表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説のSランク冒険者だった母が残した双子の娘、ダメ親父を養うために今日も森で無双しています  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/56

閃光の学舎と、三人の怪物教師

王都近郊の大荒野。その上空に浮かぶベルン一家の浮遊島の一角に、新しく立派な白亜の校舎が建設された。

その名も『ベルン孤児院兼私立アカデミー』。

「ベルンさん、テオ君! ついに出来たわ、私たちの学校が!」

開校式の朝、王国最強の騎士団長・セリアは、いつもの凛とした軍服姿で、誰よりも目を輝かせて胸を張っていた。

実はこの学校、セリアが発起人となり、国家名誉国民であるベルン一家の協力を得て設立されたものだ。セリア自身、幼い頃に身寄りをなくし、師匠のエレナに拾われて現在の地位まで導かれた恩義がある。だからこそ、貧困や環境のせいで才能を埋もれさせている子供たちに、生きる力(物理)を授けたいという強い願いがあった。

集まった生徒は、初期段階でちょうど17人。

身寄りのないスラムの孤児から、家を継げないため放り出された貴族の次男三男、貧困にあえぐ農家の子まで境遇は様々だ。

そして、その17人の中には――。

「わぁ、いろんな子がいて楽しそうだね、ミラ」

「うん。お友達、いっぱいできるかな」

友達作りと一般教養を学ぶため、12歳の万能少年テオと、8歳の天才幼女ミラも一般生徒として机を並べていた。

「さて、生徒たちの安全を守り、かつ一流の教育を施すために、私の『総団長私設部隊』から、特に教育に向いている最高峰の幹部を3名、国から引き抜いて派遣したわ。騎士団の総戦力を落とさないためにこの3人だけだけど……実力はヴェルフェン副団長と同格よ」

セリアの紹介と共に、教壇の前に3人の男女が姿を現した。

彼らは王国騎士団の幹部でありながら、個人の武力だけでSランクに到達しているバケモノたちだ。

「よぉし! 生徒ども! 今日からお前らの根性を叩き直してやる! 立てば即戦闘! 寝れば即訓練だあ!」

一人目は、燃えるような赤髪を逆立てた熱血派の女性騎士、アザレア。

(※モチーフ:アザレア/花言葉:情熱)。ヴェルフェン副団長と並ぶ剛腕の持ち主で、実技と戦闘訓練を担当する。

「まあまあ、アザレア。子供たちが怖がってしまうでしょう? 皆さん初めまして。お勉強やマナー、座学は私に任せてくださいね」

二人目は、常に穏やかな聖母の笑みを浮かべた男性魔術騎士、カモミ。

(※モチーフ:カモミール/花言葉:逆境に耐える、癒やし)。一見優しそうだが、その魔術の練度はSランク級であり、どんな逆境でも笑顔で授業を遂行する。

「……影に潜み、気配を断つ。サボる者は、背後から。……よろしく」

三人目は、いつの間にか影から現れた、灰色の髪を長く伸ばした隠密の男性騎士、ロータス。

(※モチーフ:ロータス/花言葉:離れゆく愛、静寂)。気配遮断の達人であり、学校の治安維持とスカウト、隠密行動の授業を担当する。

熱血、穏健、隠密。

副団長クラスの怪物が3人も揃った、あまりにも贅沢すぎる教師陣。貧困層や貴族の下の子たち15人は、「す、すごすぎる……本物の騎士団幹部が先生なんて……!」と、セリアと教師たちの威厳に完全に圧倒され、目を輝かせていた。

が、アザレアたち3人の教師の視線は、生徒たちの中心にいる「二人の子供」に注がれ、密かに凍りついていた。

アザレアは、12歳のテオを見た。

(な、なんだあの少年は……!? 姿勢、重心の置き方、筋肉の弛緩……一切の隙がない! 構えてすらいないのに、私が本気で殴りかかっても一瞬でいなされる未来しか見えんぞ!?)

カモミは、8歳のミラを見た。

(おやおや……これは。あの幼女の周囲だけ、大気中の魔力の濃度がバグっていますね。無意識に多重の空間結界を展開している。私が本気で大魔術を放っても、彼女の爪一枚にすら届かないでしょうね……)

ロータスは、ミラのさらに影を見た。

(……気配を完全に断ってミラの影に潜んでいたはずなのに、あの幼女、本を読みながら私の位置を完璧に視線で追ってきている。……恐ろしい)

「総団長……」

熱血派のアザレアが、珍しく冷や汗を流しながらセリアに耳打ちした。

「あの、生徒名簿の端にいる『テオ』と『ミラ』って子供……本当に私が教育するんですか? 逆にこっちがへし折られそうなんですが」

「ふふっ、何を言っているのアザレア」

セリアは人類最強の総団長としての、絶対的な余裕と慈愛に満ちた笑みを浮かべた。

「あの子たちは私の可愛い弟と妹よ。技術は教えられなくても、学校の楽しさや、仲間たちとの絆を教えてあげることはできるでしょう? しっかり頼んだわよ、先生方」

「「「は、ははっ……!」」」

最強の総団長セリアの絶対命令の前に、三人の怪物教師たちはゴクリと息を呑み、腹を括った。教育すべき対象は、貧しい孤児たちだけではない。世界の理を壊しかねない「超・規格外の姉弟」をも、真っ当な人間として導くという、超難関の任務が始まったのだ。

「よ、よし! それじゃあ第一の授業! まずは全員で美味しいお昼ご飯の配給だ!」

アザレアが声を張り上げると、テオが「あ、先生。俺、厨房を借りて17人分の特製シチュー作ってありますよ」とエプロンを取り出した。その手際の良さと完璧な家事魔術の気配に、15人の生徒たちだけでなく、教師3人も「美味すぎる……」と一瞬で胃袋を掴まれてしまうのだった。

かくして、脈絡もなく、しかし最強の情熱によって設立されたベルン孤児院アカデミー

一癖も二癖もある17人の生徒たちと、3人の怪物教師、そして見守る人類最強のセリアによる、騒がしくも温かい学園生活が、今ここに幕を開けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