魔石売買の恐ろしい(?)話
話を長くしないと、誓った矢先に……長いです。
本当に申し訳御座いません。
私の脱魂状態を治してくれたのは、やはりヘスさんであった。
放心している私の肩を何度かトントンと叩きながら、優しく語りかけてくれる。
「リエラ!リエラ!………大丈夫かい?」
肩を叩かれて正気に戻った私は、多少引き攣った表情ではあるが、ヘスさんに向けて大丈夫だと言う様に微笑んだ。
優しいヘスさんに、これ以上心配はかけられない。だって私はこれでも58歳だからね?まぁ、大分ラズリエラの精神年齢にを引っ張られては居りますが。
気を取り直して、ガメッティーさんに魔石の値段を確認する。
「ガメッティーさん、本当に私の魔石はこの金額ですか?」
私が脱魂中でも微動だにしなかったガメッティーさんですが、魔石の金額を確認すると、慌てたように私に近寄って来る。
「もしや金額が安すぎると疑っておられるのですか?この金額で私は妥当だと思いますが?」
ガメッティーさんは、どうやら私が安すぎると文句を言っている勘違いしたみたいです。
確かにこれは私の言葉不足です。
私はこんなに高過ぎて大丈夫か?という、確認のつもりだったんですけど………。
「いえ、金額に不満があるわけでは御座いません。ただ、驚いただけです。あと宝貨なんて見たことが無いですし、使用できる場所も限られてきますので、なるべく細かいお金で買い取ってもらいたいのですが?」
「ふむ…。そう言う事ならば、私も安堵致しました。して、細かくとおっしゃいますが、どの貨幣でお渡しすれば宜しいのですかな?」
うん?えっと………金貨で頂けたら有り難いですかね?使い勝手も良いですし、ヘスさんにもお小遣い上げれますしね?
「じゃっ…じゃあ、金貨でお願いします!」
「金貨で……ですか?そうなりますと物凄い枚数になりますが、大丈夫でしょうか?」
うっ……そうか…そうですよね?確かにガメッティーさんの言う通りだ。
金貨で貰うとなると、全部で1060枚って事だよね?
重さ的に、か弱い女の細腕じゃ持ちきれないのでは?
「そうですね……確かに重そうだし、第一嵩張りますよね………んっ?」
ヘスさんが、私の袖を軽く引っ張って来る。
何だろうか?
「どうしましたか?」
返事をしながら後ろを振り返ると、ヘスさんは私の耳元に口を寄せて来た。
なっ……ナイショ話ですかっ?うぐぐ……何故だかとっても恥ずかしい。
ヘスさんは私の恥じらいなどは、全く気付かない様で普通に耳元でコソッと話して来る。
「重さは大丈夫じゃないかな?リエラは確か魔法の鞄を持っているよね?」
ハッ!そうでした。うっかり失念してましたが、兄から頂いた魔法の鞄を持って居たんでした。
ヘスさん、ナイスアシストです!
私は懸念していた事が無くなり、意気揚々とガメッティーさんに返事をした。
「ガメッティーさん大丈夫ですっ!重さに関しての問題は無事に解決しました!金貨はその枚数でお願いします!」
私が大きな声で言ったので、ガメッティーさんはやや驚いた表情をされましたが、売買契約が成立したのですから笑顔で答えてくれました。
「お決まりでしたら、これ以上私が口を挟むのは野暮と言うもので御座いますね?それと金貨を1000枚ですと、やはり直ぐにはご用意できませんので、後日来店して頂く必要がございますが、宜しいでしょうか?」
「はっ…はい、それは勿論大丈夫ですが……」
あれっ?換金所に来たのに、お金がもらえないと困るのですが……。
「ああ、ご心配には及びません。濃い青の魔石の方の金貨60枚はこの場でお支払い致しますので」
「そっ…そうですか?有り難うこざいます!」
それにしてもガメッティーさん、私の心配が良く分かったな。
もしかてエスパー?エスパーなの?
私が口を余りにも怪訝な表情をしていたからか、ガメッティーさんがフォローする様にこう言った。
「ふふ…。この換金所に来られるという事は、直ぐに纏まったお金が必要だという方が多う御座いますので」
そりゃあそうです。確かに私の目的もお金ですからね。
納得した所で、私は売買契約書にサインをします。
あれっ?契約書のサインはリエラで問題ないのかな?う~ん……よく分からないし、偽名でも大丈夫ですか?なんて聞けないので、まぁいっか?
