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第50話 じゃあ最後、好きな人は?

「吉川くんってたこ焼き好き?」

「僕はあんまり」

「たこ焼きが好きじゃない人っているんだ」


カセットコンロのカセットボンベを取り換えながら話をする。


「前にめちゃくちゃ熱いたこ焼きを食べて口の中やけどしてから、食べるのが怖くなったんだよね」


外で調理しているから、体が冷える。



文化祭当日。



僕、楠本くん、深山さん、夜野さんの4人でたこ焼きを調理している。

調理と言っても、冷凍食品を温めてソースをかけるだけなんだけど。


僕と深山さんがたこ焼きを温めて、楠本くんがソースをかける。

そして会計は夜野さんが行うという役割分担。


タイマーをセットしてフライパンの上で転がすだけだから暇になる。

隣の深山さんと話しながら時間を潰していた。


「そういえばコンロってこういう火が出るのと火が出ないヤツあるよね」

「火が出ないヤツってIHのことかな?」


それかも、と応える。


「あれって何が違うの?」

「私も普段から料理するわけじゃないから分からないけど…」


そう言うと深山さんは夜野さんに話しかけた。


楠本くんと夜野さんは時折話をしているのが聞こえるが、何の話をしているかまでは聞き取れない。


「夜野さんってIHと普通のコンロの違い分かる?」

「普通のコンロは手を近づけるとやけどしそう」


IHは家で使ってないからなんとも、と付け加えた。


「らしいよ」

「それは僕も知ってるんだけど」


タイマーが6分を経過したので、たこ焼きをトレーの中に入れて楠本くんに渡す。


「私の知り合いは、IHの方がエネルギー効率が高いから良いって言ってたかも」

「客観的だね」

「でも別の知り合いは、普通のコンロは火が直接見えているから火力調整がしやすいって言ってた」

「人によって好みが別れるってことだね」


そういうのも重要になってきそう。


「最後の友だちは、食べる料理にどっちが使われているか関係ない、一刻も早く料理を提供しろって言ってた」

「多分その人、料理したことないね」


一意見として同列に扱っていいの?


