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後味の微妙な幕引き

1発書き。手直しはする…筈。


ついでに本日は2話投稿してます。時間差があるので、大丈夫でしょうか?

 ええ~?隊長が良いって言ったのだから、ここはこのままスルーすべき所では無いでしょうか?

 それに上司である隊長の決定に意見したのだから、このセロはただでは済まないんじゃないかな?


 私が固唾を飲んで今後の展開を見守って居ると、オケアノス隊長が落胆したような表情でセロを見ているのに気が付いた。


 落胆するってことは、少なくともオケアノス隊長の方はセロをちょっとは評価してたか、期待していたんでしょうね。

 だって何とも思ってた無かったのならば、落胆なんてしませんからね。



「………セロ!そこまでにしておけ。それ以上隊長のお決めになられた事に異を唱えると言うのならば、隊長の息子とはいえ許さぬぞ?」


 アディさんが止めに入ってくれますが、それよりも何か聞き捨てならない単語があった様な……?


「アディ、うるさいっ!お前は昔から父さ……いっ…いや、隊長の言葉にばかり従うよな……」


「……?それは当たり前だ。隊長は孤児であった私を一人前にまで育ててくれた、大恩あるお方であるし、何よりも尊敬すべきお方だ!それに剣技は神業!作戦の内容もなども素晴らしいですし、鍛え上げられた体躯も……」


 アディさんが胸を張ってオケアノス隊長の賛辞を言えば言うほど、セロの表情は面白くなさそうに歪んで行く。


 そしてそれを見ていた私の気分もセロと似たり寄ったりだ。何故かって?

 そりゃあ良識的なオケアノス隊長と、散々馬鹿兵士と罵りまくってしまっていたセロが親子だと知ってしまったからなのと、多分アディさん以外は全員気付いてしまったであろう、セロの切ない恋心に私の中に眠る暗澹たる思いが首をもたげて来る。


 相手に伝わらない切ない恋とか止めて欲しい。封印したノエルに対するラズリエラの気持ちが湧き出て来そうで、不安になる。

 伝わらない思いが、ノエルとラズリエラを彷彿として苦しいんだよ。くっそ。


 落ち着け……落ち着け……。ドキドキと私の胸で高鳴る動悸を抑えるために、私はゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 ふぅ……若干落ち着いて来たか…。指輪の時も思ったが、ラズリエラの気持ちは厄介だな。現在は理恵であった時の記憶が強いから普通に生活出来るが、もしもラズリエラの気持ちに引っ張られたら、どうなってしまうのか不安だった。


 私が自分の内部を落ち着かせて居るのに苦心している間に、セロはどんどんヒートアップしている様で、遂には自らこんな提案をしてしまう始末であった。


「そんなに……そんなに好きなら、アディは父さんとくっつけば良いだろっ!」


 セロのそんなやけくそな叫びに、この場の全員は直ぐにアディが怒りながら「冗談を言うなっ!」と、言い返すと思っていたのだが、待てども暮らせどもアディは何も言わない。


 怪訝に思った全員が黙り混んでしまったアディの方を窺うと真っ赤に染まった顔色で、オロオロしながら両目を高速で左右に揺らしているアディの乙女な姿があった。


 あっ…………これはアカンやつだ。


 今までは尊敬とかいう言葉で自分自身の気持ちを誤魔化して納得してきたが、セロの余計な一言でアディは気付いてしまったに違いない……自分の気持ちが本当は何であるかを。


 はぁ……ただでさえ面倒くさい関係性に、自ら爆弾をブチ込んだ自業自得なセロはと言うと、アディの可愛らしい反応を見てガックリと項垂れていたと思ったら、突然私を抱き上げて詰め所から走り去ったのであった。




 えっ?いや、ちょっ……待て待て待て~い!!

 HEYボーイ!落ち着け!私は関係無いでしょ?置いてけ、な?


「ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょぉぉぉぉぉ!!!」


 セロは私を抱き上げて走りながら、ずっと怨嗟の声を上げていた。


 う~ん……モロに私のお腹に向かって叫んでやがる。これは胎教に悪いな。黙らすか?


