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第54話 この4人には合計で9個、目があるわけなんだから

「あ、画面の左奥の配置が変わってるかも」

「オッケー」


吉川は異常を報告する。


『異常は排除されました』


「意外と簡単だね」


そう言いながら吉川は画面を切り替える。



休日の夜。



俺と瀬野、寺田は吉川に誘われて監視カメラの間違い探しをするゲームをしていた。


なんでも、小さな変化に気づける男は評価が高いという話を吉川が聞いたらしい。

それって間違い探しすれば鍛えられるものなのか?


通話アプリで画面共有をしているため若干画質が粗いが、そこまで細かい変化はないので今のところは順調だった。


「はい、ここに異常はない?」


そういって画面を切り替える。


「お前が見つけないと意味なくね?」


少なくとも吉川は異常を探さないといけないだろ。

なんで俺たちに間違ってるところを聞いてるんだ。


「いや、最終的には僕が報告してるわけだからさ」

「じゃあお前ひとりでゲームしろよ」


ひとりでするのはちょっとアレだから、と中身の伴わない言い訳を聞きながら俺たちは画面を眺める。


「真ん中にあるポスター、こんな絵じゃなかった」


瀬野が呟いた。


「報告!」


大きな声で言った吉川は異常のある箇所をクリックした。

なんか自分で見つけました、みたいな物言いだな。


『異常は排除されました』


「おーやるなぁ」


寺田と俺は拍手をする。

全く分からなかった。


「まぁ2人には分からないだろうね」

「自分も分かってたみたいな雰囲気出すなよ」


お前は画面クリックしただけだろ。

俺の反応は気にも留めず、吉川は画面を切り替える。


「ここはなさそうだね」


そういって次の画面に行こうとする。


「ちょっと待って、窓の外に人いないか?」


瀬野が更に指摘をする。

よく見れば結構小さいが人がこちらを覗き込んでいた。


「……合格」


パチパチと拍手をしながら吉川は異常を報告する。

なんでコイツ、試験官みたいなポジションなんだ?


『異常は排除されました』


「こっちからだと画面が粗くて小さいところまで見れないんだよな」

「そうだよね」


俺と寺田は言い訳を始める。

有料会員になれば画面共有の画質を上げることができるらしいが、月500円を払うのは惜しい。


「俺も実は異常には気づいているんだけど、その前に指摘されるんだよな」

「僕も実は見逃してる異常3個見つけてるんだけど、具体的にここ、って指摘するのは難しいんだよね」


見逃しているんだったら言えよ、と思ったが話がごちゃごちゃしそうなので飲み込む。


今のところ、異常を報告しているのは瀬野だけ。


瀬野は異変を察知し、吉川がクリック、そして俺たち2人が茶々を入れるという役回りが定着し始めた。


「ちゃんと真面目に参加してよ。僕が頑張らないといけなくなるじゃん」

「お前は頑張れよ」


よく考えたら4人でする意味あるか、コレ?


「右下の椅子が1個多いかも」


瀬野がまた異常を見つける。


「本当に?」


そう言いながら吉川は画面を操作する。


『異常は検知されませんでした』


「いやー僕もコレだけは変わってないと思ってたんだよね!」


ドンマイ、ドンマイ、と言って吉川は盛り上げる。

盛り下げてるのは吉川だと思うが。


こいつの異常を報告しろよ。


その後は俺たちもそれなりに真面目に参加して3か所クリアした。


ダイジェスト:



1.

「これ違くない?」

「確かに違うわ」


異常を報告……


「思ったより簡単なヤツ来たな」

「これくらいなら楽勝だね」


『異常は検知されませんでした』


「間違ってるじゃねぇか」



2.

「これ絶対違う」

「確かに違うね」


異常を報告……


「こんなの朝飯前だね」

「吉川お前、瀬野に便乗してるだけじゃね?」


『異常は排除されました』



3.

「これ違うかも、ちょっと自信はないわ」

「……」


異常を報告……


「おい吉川、お前なんか言えよ」

「……」


『異常は検知されませんでした』


「瀬野くん、この程度も分からないようじゃだめだよ!」

「コイツ、瀬野まで攻撃してきたぞ」



4.

「ちゃんと楠本くんも参加してよ?」

「俺、結構やってるぞ」

「この4人には合計で9個、目があるわけなんだから」

「知らないヤツの目、1つ混ざってるぞ」

「え、僕が2つ、寺田くんが2つ、瀬野くんが2つ、で楠本くんが3つでしょ?」

「俺も目2つしかねぇよ」



ゲームが終わって1時間くらい雑談をしてから、通話を終えた。


この間違い探しのゲーム、画面に顔を近づけすぎると視力悪くなるから、現実で小さな変化を見逃す可能性が高くなるのでは、と思ったが口にはしなかった。





ベッドに入ってから、俺は動画投稿サイトを開く。


ゲーム実況者の「ミュー」は俺たちがやったゲームをプレイしていた。

実況の声だけ聴きながら俺は目を閉じる。


『異常は検知されませんでした』

「ディスプレイに埃ついてたから、ちょっと液晶クリーナーで掃除してくる」


『異常は検知されませんでした』

「異常が検知されなかったっていう異常を検知したから、実質異常は検知されたってことで」


『異常は検知されませんでした』

「異常は検知されてないってことはさ、その異常を検知する機械が正常じゃない可能性もあるじゃん。私、現地まで確認行きますけど?」


『異常は検知されませんでした』

「いや、こういうのって現実で違いが分からないってわけじゃないし」


『異常は排除されました』

「やっぱり私って小さな変化とか気づくタイプだから」


『異常は検知されませんでした』

「ゲームでは気づかないけど、友達がメイク変えたらちゃんと気づくし」


『異常は排除されました』

「ゲーム側が教えてくれてるじゃん、『あなたは小さな変化に気づく人間です』って、私はそんなこと思ってないけどね? でもゲームがそう言ってくれてるんだったら、まぁそうなんでしょ。だから、」


『異常は検知されませんでした』

「いや、所詮ゲームだから」

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