「やぁ、調子はどう?」


寺田くんと瀬野くんが来た。

たこ焼き2つお願い、と言って代金を受け取り、楠本くんが商品を渡す。


「12時前だからやっぱり来る人多いよ」

「それは大変だね」


僕たちは9時からの1時間だったから全然人いなかったんだけど、と言いながらたこ焼きの入ったトレーを受け取る。


「そういえば他のクラスでお化け屋敷やってるとこあったよ」

「文化祭っぽいね」

「シフト終わったら行く?」


寺田くんに尋ねられる。


「あー、ごめん。先約があって」

「じゃあ先先約は?」


12時からって話だったから無理かも、と正直に応えた。

少し話をしてから、寺田くんたちは離れて行った。


「…吉川くんって一緒に回る人いるの?」


しばらくしてから、深山さんが小さな声で尋ねる。


「いるよ」

「ふーん」


その後は無言で調理を続けた。


12時前だからか、調理のスピードが需要に追い付かない時間が続き、会話をする暇がなかった。



「1-Cはどう?」


秋谷さんたちのグループが来た。


5人くらいで明空さんもいる。


「まぁまぁって感じ」


夜野さんが応える。


「あっ、もしかして夜野さん?」


あ、はい、とだけ夜野さんは応えた。


「深山さんだよね?」


別の女子が深山さんに話しかける。


「…こんにちは」


深山さんも距離を取った応答をした。



「深山さんって目が大きいよね!」

「…そうですか?」

「本当に!遠くから見ても深山さんだってわかるくらい!」


羨ましい、と言ってその女子は距離を詰める。


「…ありがとうございます」


深山さんはとりあえず感謝する。


「深山さんたち困ってるじゃん」

「え~? このくらい普通じゃない?」

「やっぱり、距離感バグってるって!」


他の女の子たちが口々に言うが、当の本人はそこまで気にしていないようだった。


「ここでたこ焼き買ったら、私別行動でいいよね?」

「本当に別行動とるの?」

「もう約束しちゃったし」

「その人も一緒にさ、一緒に回ればよくない?」


ひとりが尋ねる。


「あと私も別行動でいいかな?」


明空さんはここで初めて口を開いた。


「え、明空さんも?」

「私は深山さんたちと一緒に回るから!」


いいよね?と言って深山さんと夜野さんを見る。


深山さんは頷いた。


「じゃあ私たち3人で午後は回る?」

「まぁ、それでもいいよ」


目の前の女の子たちはたこ焼きのトレーを持ちながら話し合う。


「で、秋谷さんは誰と回るの?」


明空さんが笑みを浮かべて尋ねる。

秋谷さんは明空さんに鋭い視線を向けた。


「そういえばそれ聞いてなかった!」


私も知りたかったんだよね、と盛り上がり始める。


「それって言わないといけないヤツ?」

「え、もしかして秋谷さん…?」


秋谷さんの質問に対し、女の子たちはさらに盛り上がり始める。


「秋谷さんと一緒に回る人ってもしかして男の子?」


秋谷さんは一瞬こちらを見てから頷いた。


え、マジで?! と驚いた様子だった。

明空さんはそれを見て笑みを浮かべている。


教えてよ、と迫る女の子たちをあしらいながら秋谷さんはスマホで時間を確認した。


12時ちょうど。

他のクラスメイトと入れ替わる。


屋台から出て自由時間になったタイミングで、秋谷さんが近づいてくる。


「この人と回るから!」


秋谷さんが僕の背中に触れながら宣言する。

女の子たちの間でざわめきが生まれた。


「ごめん、それって秋谷さんが誘われたの?」


こちらをちらちら見ながらある女の子は尋ねる。

品定めされるような視線向けられても困る。


「いや、私が誘った」

「え、秋谷さんが?」

「あとで説明するから!」


じゃあ行こっか、と呟いたので、秋谷さんの後を追う。


視線を背中で感じながらも、後ろを振り返らずに進んだ。




「これからどうしよっか?」


何事もなかったように聞いてきた。


今、僕たちは廊下を歩いている。

秋谷さんのクラスメイトらしき人は、僕を奇妙な目で見てきた。


「お腹すいたから、何か食べられるものがいいかな」

「じゃあ私のクラスに行く?」


売り上げに貢献してよ、と秋谷さんは笑う。


「いいけど、秋谷さんはいいの?」

「何が?」

「ほら、秋谷さんのクラスの人とかさ」

「ぱっと行けば大丈夫でしょ」


もう色んな人に見られてるから、と呟き、僕たちは秋谷さんの教室に向かった。


「やっほ、売れてる?」


秋谷さんは平然とクラスメイトに尋ねる。

尋ねられた本人は、え、え? と戸惑いながら僕を見てくる。


「フランクフルト2本お願い」

「オ、オッケー…」


女の子は商品を準備する。


「吉川くん、ちゃんとお金持ってるよね?」

「持ってるよ?」

「こういうときってさ、どっちが払うべきだと思う?」


そう言って僕の顔を覗き込む。

