第47話 深山さんの吉川くんに対する仕草は原始的な感情だってこと!!
これは私の友人の話、なんて言うと私の話なんじゃないかって思われそう。
深山の話だ。
体育祭が終わってから様子がおかしい。
いや、深山の様子がおかしいのはいつものことか。
そういう話じゃなくって。
説明するのが難しいんだけど、なんかいつもと違うなって感じがする。
最近気づいたのは、深山の席が縦の列から若干ずれていること。
私は教室掃除だから机を並べる。
いつも縦の列はまっすぐになるように並べているんだけど、翌日の掃除時間になると少しだけずれている。
吉川くんの方に。
そもそも、深山が日常的に話す男子生徒と言えば吉川くんしかいないから、話しやすいように近づけているのかな程度に最初は思っていた。
私は深山より後ろの席だから、授業中や休み時間に深山を眺めることができる。
まぁ休み時間はほとんど寝ているけど。
で、私が起きているときに深山を見て思ったのが、深山ってこんなに吉川くんの近くに手を置いていたかな、ということ。
授業中でも話しながら吉川くんの机に手を置いているし、昼休みは1回か2回は吉川くんの肩に触れる。
表情にも言葉にも出さないけど、いつもの深山と違うことは明らかだった。
昼休み。
今日は秋谷さんと明空さんが教室に来た。
秋谷さんは教室に来る日の前日に連絡をくれる。
私に言わなくてもいいと思うけど、秋谷さんは律儀だ。
ちなみに明空さんは昼休みにならないと来るかどうか分からない。
「そういえば、1-Cは文化祭どうするの?」
「今日の6時間目に決める予定だね」
秋谷さんの質問に吉川くんが応える。
「秋谷さんたちのクラスは?」
深山が尋ねた。
私は昼休みに人と話すことはほとんどない。
自分が話す必要がないなら、わざわざ話すつもりはないし。
昼ご飯を食べるときは話を聞いて、話が盛り上がってきたらスマホを眺めて時間を潰す。
新作のホラーゲームの情報を集めながら、どれを実況しようかなとぼんやり考えることが多い。
「私たちは食べ物系の出店に決まったんだよね」
「やっぱり食べ物系とかが王道なのかな?」
焼きそばとかたこ焼きとか、と例を挙げる吉川くん。
「普通の出店だと面白くない気がするけどね」
「食べ物系で普通じゃない商品を提供するの?」
「いや、そこは普通でいいんだけどさ」
深山さんと明空さんが話始めた。
そろそろ盛り上がってきそう。
さっさと食事を終えてスマホを眺めることにする。
「出店するんだったら、ちゃんと経営をしたいなって思って!」
「経営って何するの?」
深山さんが尋ねる。
「どんな商品をどうやって提供するか、とかを理論的に決めるんだよ」
「理論的に?」
「せっかく儲けるチャンスなのに場当たり的に決めても面白くないじゃん」
「何を面白いと思うかにもよるけどね」
秋谷さんが話を遮らない程度に応えた。
話は盛り上がった。
4人は「作ったものを売るのではなくて、売れるものを作ること」が最も重要だという結論に至ったようだ。
そうなのかもしれない。
ちなみに、この話し合いの中で深山が吉川くんに触れた回数は3回。
手首に1回と肩に2回だった。
スマホを眺めながらだったから、もっと触れているのかもしれないけど。
昼休みが終わり、秋谷さんと明空さんは自分たちの教室に戻っていった。
掃除時間。
深山の机はやっぱり吉川くんの方に近づいていた。
他の生徒は特に気にせず元に戻す。
それを見ながら、どのタイミングで深山は机を動かしているのか気になった。
次の時間からちゃんと見ておこうと思いながら、ほうきを手に取る。
「そういえば夜野さん、あの人の曲聴いた?」
楠本くんが話かけてくる。
私は頷き、ほうきを窓側の方の手に持ち替えた。
楠本くんと話すことは掃除時間の間しかない。
共通の趣味があったので、週に何回か話す。
最近、人の動作をよく観察するようになったからか、無意識に楠本くんの動きに敏感になる。
楠本くんの重心は若干斜めになっていた。
それがどういう意味か分からないけど。
放課後。
図書室に来た。
深山とはいつも一緒に帰ってるわけではない。
今日は図書室に行くから先に帰っていいよ、と深山に言うと「いまさら夜野さんが電子書籍から鞍替えしても、紙の書籍たちは受け入れてくれないよ?」と言われた。
確かに電子書籍の方が好きだけど、紙の束に私の主導権って握られてるの?
