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第57話 ヒーローの平均BMIは約19.15ということが明らかに!

「とりあえず外見だけでもヒーローっぽくなろうと思ったんだけどさ」

「一歩前進じゃん」


吉川くんに貸していた少女漫画を受け取る。


「外見って言っても要素は色々あるでしょ?」


顔だけじゃなくって身長や体重とか、と吉川くんは付け加える。



昼休み時間。

吉川くんと一緒にご飯を食べている。



隣には夜野さんもいるが、話には入ってこない。

スマホを見つめながらぼーっとしている。


だから、と吉川くんは続ける。

「まずは身長と体重に焦点を当てるべきだと思ったんだよね」

「外見の中では顔こそ一番重要そうだけど?」


どんなにかっこよくても体型がヒーローっぽくなかったらいつまでたってもヒーローに近づかないからさ、と説明された。


ヘアセットとかメイク関係の動画を見て挫折したのかも。

それでも努力しているからには応援するべきなのだろう。


吉川くんの話に耳を傾ける。


「そこで直面したのが、ヒーローとどうやって比較すればいいか分からないということ」

「身長と体重で比較すればいいんじゃないの?」

「単純に比較しても、ほとんどのヒーローって身長高いじゃん」


比較しにくいんだよね、と呟いた。


ヒーローの身長が何センチなのかは知らないけど、日本人の平均身長よりは高そう。


「だからBMIで比較しようと思ったんだよ」

「名前は聞いたことあるけど、BMIってなんだっけ?」


吉川くんによると、身長と体重を使って肥満度合いを計測する指標らしい。


Body Mass Indexの頭文字を取ったものだとか。


「どうやって計算するの?」

「僕の場合は…」


そういってスマホで計算する。


え、自分のBMIを私に見せていいの?

そう言うのって普通見られたくないものでは?


「僕は20.07だね!」


計算式はこうなっていた。


BMI = 体重(kg) / 身長(m) ^2

56kg / 1.67^2 = 20.07


「…うん」


人のBMIを知ったのは初めてだったのでリアクションに困る。

こういうときって「痩せてますね~」っていうべき?


「それで?」


とりあえず私は話を促した。


「この数値をヒーローのBMIと比較すればいいってことだよ!」

「なるほどね」


ヒーローに近づくのであれば、そのBMIの数値をヒーローのものと近づければよいということか。


でも、こんなに数字ベースで考えるものなの?


「ヒーローのBMIは…」


ノートの後ろ側のページにヒーローの身長と体重を書き込み始めた。

ヒーローの名前は書かれておらず、完全に身長と体重の情報だけが抽出されている。


「ここに10人のヒーローがいるんだけど、」

「完全に数字でしかないけどね」

「ヒーローの一側面だから問題ないでしょ」


ヒーローにとって不本意な側面だと思うけど。


「ヒーローの平均身長と体重を計算する」


平均身長: 178.4センチ

平均体重: 61kg


「思った通りだけど身長高いね」


高校でそのくらいの身長の人そこまで頻繁に見かけない。

クラスに1人いるかどうかかな。


まぁ、僕がぱっと調べただけだから、実際はもう少し低くてもおかしくないけどね、と吉川くん。


「そしてBMIは…」


と言って計算を始めた。



61kg / 1.784 ^2 = 19.15



「ヒーローの平均BMIは約19.15ということが明らかに!」

「そうなんだ」


ヒーローのBMIは吉川くんのBMIと思ったより近いらしい。

でも、その数字を見てどうリアクションするべきなの?


ちなみに、と言って吉川くんはスマホを操作し始める。


「日本の15-19歳の男性の平均BMIは20.6、そして標準偏差は3.0だから…」


ヒーローってそこまで痩せてるわけじゃないんだな。

かなり瘦せ型のイメージがあったけど。


ていうか、なんで標準偏差が出てきたの?