僕は財布を開けて、フランクフルト2本のお金を支払った。


「気が利くじゃん」


そう言って秋谷さんは僕の背中に触れる。


「秋谷さん、」


店番をしていた女の子は声をかける。


「どうしたの?」

「後で、ちゃんと教えてね」

「あはは、困ったなぁ」


じゃあまたね、と秋谷さんが口にして僕たちは教室から出た。


少し歩いてから、人がいない階段に僕たちは腰を下ろす。


反対校舎の3階。


ほとんど来たことがない場所だった。


「さっきのお金、返すよ」


秋谷さんは200円を財布から取り出した。


「別にいいよ?」

「いや、私はそういうの好きじゃないから」


もらってよ、と言われたので僕は素直に受け取った。


「じゃあなんで、さっきは僕が払ったの?」

「私、吉川くんに払ってなんて一言も言ってないよ?」


確かに。


「払うかどうかよりも、そういうスタンスを見せることが大事だから」

「スタンス?」

「私が言って、吉川くんが考えるってことが」

「へぇ」


漠然とした相槌を打つ。



あーあ、と呟いて秋谷さんは続ける。


「文化祭終わったら、私、絶対質問攻めに合うなー」

「大変だね」

「誰のせいだと思う?」

「え、僕?」

「吉川くんはそう思う?」


そう言ってこちらを見てくる。


今日ちゃんと秋谷さんの顔を見た。


「…なに?」


めっちゃ私の顔見てくるけど、と付け加える。


「今日の秋谷さん、いつもと違うなって」

「…そういうのわかるんだ」


具体的にどこが?と尋ねられた。


「目、かな」


漠然とした回答しかできなかった。


「まぁ、合ってるけど…」


そう言って秋谷さんは目を伏せる。


「他に秋谷さんは行きたいところある?」


気まずい空気が流れる前に、僕は質問をした。


なんとなく、空気が重い。


「吉川くんはどう?」


他に行きたいところは?と聞き返された。


メタ的に考えれば、譲り合って気まずい空気になるのが目に見えていた。

僕はラブコメ主人公としての経験を働かせて応える。


「じゃあ、お化け屋敷行こうよ」

「お化け屋敷?」

「うん」


僕の友達が言ってた、と付け加えた。


「…それってさ、吉川くんが行きたいの?」

「どういうこと?」

「吉川くんが行きたいから行くのか、ここにいるのが嫌だから行くのかってことなんだけど」

「秋谷さんはここに居たいの?」

「まずは吉川くんの考えが知りたいな」


教えて、と顔を見ずに尋ねる。


気まずい空気になりたくないから、ぱっと思いついたお化け屋敷に行こうと思っただけなんだけど。


「たまたま頭の中に出てきたからお化け屋敷に行こう、って言ったね」

「じゃあ、それとここにいるのどっちがいい?」


めちゃくちゃ詰めてくるじゃん。


「別に文化祭の出店にはそこまで興味ないけど、どうせならって感じ」

「…そう」


じゃあ、とりあえずお化け屋敷に行ってみよっか、と言って秋谷さんは立ち上がる。



何も話さなかった。


お化け屋敷に入った。


お化け屋敷から出た。


「さっきのところ戻ろうよ」


そう言って秋谷さんはさっきまでいた階段に向かう。



反対校舎の階段に着いた。


「他に行きたいところはある?」

「特にないけど…」


じゃあ、行きたいところが見つかるまではここにいよっか、と言って秋谷さんは黙る。


スマホを触る空気じゃなかったので、僕は黙って窓の外を眺める。


外では、多くの生徒が出店を回っている。


「…行きたいところあるの?」

「別にないけど…」

「じゃあこっち来て」


有無を言わさぬ声だった。

僕も階段に腰を下ろす。


沈黙が生まれた。


正直、僕の頭の中は疑問符でいっぱい。

そのすべてが隣の秋谷さんに向かっている。


「秋谷さん、本当にどうしたの?」

「何が?」

「いつもと違うじゃん」

「いつも通りだけど」

「え、違うでしょ」

「違くないよ」

「さっきまで秋谷さん、普通に明るかったじゃん」

「じゃあ明るくない私は私じゃないの?」


そして秋谷さんは質問を続ける。


「てかさ、吉川くんから見た私ってなに?」

「秋谷さんは秋谷さんだけど」

「じゃあ吉川くんの知らない私は私じゃないの?」

「…そんなことないと思う、けど…」

「間を開けないで答えてほしかったな」


そう言って溜め息を吐く。


「秋谷さんは文化祭好きじゃない?」

「今、そんな話聞きたくない」

「じゃあ秋谷さんはどんな話が聞きたい?」

「自分で考えて」


秋谷さんは僕の方に身体を寄せた。

小刻みに震えている。


僕は黙って上を見上げた。


頭の中は空っぽ。


え、本当にどうしよう。

こんなの小説でもみたことないぞ。


こういう時って、なんでこうなったか理由を考えた方が良いよね。


様子がおかしかったのは、お化け屋敷に行こうって言ったとき。

その時の僕の答えが不味かった?