 私が本気で魔術で気絶させるかを検討していると、セロは大きな樹の下で急停止した。


 うおっとっと!急に走り出したり、止まったりと忙しい奴だな。全く。


 セロは私をその場に降ろすと、勢いよく膝を抱えて座り込み嗚咽し始めた。


「…………っ…………くっ…………」


 やれやれ…流石の私も声を圧し殺して泣く、成人男性を置いて去るほど外道では御座いませし、その悲痛な気持ちは今の私には痛いほど感じられる。

 だからセロの頭を優しく撫でながら励ましてやった。


「よーしよしよしよし!お前は墓穴を掘ったけど、ボチボチ頑張ったって!元気出せ、な?」


「ぐっ………ちく……しょっ………ズズッ……」


 んっ?あれっ?慰めになってないって?むしろ傷口に塩を塗りたくってるって?


 気のせいです。私は一生懸命慰めてますからね。



 ***



 しばらくすると落ち着いて来たのか、セロが私に謝って来た。


「済まない。関係が無い小さな子に迷惑かけてしまった」


「うん?まぁ気にしないで。貴方の方こそ……大丈夫なの?」


 セロは若干顔を歪ませると、小さくこう言った。


「今はまだ2人には会えない……辛すぎるから。アディは俺の初恋だったしな……」


 そうか……そうだよね。大丈夫か?なんて聞くんじゃ無かったな……大丈夫な訳ないのに。


 セロの歪んだ顔を見たらまたも私の胸がズキンッ……と痛んだ。



 湿っぽい空気を無理矢理にでも打破するために、私はセロ元気に話かけた。


「あっと!そうだった!私は城門を通っても良いよね?外に行かないと、私が受けた依頼が終わらないからね!」


 私がそう言うと、セロは思い出したかのようにその内容に食い付いて来た。


「はっ!そうだった!ウッカリ忘れていたけれど、あれは本当に偽造カードじゃ無いんだな?」


 おいぃぃぃぃぃ!!!忘れてたんかいっ!?


 これじゃあオケアノス隊長も息子に落胆するよね。分かります!


「しつこいですね。そんなに気になるんだったら、冒険者ギルドに問い合わせてみるなりすればいいでしょう?」


「………ギルドぐるみで証拠を隠蔽されたら、俺の手に負えない………」


 コイツ……自分の想像、というか妄想を引きずってやがる。


「あのねぇ……ギルドがそんな事する訳無いじゃない。普通に考えれば直ぐに分かることでしょ?」


 セロの頭をポンポンと軽く叩きながら諭してやる。


「くっ………。じゃあ君は本当に18歳なのか!?

 」


 そう言いながらセロは私のギルドカードを突き返してくる。

 というか、私のギルドカードをお前はずっと持ってたんかいっ!?

 ヤバイ……私のウッカリ病が活性化してきてる。


「あっ…当たり前でしょ?だってそのギルドカードは私のカードですものっ!ですから返して下さい!」


 ぐぬぬぬぬ…………。コイツ、何故私のギルドカードを握って放さない?羨ましくなったのか?欲しいのか?ならば自分のカードを作れば宜しい。

 だから速やかに私のカードを放さんかいっ!!


 私がギルドカードを取り戻すのに夢中になっていると、私の顔に影が出来る。


 何だ?と、思って視線をギルドカードから影の原因に向けた瞬間、私の頬にチュッと軽い交接音がした。


「……………………………???」


 何が起きたか理解できていない私から、セロは慌てて距離をとると、顔を真っ赤にしながらこう宣った。


「こっ……これには、邪な気持ちなんかこれっぽっちも無いんだからなっ!その……そう!ただの感謝の気持ちを伝えただけだからなっ!」


 セロは自分の言いたい事だけをさっさと言うと、こちらを振り返らずに脱兎の如く走り去って行ってしまった。



 はあ……そうですか。感謝の気持ちが頬に軽いキスですか……。

 その程度の事であそこまで顔が真っ赤になるとは……。

若いを通り越して青いな……と、思ってしまった私の手にはセロから取り戻したギルドカードが握られていたのであった。







セロの恋愛が絡んだ暴走だったって落ち。(しかもハートブレイク)


……からの立ち直りの速さたるや、セロ氏のポジティブさには、作者も度肝を抜かされる始末。


本当はセロとアディがくっついて終わるつもりだったんですけど、何故かこんな展開になった。





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