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第67話 作問者は2とか3の数字が人気になってほしくてあえて正解にしている?

「あはは、それ面白いねー」

「まだ一言も話してないぞ」


寺田は何に笑ったんだ。



昼休み。



12月中旬で2学期末テストを控えている俺たち。


必然的にテストの話になる。


「テストでさ、選択肢問題あるじゃん」

「あぁ」


寺田に瀬野が頷く。


「あれってさ、運で当てても実力として認めますよって言ってるようなものだよね」

「実力も運のうちですよ、と言っているのかも」


なんか哲学者とかが言ってそうだな。


「でもまぁ、選択肢って記述問題より解答しやすいよな」


記述問題は満点を取るのが難しいし、と付け加える。


「よく考えればさ、どういう選択肢を作問者が作ってそれを解答とするか分かれば、全く問題を知らなくても正解が出せるんじゃないの?」

「あ、なんか僕にとって都合の良い展開になった気がする!」


喜ぶ寺田。


「でも選択肢の点数配分ってそこまで多くないだろ」

「その少ないところでも点数を取れたら違うじゃん」


寺田にとって選択肢の箇所で点数を取ることが赤点回避に繋がるのだろう。

普通に勉強したほうがいいと思う。


それでどうすればいい? と吉川に話を促す。


吉川は自分の席からノートを持ってきた。


「例えばこういう流れだったとき、みんなはどれを選ぶ?」


ノートに選択肢を書いて俺たちに見せる。



①234


123④


12③4


1234



「こういうときだったら、2かな」


俺と瀬野も頷く。


なんか流れ的に2を選択したほうが綺麗だし。


「じゃあこういう時は?」


再びノートに選択肢を書き込んでから、俺たちに見せた。



①234


①234


①234


①234


1234



「解答してて絶望するわ」


こんなに1が連続することってほとんどない。

多分2個か3個は間違ってる。


「これって結構難しいよな」

「まず消去法で消していって、最後に1ともう1つの選択肢が残ったら1じゃない方を選ぶかな」


その選択肢を眺めながら寺田が応えた。


「まぁそんな感じになるよね」

「それで何が言いたいんだ?」

「完全に正解っていう自信がないと、前の選択肢に引っ張られることもあるよねってことが言いたいわけだよ」


たぶんアンカリング効果ってヤツ、と吉川が付け加える。


おーなんかそれっぽい。


「それは分かったけどさ、全く問題を知らなくても正解が出せるって言ったじゃん」


そっちの方が興味あるんだよね、と零す寺田。


びっくりするくらい正直だな。


「今説明した感じでさ、解答者だけじゃなくって作問者も何かしらのバイアスがかかった状態で選択肢の解答を割り当ててる可能性が高いんじゃないかな」


つまりそのバイアスを明らかにすることができれば、問題を知らなくても正解を出せる可能性が高くなるはず、と説明する。


「選択肢の問題にここまで執着するヤツ、初めて見たわ」

「でも結構面白いな」


そうやって正解するのも成績だけ見れば実力として認められるわけだしな、と瀬野。


「他にもいろんな方法があると思うけど、すぐにできそうなヤツから試してみよう」


例えば、と言って吉川はノートに数字を書き込む。


「この中から1つ数字を選んでください、って言われたら何を選ぶ?」


そういって俺たちにノートを見せてきた。


1234


「2」

「3」

「まぁ3かな」


俺たちは口々に数字を呟いた。


「吉川くんは?」

「まぁ僕だったら2かな」


吉川も応えた。


「つまり2が二つ、そして3が二つとなったわけだよね?」

「ここではな」


他だとどうなるかわからないけど。


「つまり1と4っていう『外側』の選択肢は選ばれなかった、というわけだ」


これこそバイアス! と言う吉川。


「でも教師とかさ、4つの選択肢は等しく確率25%って言うじゃん」


そういうのって考えるなって言われるけど、と反論する。


そうかもね、と肯定してから吉川は続けた。


「でも実際、選択肢の解答作るときに4つの選択肢の確率が25%になるよう計算してやってるわけないじゃん。」

「だろうな」


瀬野は頷く。


「そもそも、順番とかを意図的に調整すると回答者にとっても都合の良い順番が答えになってしまう、というパラドックスが生まれる!」


だからそこまで深く考えて解答の選択肢を設置していない、したがってバイアスが入り込んでいる可能性がある、と説明した。


問題を作るのも結構大変なんだな。

そこまで教師が考えているか怪しいけど。


「とりあえず、選択肢的に『外側』の選択肢は『内側』の選択肢よりも解答になる可能性が低い、という説が出るよね?」


俺たちはまぁそうだな、と言って話を促す。


「つまり、これを検証することが必要!」


吉川はスマホ片手にノートに何か書き込み始めた。


「よかったな、なんかそれっぽいアドバイスが出て」


発端の寺田に話を振る。


「これで僕も安心して赤点回避だね!」

「いや、普通に勉強すれば赤点とるなんてことないと思うけどな」

「人間は常に赤点の可能性を持っているんだよ」


解答時間中の僕たちは0点から100点の可能性まである。例えば、解答の途中で腹痛に襲われて途中退席を余儀なくされる可能性だってあるわけ。そんな時にとりあえず選ぶ選択肢の正解の精度を高めることは重要だ、と熱弁をふるう。


少なくとも、俺は寺田がテストの時間でさえ寝ていたのは見たことある。


テストが終わる直前に教師が「あと5分でテスト終わりです」って言ったときに慌てて選択肢を選ぶときに使うのだろう。


こんなやつに点数あげていいのか?