いや、でもお化け屋敷には一緒に行ったし…


よく考えたら、もっと前からおかしい。


秋谷さんが僕を文化祭に誘うということがあり得ない。


「…なんで今回、誘ってくれたの?」


僕は横にいる秋谷さんの体温を感じながら尋ねる。


何も答えない。

聞こえてはいるはずなんだけど。


「誘ってくれて、嬉しかったよ?」

「…じゃあ今は?」


しばらく黙っていた秋谷さんはやっと口を開いた。

僕は安堵しつつも、どう答えるのが正解か考える。


「正直に言えば、」

「ごめん、やっぱ聞きたくない」


話を遮って、秋谷さんは応える。


まぁ、そうなるよね。


「秋谷さんは今、楽しい?」

「…楽しいわけないじゃん」


ぽつりとつぶやいた。


でしょうね。



「…なんで吉川くんってラブコメが好きなの?」


しばらく沈黙があってから、おもむろに秋谷さんが尋ねてきた。


「いきなりどうしたの?」

「とりあえず私の質問に答えて」


有無を言わさぬ雰囲気だった。


「現実には存在しないからかな」

「なんで現実じゃダメなの?」


現実でも楽しいこといっぱいあるじゃん、と付け加える。

そう言いながら、秋谷さんは身体をさらに寄せた。


「…現実は僕にとって解像度が高すぎるから、かな」


知らなくてもいいこともあるし、見たくないものだってたくさんある。


「本当に現実の方が解像度が高い?」

「高い、と思うけど」

「じゃあ、吉川くんは物語以上に現実を理解しているというわけだよね?」

「知らないことの方が多いよ?」

「じゃあ知ってることに限って言えば、物語以上に多いってことだよね?」


立て続けの質問に僕は頷くしかなかった。


「じゃあ私のことは?」

「秋谷さんのこと?」


「私のこと、物語よりもちゃんと理解してるって言える?」




チャイムが校舎内に響き渡る。

5時間目が終わる時刻だった。



「秋谷さやかさんは、高校生」

「誕生日は?」

「2月19日」

「好きな食べ物は?」

「オムライス」

「好きな教科は?」

「数学」

「好きな作品は?」

「ディストピア小説が好き。『1984』とか」

「好きなキャラクターは?」

「中学校の頃はドストエフスキーの作品に出てきた…」

「ラスコーリニコフ」

「そう、それが好きって言ってた」

「好きな学校の行事は?」

「ない。イベントが嫌いだから」


そうだね、と秋谷さんは呟く。



「…じゃあ最後、好きな人は?」



これまでの質問と同じように、秋谷さんは尋ねてきた。


こういうときってどう答えるべきなんだろう。


「好きな人は?」


秋谷さんは続ける。


「私の好きな人は誰?」

「好きな人は…」


言葉を探す。


「…ごめん、分からない」


僕は逃げた。


頭の中に出た言葉をそのまま言うと、後戻りできないような気がしたから。


「ほら、全然私のことわかってないじゃん」

「1問以外は分かってたよ?」

「その1問が100問分の価値があったんだけど」

「すみません、全然わかってなかったです」


素直に認める。


「…それで?」


結局、秋谷さんは何が言いたかったの?