図書室に入って書籍たちに罵声を浴びせられることはないだろうと思いながらも、あまり利用したことのない図書室に行くのには少し勇気が必要だった。
図書室はほとんど人がいなくってとても静かだった。
私はお目当ての本があるか探す。
心理学系のジャンルの本棚を見つけた。
上の段から横に視線をスライドさせて、タイトルを眺める。
あった。
ノンバーバルコミュニケーションに関する書籍。
高校の図書館でも、ちゃんとこういう本もあるんだなと思い感心しながら本を抜き出した。
「今、本とったね?」
「本を取ったけど、盗ってはいないよ」
私服警備員みたいなことを言う明空さんに振り返って応えた。
明空さんは本を抱えていた。
「珍しいね、夜野さんが図書室に来るの」
「明空さんはよく図書室に来るの?」
「私、図書委員だから」
そう言いながら手際よく本を棚にしまう。
「夜野さんってノンバーバルコミュニケーションに興味アリ?」
私の持つ書籍を見て応える。
「まぁちょっとね」
曖昧な言葉で濁した。
「私、もうちょっとで仕事終わるから、途中まで一緒に帰らない?」
「方向同じなの?」
「違っても途中までは!」
距離感が良く分からない明空さんに頷き返すことしかできなかった。
良くも悪くも深山に似ている明空さんだったから頷いたのだと思う。
本の貸し出しをしてから、明空さんの図書委員としての仕事が終わるのを待つ。
「明空さんって本読むのが好きなの?」
図書室にはすでに私と明空さんしかいなかったので、話しかけた。
「それなりにって感じかな」
どうとでも取れるような応えだった。
沈黙が生まれる。
窓の外からは運動部の声が聞こえる。
「中学校の頃はなんか部活してた?」
明空さんが尋ねる。
「中学校のころは吹奏楽部だった」
「高校では入らなかったんだ」
「自分から進んでやりたいとは思わなかったし」
中学校のときはなんか部活動をした方が良いと言われて吹奏楽部に入ったが、そこまで楽しくはなかった。
個人練習の時間が一番好きだったかな。
「明空さんは?」
部活動のことを私に聞かれても話が広がらないので、明空さんに質問を返した。
「私はね……」
ちょうど応えるタイミングで、定刻が過ぎた。
「それは帰るときにでも話そうよ!」
明空さんは手早く片付けをして図書室から出る準備をする。
私は借りた本を鞄に入れて準備ができたことを知らせた。
一緒に図書室から出る。
明空さんは教室に鞄を置いているとのことで、玄関で待っておくように言われた。
靴を履き替え、数分間は空を眺めていた。
10月上旬らしい、少し肌寒い夕方だった。
「ごめん待たせて」
じゃあ行こっかという明空さんの言葉を合図に私たちは歩き始めた。
「夜野さんって帰りはこっち側?」
そういって明空さんは指を指す。
私は頷いた。
「明空さんってどうやって学校に来てるの?」
「途中までは親に送ってもらってるんだ」
「どこの中学校?」
ここから少し離れた場所だった。
ところで、と言って明空さんは切り出した。
「あの本は誰のために借りたの?」
「誰に、ねぇ」
そういえば明空さんとちゃんと話したのって今日が初めてかも、と思いながら私はどう応えようかと考える。
「もしかして深山さんだったりしない?」
「その根拠は?」
「私の勘って的中率100パーセントなんだよね!」
明空さんは自信を持って言う。
まぁ深山がきっかけなのは間違いないけど。
「夜野さんって昼休みのときとか静かじゃん?」
「自分から話さなくていいんだったら黙っとくけど」
「どんな人なのか分からなかったから、今話せて嬉しいよ!」
「それはどうも……」
正面からそんなことを言われたのは初めてだったから反応に困る。
鞄を握り直す。
明空さんの視線は私の手元に向かっていた。
「人間って、そんなに理性的じゃないんだよね」
「いきなりどうしたの?」
「せっかくだから、ノンバーバルコミュニケーションに興味がある夜野さんと話をしたいなと思って!」
その時私はぱっと楠本くんを思い浮かべた。
まあ共通の話題があれば話も持つ。
「理性的じゃないってどういうこと?」
私は明空さんに尋ねる。
もし深山だったら、そこまで興味を示さない方が良いんだけど、明空さんのことは良く分からないので、一応興味があるスタンスを見せる。
できれば、私が本を読む手間を省いてほしいし。
「私たちって人間だよね?」
「これで人間じゃないです、って言われたらびっくりだけど」
「あはは、面白いこと言うね」
そういって明空さんは笑う。
そんなに面白い?
