宝石の原石たちと、未来の七英雄
王都近郊の上空に浮かぶ『ベルン孤児院兼私立アカデミー』。
その開校初日のホームルーム。白亜の教室には、セリア総団長によって集められたワケありの一般生徒15人と、テオ、ミラの計17人が席についていた。
教壇に立つのは、王国騎士団の副団長クラスである3人の怪物教師――熱血のアザレア、穏健のカモミ、隠密のロータスだ。
「よし、まずは自己紹介だ! 気合を入れていけ!」
アザレアの号令により、生徒たちが順番に立ち上がる。
彼らは皆、年齢は13〜15歳ほど。現時点での実力はギルドの『Cランク冒険者』程度だが、同年代としては破格の才能を秘めた原石たちだった。
その中でも、のちに国家の歴史に名を刻むことになる「主要な7人」の少年少女たちがいた。
1. ベリル(14歳/スラムの孤児/双短剣)
「……俺はベリル。スラムの孤児だ。生きるためなら何だってやるし、誰の指図も受けねぇ。……と言いたいところだが、昨日テオが作った飯が美味すぎたから、ここのルールには大人しく従うつもりだ」
鋭い目つきをした銀髪の少年。過酷な環境で培われた敏捷性とステルス能力は、隠密教師のロータスに「……筋がいい。影の歩き方を教えてやる」と目を細めさせるほど。
2. ルビー(15歳/貧困農家出身/大斧)
「ルビーです! 農家の六女で、口減らしにギルドの悪徳商人に売られそうだったところをセリア総団長に助けてもらいました! 畑仕事で鍛えた体力と、この大斧を振り回すのだけは誰にも負けません!」
太陽のように明るい赤髪の少女。小柄だが、その細腕にはアザレアも驚くほどの筋力が圧縮されている。
3. アゲート(13歳/貴族の三男/魔術師)
「あ、アゲートです……。実家の男爵家を追放されました。魔力総量が足りないから、貴族の恥だって……。でも、魔力の回路を工夫して、少ない魔力で効率よく術式を組むのは好きです……」
おどおどとした気弱なインテリ少年。カモミが「魔力は少なくても、その術式構築の美しさは一流ですよ」と優しく微笑むほどの、技巧派の天才。
4. オニキス(15歳/孤児/大盾)
「……オニキス。親はいない。……俺が、みんなの盾になる」
無口で大柄な黒髪の少年。自己犠牲の精神が異常に強く、絶対的な防御力とヘイト集めの才能を持つ。パーティーの要となる鉄壁のタンク役。
5. ジェイド(14歳/没落騎士の次男/長槍)
「ジェイドだ。政争に敗れて家名は失ったが、騎士としての誇りだけは捨てていない! いずれ必ずこの長槍で武功を立て、家を再興してみせる!」
生真面目で堅物な緑髪の少年。姿勢が良く、基礎訓練を誰よりも重んじる。ただし、リーゼやロッテの「力任せの剣と拳」を見て、己の常識が揺らぎ始めている。
6. コーラル(13歳/スラム出身/治癒術師)
「コーラルよ。ベリルと同じスラムの出。治癒と支援魔術がちょっとだけ使えるから、アンタたち、怪我したらすぐに言いなさいよね」
面倒見のいいピンク髪の少女。スラムで培ったサバイバルな治癒術は実践的で無駄がなく、テオの家事魔術の精密さに密かにライバル心を燃やしている。
7. ラズリ(14歳/没落貴族の令嬢/魔弾銃)
「わ、わたくしはラズリ! 没落したとはいえ、誇り高き魔弾の射手ですわ! 遠距離からの精密射撃なら誰にも……あ、あの、テオさん。昨日のシチュー、今日のランチでもおかわりよろしいかしら……?」
ツンデレ気味な青髪の令嬢。プライドは高いが、完全にテオの料理に胃袋を掴まれており、お嬢様の仮面が崩れかけている。
――宝石の名を冠する、7人の少年少女たち。
彼らはのちに、この浮遊島が世界の理不尽から完全に独立し、『ベルン神聖国』として世界に名を轟かせた際、国家の最高戦力たる【七英雄】と呼ばれることになるのだが……それはまだ、ずっと未来の別のお話。
今はまだ、万能の同級生の作るご飯に胃袋を掴まれ、本を読みながら無意識に空間結界を張っている幼女のバケモノっぷりに震える、発展途上のヒヨッコたちである。
「よし! 自己紹介は終わりだ! お前らのポテンシャルは分かった。今日から地獄の実戦訓練を始めるぞ!」
アザレアが熱血の雄叫びを上げると、7人の原石たちは「はいっ!!」と元気よく返事をした。
最強の家族と、最高の教師陣。そして、未来の英雄たちを乗せた『浮遊島アカデミー』の騒がしい日常が、本格的にスタートしたのだった。




