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伝説のSランク冒険者だった母が残した双子の娘、ダメ親父を養うために今日も森で無双しています  作者: 沼口ちるの


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万能主夫のサポートと、料理基準の連携術

「本当にごめんね、アレンお兄さんたち! お詫びにうちのテオのご飯、いっぱい食べてって!」

王都近郊の大荒野をえぐり取り、新たな大峡谷を錬成してしまった日の夕方。

リーゼとロッテの双子に連行される形で、新進気鋭のBランクパーティー『青空の誓い』の三人(アレン、セス、リナ)は、空飛ぶベルン家のダイニングテーブルに座らされていた。

彼らの目の前には、12歳の弟・テオが振る舞う絶品のハンバーグや色鮮やかなサラダが並んでいる。

「……美味しい。疲れた体に染み渡るよ」

「双子ちゃんのデタラメな破壊力で寿命が縮んだかと思ったけど、このご飯で全回復したわ……」

涙を流しながらハンバーグを頬張る三人。

「お口に合ってよかったです」

エプロン姿のテオが、ニコニコと食後のハーブティーを淹れながら尋ねた。

「お姉ちゃんたちから聞きました。三人は『連携』がすごく上手なんですよね。俺、そういうのよく分からなくて。戦闘って、姉ちゃんたちが『ドカン!』ってやって終わるものだとばかり……」

「……テオ君、君の姉ちゃんたちを基準にしちゃダメだ」

リーダーのアレンが遠い目をした。

「普通の冒険者は、役割分担ロールを徹底するんだ。俺が敵の攻撃を受け止める『盾』になり、セスが隙を突いて『刃』を入れ、リナが後方から『火力と支援』を補う。息を合わせて一つの生き物のように動くのが、本来の戦い方なんだよ」

「へぇ……! 一つの生き物みたいに……」

テオの目がキラキラと輝いた。その概念は、彼にとって非常に新鮮だった。

「――よし、それなら食後の運動がてら、実地で教えてやろう!」

会話を聞きつけて庭から顔を出したのは、孤児院の熱血教師・アザレアだ。

「ちょうど孤児院の生徒用に、頑丈な『訓練用ミスリルゴーレム』を用意したところだ。テオ、お前もあのBランクたちに混ざって連携というものを学んでこい! もちろん、名誉会長(双子)の二人は参加禁止だ!」

「えーっ! ズルイ!」とブーブー文句を言う双子をよそに、テオは「はいっ!」とエプロンを外して庭へ出た。

【模擬戦:青空の誓い & テオ VS 訓練用ミスリルゴーレム】

「行くぞテオ君! 君は後衛でリナと一緒に支援をお願い! 俺が前衛でヘイトを稼ぐ!」

アレンが盾を構えてゴーレムの正面に立つ。

テオは後方に下がりながら、じっと彼らの動きを観察した。

(なるほど……アレンさんが攻撃の熱を受け止める『フライパン』で、セスさんが素早く下ごしらえをする『包丁』。そしてリナさんが味を決定づける『スパイス』なんだな……!)

戦いを「料理のフルコース作り」という謎の基準で理解した万能主夫・テオ。

そして、彼の異常な「完璧すぎる魔力循環」が、支援サポートという形で静かに火を噴いた。

「シッ!」

ゴーレムの重い鉄拳が、アレンの盾に振り下ろされる。

アレンは骨が軋むのを覚悟して身を固めたが――衝撃はゼロだった。

「えっ?」

盾と拳が触れるコンマ数ミリの隙間に、テオが無詠唱で超高圧縮の『風のクッション』を挟み込み、運動エネルギーを完全に殺し切ったのだ。

「いける! アレンがノーダメージだ、俺が関節を削る!」

遊撃のセスが双短剣を構えて跳躍する。

その瞬間、セスは自分の体が羽のように軽く、かつてないほどの超スピードで動いていることに気づいた。

(なんだこの速さ!? 俺、覚醒したのか!?)

違う。テオがセスの足元の『重力』を局所的に軽減し、背中から微弱な風の推進力を与えて、彼の敏捷性を一時的にSランク相当に引き上げているのだ。

「すごいわ二人とも! 私も続くわ、『ファイアボルト』!」

後衛のリナが炎の魔法を放つ。

しかし、彼女の杖から出たはずの一般的な炎の弾は、途中で異常な変異を起こした。テオが空気中の『酸素濃度』をピンポイントで操作し、さらにリナの魔力波長に自分の魔力を完璧に同調させて火力をブーストしたのだ。

放たれたファイアボルトは、まるで超新星爆発のように白く輝き、ミスリル製のゴーレムを文字通り一瞬でドロドロに融解させてしまった。

「「「…………え?」」」

再び、アレンたち三人組の顎が外れた。

「や、やったぞ……! 俺たち、いつの間にこんな最強の連携ができるように……!?」

「違うわよアレン! 私、あんな太陽みたいな魔法撃ったことないわよ!?」

混乱する三人の後ろで、テオがパチパチと拍手をして歩み寄ってきた。

「すごいです、アレンさんたち! 連携って本当に綺麗ですね! 複数の鍋の火加減を同時に調整して、最後に一つのお皿に盛り付けるみたいで、すっごく勉強になりました!」

爽やかに笑う12歳の少年。

アレンたちは、自分たちが突然最強になった理由がすべてこの少年の「裏方サポート」によるものだと気づき、戦慄した。

(……この家族、全員ベクトルが違うだけで、やっぱり全員バケモノじゃないか……ッ!)

「よし! テオのおかげでミスリルが溶けたから、これでお鍋作ろっか!」

「アレンお兄さんたち、また遊びに来てねー!」

無邪気に手を振る双子と、溶けたミスリルを嬉しそうに回収するテオ。

新進気鋭のBランクパーティー『青空の誓い』は、この日、ベルン一家の常識外れな力に二度も心をへし折られ、「俺たちはまだ井の中の蛙だった」と、より一層堅実な連携を磨くことを心に誓うのであった。

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