表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説のSランク冒険者だった母が残した双子の娘、ダメ親父を養うために今日も森で無双しています  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/56

超難関迷宮と、物理(ストロング)スタイル

「お願いだ! テオ君を……いや、テオ様をギルドに返してくれぇぇっ!」

冒険者ギルド『琥珀の星』の床に額を擦り付けんばかりの勢いで、初老のギルドマスターが叫んだ。

泊まりがけの依頼から帰ってきたばかりの私たち、双子の姉リーゼと妹ロッテは、その必死すぎる姿にドン引きしていた。

「だーかーら! テオは今日、特売の卵を買いに行く日だから無理なの! 冒険者なんかやってる暇ないの!」

「それに、テオに怪我でもされたら私たちのご飯どうするの!? ギルマスが代わりに美味しいシチュー作れるの!?」

私とロッテが正論(?)で詰め寄ると、ギルドマスターは涙目で訴えかけてきた。

「作れないけど! でも、今どうしても『機巧の古代迷宮』の攻略が必要なんだ! あそこは複雑な古代暗号と緻密な罠だらけで、並の冒険者じゃ進むことすらできない。あらゆる技能をマスタークラスで扱えるテオ君の知力と技術が、どうしても……ッ!」

「あー、もう! 分かったわよ!」

私は腰に提げた長剣——お母さんの形見——をポンと叩き、ため息をついた。

稼ぎ頭である私たちが、こんなところで油を売っている場合ではない。お父さんがまた変なガラクタを買う前に、しっかり稼いでおかなければならないのだから。

「テオは絶対貸さない! その代わり、私たちがその迷宮、パパッと攻略してきてあげるから!」

「えっ!? い、いや、君たちの戦闘力は認めているが、あそこは頭を使わないと扉一つ開かないギミックだらけで……」

「いいから! 報酬は弾んでよね!」

私たちはギルマスの制止を振り切り、さっそく問題の『機巧の古代迷宮』へと向かった。

迷宮の入り口は、重厚な石造りの門だった。

その前には、星や月のマークが描かれた複雑な石板のパズルが設置されている。

「ええと、ギルマスが言ってた暗号ってこれかな。特定の順番で魔力を流し込まないと開かないとか……」

「お姉ちゃん、そんなのやってたら夕飯に間に合わなくなっちゃうよ!」

ロッテが両手の鉄のガントレットを打ち鳴らした。

確かにその通りだ。私はパズルからスッと身を引き、長剣の柄に手をかけた。

「だね。じゃあ……『シッ!』」

お母さん譲りの美しい太刀筋から放たれた、規格外の魔力を纏った不可視の剣圧。

「謎解きをしなければ絶対に開かない」はずの重厚な古代の石門は、パズルごと豆腐のように斜めにスッパリと両断され、ズシンと音を立てて崩れ落ちた。

「よし、開いた! 行こうロッテ!」

「うんっ!」

私たちは土煙を上げながら、迷宮の中へと猛ダッシュする。

道中、壁から無数の毒矢が飛んでくるトラップが作動したが、ロッテが「邪魔ぁっ!」と拳の風圧だけで矢をすべて吹き飛ばし、ついでにトラップが仕掛けられていた壁ごと粉砕した。

迷路のように入り組んだ通路も、私たちには関係ない。

「右に行く? 左に行く?」

「んー、ボスの魔力反応、まっすぐ奥からするね! 壁ぶっ壊して最短距離で行こっ!」

「オッケー!」

ドォン! ガシャアアアン!!

謎解き? 罠の解除? そんなものは「器用貧乏」なテオや、天才のミラの仕事だ。

私たち双子の主人公に与えられた役割はただ一つ。障害物を物理でぶっ壊し、稼ぐことである。

分厚い迷宮の壁を何枚もぶち抜き、直線に貫通工事を行いながら、私たちはわずか10分で最深部のボス部屋へと到達した。

『侵入者、発見。排除、開始シマス――』

最深部で待ち構えていたのは、ミスリル合金で覆われた巨大な古代防衛ゴーレムだった。魔法を反射し、物理攻撃を無効化する厄介な性質を持っているらしいが――。

「ロッテ! 装甲の隙間、狙える!?」

「もちろん! 関節の駆動部、全部もらうね!」

私は長剣に膨大な魔力を込め、ゴーレムの頭上から大地を割るような一撃を振り下ろした。魔法反射の装甲ごと、ゴーレムの体勢が大きく崩れる。

そこに、ロッテがロケットのような初速で飛び込み、むき出しになった関節部に全体重を乗せたアッパーを叩き込んだ。

国宝級のアーティファクトの力と、それを自在に操る双子の圧倒的な暴力。

「物理無効」の常識を上回る「絶対的な物理攻撃」の前に、古代の最高傑作は一瞬にしてただのスクラップへと変わった。

「ふぅ! 楽勝だね!」

「うん! あ、このゴーレムのコア、高く売れそう! これでお父さんに新しい靴でも買ってあげようか!」

私たちはホクホク顔でドロップアイテムを回収し、自分たちが壁をぶち抜いて作った「一直線の帰り道」を通って、意気揚々とギルドへ帰還したのだった。

「……えーと。つまり君たちは」

ギルドの受付カウンターで、ギルドマスターが引き攣った顔で報告書を握りしめていた。

「パズルを解かずに扉を斬り捨て、罠を壁ごと粉砕し、迷路の壁をすべてぶち抜いて、ボス部屋までの『直通のトンネル』を開通させてきた、と……?」

「うんっ! これで次の冒険者から、すっごく攻略しやすくなるよ! 感謝してね!」

ロッテが無邪気に笑うと、ギルドマスターはガクッと膝から崩れ落ちた。

「歴史的な……歴史的な古代遺跡が……ただの風通しのいい更地に……」

「ほら、お姉ちゃん! 早く帰らないとテオの卵焼きがなくなっちゃう!」

「あ、待ってよロッテ! ギルマス、報酬は口座に振り込んどいてねー!」

真っ白に燃え尽きたギルドマスターを放置して、私たちは元気よくギルドを飛び出した。

やっぱり、小難しいことは性に合わない。私たちは剣と拳で、明日も元気にご飯のために稼ぐのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