「吉川くんは現実のことを良く分かってないのに、物語に逃げてるってこと」

「…厳しい意見だね」


これも素直に認めるべきだろう。


「じゃあ僕はどうしたほうがいいかな」

「ちゃんと現実を見て」


はっきりと秋谷さんは言う。


「見たくない現実も?」

「見たくなければ見なければいいじゃん」

「それ、結構難しいんだけど」


じゃあ、と言って秋谷さんは続ける。



「見たくないところは私が隠してあげるからさ、私のこと見てよ」



そう言って秋谷さんは僕の手を握る。


小さな手は震えていた。


「現実の解像度が高すぎるんだったらさ、私だけ見れば他のことなんて間接視野でしか見えないでしょ」

「そうかもしれないけど…」

「知りたくないこととか聞きたくないことも、私が隣にいればそんなに重要じゃないでしょ」

「…」

「前に電話したときに吉川くん言ってたよ、楽しくないことを楽しくないって私に言えるのが心地が良いって」


吉川くんは覚えてないだろうけど、と付け加える。


本当に覚えていなかった。


だからさ、と言って秋谷さんは僕の顔を見て言った。



「ずっとそばにいさせてよ」



「…」


何か言おうと思っても、全く言葉が浮かばない。

これはYes/Noの単純な二択の問題じゃなかった。


でも、秋谷さんは僕が答えることを期待しているはず。


物語の中の僕じゃなくって、今、ここにいる僕が。


秋谷さんの顔をまじまじと見る。


「…メイク崩れてるから、あんまり顔見ないで」


そう言って顔を隠す秋谷さん。


「…なにそれ」


僕の口から出たのは、質問に対する答えではなく、秋谷さんのメイクが崩れていることを隠すリアクションに対しての言葉だった。


「ちゃんと顔見せて」

「やだ、恥ずかしい」

「…ごめんっ、秋谷さん」


秋谷さんの顔に触れて、こっちに見えるようにした。


え、と驚いた秋谷さんの目元は涙に滲んでいた。


「やっば、めっちゃ好きなんだけど…」


本心が零れてしまった。


秋谷さんは呆然としている。


「ごめん、自分でも良く分からないんだけど、秋谷さんが恥ずかしがってるのを見て、どうしても見たいって…」


自分でも何を言っているか分からないけど、とにかく口にする。

秋谷さんの顔に触れたまま、目から口元までじっくり眺めた。


目を逸らされる。


「ねぇ、ちゃんとこっち見て」

「…絶対イヤ」


否定はするものの、僕から離れようとはしない。


頬のファンデーションがところどころ落ちている。

それを見つめながら、徐々に視線は口元に向かった。


秋谷さんの唇ってこんなに綺麗なんだな。

触りたいと思ったが自制心が勝る。


顔から手を離した。


「ごめん、変なことしちゃって」

「…別に」


秋谷さんは呟く。


完全に熱に浮かされていた。


絶対後で後悔するヤツだ。

というか、もう現時点で後悔し始めている。


「さっき、めっちゃ好きって、」

「人のことを好きになるのってさ、どういうことなの?」


空気を読まず尋ねる。


「その人自身じゃなくってその人のことを好きな自分が好きなだけなのかも、って思ったら好きになれなくって」


自分は何を言っているんだろう。


「もし自分のことが嫌いになったら、その人のことも好きじゃなくなるかも、って思ったら…」


秋谷さんは溜め息を吐き目元を軽く拭った。


「吉川くんは自分のこと嫌いなの?」

「嫌い、じゃないけど…」

「私、吉川くんのことを大切に思ってるのと同じくらい、自分のことも大切に思ってるよ」

「自分のことも?」



「どんなことがあっても、自分だけは自分の味方でいて欲しいでしょ」




パチパチパチ。


すぐ近くから拍手がした。

音のする方に視線を向ける。


そこには堂々とした佇まいの深山さんと満面の笑みを浮かべる明空さんがいた。


こちらに近づいてきたので、僕と秋谷さんは少し身体を離す。



「吉川くん、君に足りないのは自信だ!」



文化祭で閑散とした校舎。

肌寒い階段の踊り場で、深山さんの声が響いた。



「だから、私と一緒に自分磨きをしよう!!」



「…深山さんと?」


深山さんは大きく頷いた。

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