「……とりあえずこんな感じかな」


吉川が顔を上げた。


「何をしたんだ?」

「とりあえずある年の共通テストの解答で、どの選択肢が解答だったかその個数を数えてみた!」


教科は国語、英語リーディング、英語リスニングだけ、と付け加える。

時間が足りなかったから、3科目だけになったようだ。


「さっきの説を検証するにしてはサンプル数が少ないけど、とりあえずやってみた」


ノートを俺たちに示した。



総合:


 1. 23個 (19.32%)

 2. 28個 (23.52%)

 3. 28個 (23.52%)

 4. 23個 (19.32%)

 5. 10個 (8.4%)

 6. 7個 (5.88%)


合計: 119個



「2と3の選択肢の方が、1,と4の選択肢よりも4%程度高いということに!」


5とか6の問題は少ないけど、一応計算に入れていると補足する。


マジか。


「ちなみに今調べてる感じだと、センターステージ効果っていうのが該当しそう」


人は複数の選択肢が並んでいると中央を選びやすいっていうヤツ、とスマホを見ながら吉川は言う。


あれ、ちょっと待てよ……?


「俺たちは2と3を選んだんだよな?」


さっき吉川にどれか1つ選べって言われたとき、と瀬野は吉川を見る。


「そうだね」

「それで作問者も2とか3とかの真ん中の選択肢を選びたくなる、と」

「うん」

「それなら、別にその情報を知らなくても俺たちは勝手に真ん中の選択肢を選んでるんじゃないか?」

「……あれ、確かにそうかも?」


吉川は呟く。


これ、何のためにしてたんだ。


「まぁとりあえず、僕がテスト中に寝て制限時間がヤバいってときは真ん中の答えを選ぶようにするよ!」

「テスト中に眠らないようにするのが、点数を上げる最も効率的な方法だと思うけどな」

「ほら、『テスト終了!』ってい言われてるときに解答してるのってさ、ブザービーターみたいでかっこいいじゃん」

「テストってバスケじゃないんだけど」


そもそも、テストギリギリまで解答をしないといけないって、普通に実力不足では?



昼休みが終わったので、俺たちは話を切り上げた。





5時間目の休み時間。



「そういえばさ、なんだけどさ」

「うん」


僕は深山さんから借りた少女漫画を返しながら尋ねる。


「このキャラの人気ってどうなの?」


表紙のキャラを指で指す。


「この作品だったら人気投票で1位だったかもね」


結構前の作品だから詳しくは覚えてないけど、と付け加える。


「さっきちょっと話してたんだけど……」


そういって僕は選択肢は真ん中の方が正解になりやすい可能性について説明した。


「キャラクターもコマの中で真ん中に立ってる方が人気になりやすかったりしない?」

「そう?」


作者がそのキャラは人気になってほしくて真ん中に立たせたりしてるんじゃないの?と呟く。


それもそうだね。


もしこれをテストに適用できるとすれば、作問者は2とか3の数字が人気になってほしくてあえて正解にしている?


いや、流石にないか。


人気キャラとコマの中での立ち位置の関係性は将来の研究者に譲るとしよう。


深山さんと話をしながら、僕は次の授業で使う教科書を引き出しから取り出した。








***********************************

「また良く分からないところに来たんだけど……」


頭に触れる。

怪我はしていないみたい。


7月頃にもこの部屋に来た記憶がある。


机上に紙が置いてあった。


前と同じように、この紙の内容を読み上げればいいのか。


ん、ん、と喉を鳴らしてから読み上げる。


「えー、今回の話では『内側』の選択肢と『外側』の選択肢はおおよそ4%の差異があるとされていましたが、結論、統計的な有意性はありません。つまり、これはランダムに起こりうる事象です。高校生なのでカイ二乗検定を知らなかったようですね。完璧な結論を出すことができないというのも素敵です。研究設計や計算の雑さ等、指摘を受けることは覚悟の上、カイ二乗検定をしてみましょう」



前提:


1. 選択肢5と6は除く

2. 内側をA、外側をBとする

3. グループ間で差は生じない→期待値は半々


Aグループは56個、Bグループは46個の合計102個。


カイ二乗統計量: χ2 ≈ 0.98

p値≈0.32 > 0.05

→有意性なし


つまりこの差は偶然でも普通に起りうる範囲なんです。


「『問題を解くときはちゃんと選択肢を読んで、考えてから解答するようにしてくださいね!』……っと」


おかしい。

まだ戻らない。


紙をめくってみる。

まだ後ろに文章が書かれていた。


「この内容はすべて夜野さんが話している内容なので文句があれば夜野さんのコメント欄にどうぞ!」


なんか気になること言ってる。

私のコメント欄、良く分からない統計学の批判で埋まると困るんだけど。


読み終えて顔を上げると、目の前は私の部屋に戻っていた。


「はぁー私、疲れてるのかな……」


2学期末テストも近くって睡眠時間もちゃんと取れてないし。


でも流石に今日は収録しないと。


軽く伸びをしてから実況の準備を始めた。

*************************************



次回はクリスマス!


2026年の共通テストを参考にしたよ!


検定も本当にお遊び程度だから、興味があれば自分でやってみてね!

例えば5択、6択問題をちゃんと排除したうえでカイ二乗検定をすると結果が変わるかも!


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