Bランクの双子と、規格外の形見
冒険者ギルド『琥珀の星』の掲示板の前で、私、リーゼは腕を組んで唸っていた。
「うーん……やっぱり、今日も近場の森の依頼にしようか」
「そうだね! 遠出の依頼だと、お父さんたちのご飯に間に合わなくなっちゃうし」
隣でロッテが、両手にはめた鉄のガントレットを軽く打ち合わせながら笑う。
私たち双子は16歳にして、ギルドでは中堅の『Bランク冒険者』として登録されている。
同年代からすれば破格の出世だが、実のところ、私たちの純粋な戦闘力はとうの昔にAランクの基準を大きく超えていた。
それでもBランクに留まっている理由は単純だ。
一つは、私たちが頑なに「2人パーティー」にこだわっていること。高難易度の依頼は安全規定で大人数のパーティーを組むことが推奨されるが、私たちにはお互いの剣と拳の連携が完璧すぎて、他人が入るとかえって邪魔になってしまうのだ。
そしてもう一つの理由は、活動範囲の狭さ。
私たちは、お父さんやテオ、ミラが待つ家に毎日必ず帰りたい。だから、何日も野営が必要な遠方のAランク依頼は受けず、近場の『さえずりの森』周辺の依頼ばかりをこなしているのだ。
「おいおい、またBランクの『貧乏姉妹』が、日帰りできそうな小遣い稼ぎを探してるぜ」
「Aランクの俺たちみたいに、一週間くらいドラゴンの巣に潜る度胸もないのかねぇ」
背後から、見知らぬ上位パーティーの男たちが嘲笑する声が聞こえた。
私たちは顔を見合わせ、クスッと笑う。
(ねえお姉ちゃん。あの人たち、私のガントレットと、お姉ちゃんの剣の『異常さ』に全く気づいてないね)
(無理もないわよ。お母さんが丁寧に偽装を施しているんだもの)
ロッテのガントレットも、私の腰にある使い込まれた長剣も、数年前に病気で他界したSランク冒険者のお母さん、エレナの形見だ。
周囲からは「粗末な装備」と馬鹿にされているが、これらは実のところ国宝級のアーティファクトである。
ただの業物ではない。この武器には、持ち主の精神と肉体を焼き尽くすほどの膨大な魔力が常時渦巻いているのだ。普通のAランク冒険者がこの剣の柄を握れば、一瞬で魔力酔いを起こして泡を吹き、ガントレットをはめればその凄まじい重圧と魔力暴走で腕の骨が粉砕されるだろう。常人には絶対に扱えない代物なのだ。
しかし、お母さんから規格外の身体能力と魔力耐性を受け継いだ私たちは、このじゃじゃ馬なアーティファクトを、まるで手足のように軽く振り回すことができる。
「よし、決まり! 今日は森の奥に出た『狂暴化(ルビ:スタンピード)したオーガの群れ』の討伐依頼に行こう!」
「オッケー! さっさと終わらせて、テオの美味しいご飯食べに帰ろっ!」
私たちは上位パーティーの男たちの前を素通りし、ギルドの扉を開けた。
Bランクの枠に収まりきらない強大な魔力を宿した形見の武器を揺らしながら、私たちは今日も愛する家族の待つ家へ帰るため、森の脅威を物理で粉砕しに行くのだ。




