小話 兵士セロの不憫な話
読み飛ばしオッケーでっす。
うわぁぁぁぁぁ………。
俺は何をやってんだ?
さっきまで初恋の相手に振られたばかりだというのに、今日初めて会った少女の頬にキスするとかっ!?
俺はそんなに見境の無い男だったのだろうか………。
今まではアディ一筋だったから、恋愛経験は皆無に等しい俺だ。だっ…だから頬へのキスでこんなに動揺してるんだな、きっと。
って、あれっ?相手の合意も得ずに勝手にキスをして去るのは、もしかして罪になるのだろうか?しかも相手はまだ幼いと言っても過言ではない少女だ……。
いっ…いや待てよ?大丈夫だ。あの少女は確か自分の年齢は18歳だと言っていたし、たっ…たかだか頬にキスをしただけだから犯罪にまではならないだろ?
俺がキスした瞬間、あの少女は何をされたのか分からず、ポカーンとしたマヌケな表情だったな。
初めてだったのだろうか?何か純粋で凄く可愛い反応だったな。
そう思いながら俺が苦笑しながら歩いていると、前方から物凄いスピードで走り去っていくアディとすれ違った。
キラリと光る筋が、アディの頬に流れていた。
俺が逃走した後の詰め所で何があったかは明白であった。
きっと父さん……隊長に振られたのだろう。
あれは俺が投下した爆弾だったが、爆発させたのはアディ本人であったし、振られた俺が振った相手を慰めに行くのはどう考えても滑稽だろ。
俺はなけなしのプライドと、不用意な俺の発言のせいで隊長に振られて泣いていたアディを天秤にかけて、しばらく頭を悩ませていると背後から、肩を力一杯掴まれた。
「おい、セロ!テメー俺達の心のオアシスの、アディちゃんに何してくれちゃってんだよ?」
「そうだぜっ!なにもあんな衆人環視のある中で、告白させなくても、良いじゃねぇか!お前は最低な野郎だな~」
うげっ?隊でも屈強なベテラン兵士の、アンソニーさんとブレアさんに、両脇を固められた俺は、真っ青な顔色で弁解した。
「えっ?いえ、その……俺もわざとじゃ無かったですし、俺だって振られてんスよ?」
必死に弁解する俺を、2人とも冷めた目付きでジーーーーっと見てくる。
ううっ……何も言って貰えないのって、かなり堪えるな。
俺は動揺しまくってあの時のアディの様に、両目を左右にキョロキョロ動かしながらオロオロしてしまっていた。
「………流石は小さい頃から一緒に暮らしているだけあって、さっきのアディと困ったときの反応が同じだな?」
「だな。じゃあホレ、アディを追っ掛けてやれや?」
アンソニーさんとブレアさんは、頷き合うと俺にアディを追っ掛けろと言って来た。
何故だ?俺に道化になれとでも言っているのか?
困った俺が眉を下げながらもその場を動かないでいると、2人は唆すかの様にこう囁いた。
「おいおいセロよ、よく聞け?今アディを追っ掛けて慰めりゃ~まだお前さんにもチャンスはある!」
「そうとも!失恋の痛手を慰められたら、心理的に男も女もその相手にコロリと落ちるものだぜ?」
ブレアさんの失恋の痛手を慰められたら~の行に、心底俺は動揺した。何故かって?
さっきの俺は正にあの少女にコロリと落ちかけたからだ。
そういう心理的な気持ちだったのか………あれは。
だっ……だよな。うん。あれは…恋じゃない。自分でも言ったじゃないか、感謝の気持ちを伝えただけだって。はぁ……。
煮え切らない俺の態度に腹が立って来たのか、アンソニーさんとブレアさんは、俺の両腕をグイグイ引っ張っりながら、アディが走り去った方向に向かってズンズンと大股で歩いて行く。
ぎゃあーーーー。ジタバタ暴れてみたが、体格からして負けている俺には、2人の包囲網から脱け出すことは不可能であった。
最早俺はされるがままに、アディの元まで連行されたのであった。
この後どうなるかは、なるようになる!とだけ述べておきます。
そして、セロの胸に生まれた淡い気持ちは、ベテラン兵士の2人に見事に砕かれた。
失恋時に慰められると、その相手が異性だとそいつと恋人になる事ってままありますよね?
あれですよ。あの錯覚心理がセロの心に生まれちゃった的な?
それにリエラの本性は全く知らんしな。
頬にキスされて驚いてポカーンじゃありませんからね?
むしろセロの青さにポカーンだったんですから。




