。
「ガハハ………っと! 忘れるところだったぜ! おう、ガキ! お前が汚したマントな、かなり高い装備品なんだ。だからそれと同等の物か、それ相応の金を寄越しな! 優しい俺様はそのどっちかだけで許してやるよ!」
ジャイスと呼ばれた男性は、その場からコッソリとフェードアウトしようとしていた私の襟首を掴むと軽々と持ち上げた。
それは本当に最悪のタイミングだった。
先で説明した通り、私は2度目のマーラインオンタイムの波が去来しており、吐き気を我慢している真っ最中で襟首を掴まれ引き上げられたのだ。
この後起こることは誰にでも想像出来ますね?
はいそうです。
今度はマントどころではなく、ジャイスさんの胸元へと2度目のマーラインオンをかましてしまったのである。
「おぶぇろえろろろろろ………………………ぐげぇ~」
「ぎ、ぎょえぇぇぇええぇぇぇ!!!」
「うっわ! ジャイスさんマジパネェっす! ゲロにまみれるプロになれるっす! ゲロにまみれることに関しては右に出る者の無い、いわば草分け的存在でありプロフェッショナル! 略してゲロプロ? いえーい!」
ネオさんは間違いなくジャイスさんを馬鹿にしていることだけは確実だ。
「……っ……………こ、の、ガキィ…………1度ならず2度までも俺様に酸っぱいもん吐きかけて来やがって! もうぜってぇ~許さねぇ…………」
怒れるジャイスさんと、それを馬鹿にしながら煽るネオさん、そして胃液を吐き出して、少しだけスッキリした私という奇妙なトライアングルが出来上がったのであった。
マーラインオンタイム。
賢者タイムとはもちろん別物。
リエラを吐かせてこっちもスッキリした。
しかし………小者臭漂う輩も出てきた。もちろん名前の由来は某有名ロボットアニメからのチョイスです。