別に魔力が入っていない偽物の魔石を、買い取ってもらう訳でもないし。これといって大きな問題はないでしょう、きっと。
私が売買契約書にサインを済ませると、ガメッティーさんが確認してくれる。
「…………はい。大丈夫でございます。これにて今回の買い取りは終了となります。そしてこちらが金貨に換算した金額の、60枚となっております。ご確認をお願い致します」
ガメッティーさんが、テーブルの上にドンッ!と重そうに置いた袋の中を覗くと、ぎっしりと金貨が詰まっていました。
やったぁ~!ひゃっほ~い!こんなに楽に稼げるならば、ギルドで依頼を受けなくても良いのでは?
浮かれまくる私に、ガメッティーさんが少し厳しい言葉で釘を刺してくる。
「リエラ様……お節介を承知でひとつご忠告させて頂きますと、今後はこの様な純度の高い魔石は余り売らない方が良いと、私は思います」
しょえっ?
魔石の販売を止められて、浮かれていた気分が、みるみる萎んで行きます。
「ど……どうしてでしょうか?」
私がガメッティーさんに聞き返すと、ガメッティーさんは静かに理由を教えてくれた。
「魔石の使用は魔力の絶対量が少ない魔法使いには重宝されてますが、魔力の絶対量が多い魔術師には余り好まれておりません。魔術師の方は大抵が高位貴族のご出身の方が主ですので、気位が高こう御座います。そしてリエラさんにお売り頂いたこの魔石に溜められている魔力量は、普通に出回る魔石の保有魔力よりも桁外れで御座います……」
うん?そうなの?そんな薄い青色で、桁外れの魔力量だなんて……ガメッティーさんは、お世辞がお上手ですね?
そんなに褒めても、貰った金貨は1枚たりとも放さないんだからねっ!!
「ここまでお伝えすれば、もうお分かりで御座いましょうが、リエラさんの高純度の魔石が大量に市場に出回ると、魔術を主とする高位貴族の方達に、誰が魔石を大量に売りに出したのか、厳しく調べられますし、もしかすると何らかのペナルティーが課せられてしまう可能性が御座います」
「ええっ?ほっ…本当ですか?」
ガメッティーさんの話に驚愕です。魔石を作るのって魔術師の間で禁止とかされてたっけか?
だとすると、我が実家は不味いぞ?魔石何てそこら辺にゴロゴロしてましたけど?
父上~!?我が家は大丈夫ですか?捕まったりはしないよね?一応国でも一二を争う魔術の大家ですし………心配だ。
「そっ…そんな…私は魔石を作る事が禁止されていた何て、知らなくてっ!」
動揺で震える私に、ガメッティーは不思議そうな声でこう言った。
「いえ、魔石を作ること自体は禁止などされて居りませんよ?その証拠に、魔力が入っていない魔石はその辺でも売っておりますでしょう?」
ぶはっ!じゃ…じゃあ何がダメだったの?えっ?全然分からないんですけど?
「じゃあ、何故……?」
「………ひとつはリエラさんのお持ちいただいた魔石に溜められている魔力量が問題なのと、その………」
うぎゃっ!今度はガメッティーさんが私の耳元に口を寄せて来ます。
何でしょうか?男の方々の間で、ナイショ話が流行ってるのでしょうか?
【今、男たちの間でナイショ話が熱い!!誰でも良いので耳を貸せっ!大多数の人間には聞かせられない話をコソコソ話そうぜ!】的な事でしょうか?
そんなん私には………猥談か、思春期の一過性の病位しか思い当たらないけど、異世界でもあるのかねえ………?
いやいや、ふざけるのは止めてちゃんと聞こう。だってガメッティーさんの目は真剣だ。
私は真摯にガメッティーさんの言葉を聞く事にした。
「リエラさんは……その…魔術師でいらっしゃいましょう?」
ガメッティーさんは、私の耳元でそう囁いた。
「………………………」
その瞬間、私の顔色は真っ青に染まり、ガメッティーさんを指さしながら口をパクパクさせたてしまったのであった。
引っ張ってるつもりは無いんですけど、何故か話が長くなる不思議。
魔石換金するのに、どんだけ掛かってんだよっ!
って、聞こえてきそうです。
申しわけ御座いません。もう諦めて頂くしか……。
作者はメンタル激弱にて、優しくして下さると幸いです。