「それで、なんなの?」
話を促す。
「私たち人間の学名ってホモサピエンスって言うのは知ってる?」
「中学校で習ったかも」
「ホモサピエンスはラテン語なんだけど、翻訳すると英語だとwise manかthinking man、日本語だと『賢い人間』っていう意味なんだよね」
「へぇ」
とりあえず相槌を打つ。
「でもノンバーバルコミュニケーションの観点からは、人間はそこまで賢くないし、考えてもいないということが明らかになるんだよ!」
楽しそうに明空さんは口にした。
秋谷さんが深山に似てるって言ってたけど、本当に深山じゃん。
まぁ、私が話さなくてもいいんだったら助かる。
「なんで人間は賢くないの?」
合いの手を入れた。
「ノンバーバルコミュニケーションは、人の仕草とか言語化されていない部分のコミュニケーションってことは知ってるよね?」
「一応」
図書室に来る前にちょっとだけ調べた。
「そのノンバーバルコミュニケーションが脳のどの分野で生まれているかが重要なんだ」
その後の明空さんの説明を要約すると、大脳辺縁系という部位がノンバーバルコミュニケーションと重要な関係があって、前頭前野は感情などを制御する役割があるみたい。
大脳辺縁系と前頭前野では神経信号が脳内を伝わるルートに違いがあり、大脳辺縁系にはショートカットルートがあるとか。
それが腕や足の動作として現れるらしい。
「それで?」
結局明空さんは何が言いたかったのか尋ねる。
「深山さんの吉川くんに対する仕草は原始的な感情だってこと!!」
核心に触れることを口にした。
「……いきなり吉川くんが出てきたけど」
「夜野さん、深山さんが吉川くんのことをどう思ってるか知りたくて本を借りたんでしょ?」
「それも勘?」
「私の大脳辺縁系がそうささやいている!」
明空さんは自分の頭を指さした。
鞄を握り直す。
「まぁ間違ってはいないかな」
他の人に言ったりしなさそうだから正直に応えた。
「じゃあ明空さんはどう思う?」
「どう思うって?」
「深山が吉川くんのことどう思ってるかってこと」
「私が説明しても、ちゃんと本を読んでくれる?」
「……読むかも」
多分読まない。
まぁ私がどう思ってるかは別にして、と言って明空さんは続ける。
「深山さんのことを知って夜野さんはどうするつもりなの?」
「どうもしないよ」
「ただ『深山さんが吉川くんのこと好きなんだなぁ』で終わり?」
「うん」
それじゃ面白くないと思うけどな、と呟き明空さんは足元を見る。
「明空さんだったらどう関わるの?」
「それってどの立場で?」
明空さんはすぐに聞き返す。
「もし私が夜野さんだったらって話なのか、違うクラスで週に1回か2回、昼休みに来る生徒で、っていう話なのか」
「私だったらどうする?」
「それってどの夜野さんの立場?」
「アルゴリズムみたいな聞き方だね」
踏み込んで聞いてくるので、あえて話を逸らす。
鞄を逆の手に持ち替えた。
「重要なことはちゃんと前提を共有してから話すことが必要って本に書いてあったからさ」
笑いながらそう応える。
深山と明空さんは似た性格をしているが、決定的に違うところが1つある。
それは、相手に興味があるかどうか。
深山はこちらがそこまで興味がなくても話し続ける。
逆に明空さんはこちらに好奇心がありすぎる。
どっちとも困る。
「深山さんが吉川くんのことをどう思ってるか、それは夜野さんと同じ考えだと思うよ」
「そう」
「私が深山さんを見て思ったのが、」
言葉を切り、明空さんは空を眺めた。
「ねじれの位置にいるなって」
「ねじれの位置?」
中学校の数学で習った気がする。
うん、と呟き、明空さんは空中に図形を描く。
「例えば立方体があるとするじゃん」
「うん」
「で、立方体の直線が交わらないし、平行でもないのがねじれの位置」
こことここだね、と言って空中の立方体の辺をなぞる。
私には何も見えないけど。
「つまりこれを今の状況に置き換えると、」
明空さんは一呼吸置いた。
「本来は関わるはずのない2人の人物が関わっているということに!」
「なんかSF作品みたいなことが起きてるね」
そんな物語みたいなことじゃないと思うけど。
でもさ、と言って明空さんは話す。
「吉川くんはラブコメ主人公なんでしょ?」
「自他共に認める、ね」
言っているのは吉川くんと秋谷さんくらいだけど。
「で、ラブコメヒロインは秋谷さん」