「ヒーローたちが平均値からどれだけ外れているかを計算するためには…」


そういって吉川くんはノートに何か書き込み始めた。

私は箸を置いて、そのノートの内容が見える位置まで近づいた。



前提:


1. BMIは正規分布に従う

2. 日本の15-19歳男性の平均BMIは20.6、標準偏差は3.0

3. ヒーローの平均BMIは19.15


z = (19.15 – 20.6)/3.0

= -0.4833


累積分布関数より、0.316



「つまり、ヒーローのBMIは下位31.6%付近にいるということに!」


そしてこれは±1σの68%以内、外側の16%に入らないということが分かる、と付け加える。


「途中の計算過程なくなってるけど」


計算の考え方は合ってるから問題ないはず、と吉川くん。


「結局何が言いたいんだっけ?」


話が脱線し始めた感じがしたので尋ねる。


「ヒーローのBMIを目指すこと自体は現実的だ、ってこと」

「なるほど」


仰々しい計算とかしなくても、そんなことぐらい分かりそうだけどね。


でも、と言って吉川くんは続ける。


まだ何かあるの?


「ヒーローの平均身長って明らかに同年代の平均身長より高いじゃん」

「178センチはかなり高いよね」

「僕の身長よりも10センチ以上高いわけだよ」

「うん」


ちなみにヒーローの平均身長は上位10%付近らしい。


「ヒーローっぽくなるためには、体重よりも身長のほうが大きな影響を与えている可能性が高いということが計算から明らかに!」

「BMIは平均的だけど、身長は平均よりも上だからってこと?」


そうそう、と吉川くんは頷く。


なんか嬉しそう。


「でも身長ってどうしようもなくない?」

「その通り!」


だから、と言って吉川くんは一呼吸置く。


「僕は外見で努力できる要素はほとんどない!!」

「いや、顔があるでしょ」


雰囲気に流されかけてたけど、吉川くんは努力しないために計算をしていたのか。

こんなに言い訳するのに時間と労力をかける人は初めて見た。


「体系は別としてもさ、髪と肌と眉を整えたらかっこよく見えるって言うよ?」


そういって私は吉川くんを見る。

肌はそれなりに綺麗。でも髪と眉はまだ整えられそう。


「髪はまだ改善の余地があるんじゃない?」


眉はちょっと難しいけどさ、と呟く。


人に「まだかっこよくなれるよ」って言うのはどうなんだろう。

でも、吉川くんにヒーローを目指してもらわないと困るんだよね。


「漫画のイラストをそのまま現実にするとおかしくなるかもしれないから、自分にあったヘアスタイルを探すところからかな?」


とりあえず、気軽に始められそうなアドバイスをする。

それくらいなら、と吉川くんは渋々了承した。





夜。


自分の部屋。


身長を伸ばす方法を検索し、いくつかの記事を眺める。


「簡単に身長を高く見せるんだったら、シークレットインソールがあるじゃん」


最大で身長を9センチ高く見せることができるらしい。


吉川くんにも教えようと思い、リンクを共有しようとする直前にあることがふと頭に浮ぶ。


別のタブを開いて検索ワードを入力する。



『キス 理想の身長差』


大体12センチ前後。


「えーと、吉川くんの身長から私の身長を引けば…」


スマホの電卓で計算する。


167 – 155 = 12


「へぇ…」


別にどうでもいいんだけど。


すべてのタブを消去して、スマホをベッドに放り投げる。

結局、吉川くんにシークレットインソールのリンクは共有しなかった。




参考資料:

総務省統計局. (2025). 令和4年社会生活基本調査:BMIの平均値及び標準偏差 - 社会保障・衛生 (ファイルID 000040276309) [統計データ]. 政府統計の総合窓口 (e-Stat). https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&stat_infid=000040276309 (参照 2026年3月3日)

厚生労働省. (2020). 平成30年・令和元年 国民健康・栄養調査 特別集計: 身長・体重・BMI 等の分布 [PDF]. 厚生労働省健康局. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkou_eiyou_chousa_tokubetsushuukei_h30-r01.pdf (参照 2026年3月3日)


特別なあなたへ。

ご覧いただきありがとうございます。

リアクションや感想、本当に嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。


夏野恵

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