「自他共に認める、ね」
これも言っているのは吉川くんと秋谷さんくらい。
「そして最後に出てくる少女漫画主人公が深山さん!」
「自称だけど」
これは他人からの裏付けが取れていない。
「深山さんが入り込む余地ない、っていう問題が生まれている!」
これがねじれの位置ってこと、と明空さんは付け加える。
「まぁ、深山がなんか可哀そうなことになってるのは分かったけど、それが何なの?」
私は冷静に尋ねる。
「それでも夜野さんは何とも思わない?」
「全く」
「あはは、不動の夜野さんだね」
「それ、前に深山に言われたことがある」
クラスマッチでベンチから一歩も動かなかったときの話をした。
「触らぬ神に祟りなしって言うじゃん」
「深山さんは神ってこと?」
「まぁ神でも何でもいいけど、私が関わるべきじゃないかなって思うんだけど」
「もっともだね」
そういって明空さんは笑みを浮かべる。
「私は博愛主義的な人間だから、自分の周りの人間には幸せになってもらいたいんだよね」
「百等分くらいしたらほぼ無関心と変わらなそうだけど」
「その通り!」
全員と公平に接することは無理だからね、と呟いた。
だからこそ、と力強い言葉で続けた。
「自分の周りの限られた人物にだけは幸せになってもらいたくって!」
これこそ進歩的な博愛主義だよ、と付け加えた。
むしろ退化してない?
「夜野さんは周りの人に幸せになってもらいたくない?」
「まず私が幸せになるところからかな」
今日も収録しないといけないし。
「とにかく深山がどう考えていても、私は絶対に関わらないかな」
「じゃあもし私が関わろうとしたら?」
明空さんは足を止めて言った。
「どう関わるの?」
「深山さんがハッピーになれるようにアドバイスをちょこっと」
「正直に言えば、私に影響が出なければお好きに、って感じだけどさ」
そう言いながら私は明空さんと向き合う。
「明空さんは何がしたいの?」
「何がしたいか、ねぇ……」
このとき、明空さんは腕を組んでいなかった。
「私は自分の好きな物語を読みたいかな」
「物語?」
「深山さんとか吉川くんとかは自分が作品の主人公だと思ってる感じでしょ?」
「そうらしいね」
「私はその作品の読者になりたいな」
「読者?」
「物語は読者がいてこそ、初めて物語になるからね!」
難しいことを言い出したな。
「言いたいことはなんとなくわかるけど」
「うんうん」
「もし明空さんが読者だったら、物語の登場人物と関わったら駄目じゃない?」
明空さんが登場人物と関わった時点で、明空さん自身もその作品の登場人物になるのでは?
「そうなったら、私の存在を物語から消せばいいじゃん!」
「明空さんの存在感を物語から完全に消すのは難しいと思うけど」
「じゃあ作品に漂う私の存在感が私がいたっていうことの証になるね!」
結局、読者も私なわけだし、と付け加える。
「じゃあ、今日の会話も物語ではなかったことに?」
「最終的になかったことになるはず!」
「それなら、私の記憶も消して欲しいかも」
普通の人なら明空さんの話にびっくりするのかもしれないけど、私は深山の話をよく聞いているので冷静に対処することができた。
「今日で明空さんのこと、結構分かったかも」
「本当に?」
「日常生活の中でちょっとした刺激が欲しいって感じかな」
「そうだね」
もう私について教えることはないよ! と明空さんは言い切った。
免許皆伝早すぎない?
「今日は夜野さんと話せて楽しかった!」
じゃあまた今度教室に行くから! と言って明空さんは離れて行った。
「はぁー」
溜め息を吐く。
明空さんは結局何が言いたかったの?
考えても意味はないような気がするから、明空さんとの会話を記憶から消すことにした。
自室のドアを開ける。
「夜野さんも結構面白い人だったなぁ」
鞄から宿題を取り出しながら目の前の本棚に何気なく視線を向ける。
「流石にそろそろ買い替えたほうがいいよね」
本棚の棚板が本の重さに耐えきれず少し歪んでいる。
筆箱からシャープペンシルを取り出して、宿題に取り掛かった。
「この問題、私ならもっと面白くできる自信あるな」
内容に文句を言いながら片付ける。
宿題を終わらせ、私は軽く伸びをした。
まだ時間はある。
ノートPCを開き、ノンバーバルコミュニケーションに関するジャーナルを検索し、論文のアブストラクトを斜め読みする。
「……よかった」
私が夜野さんにした説明はちゃんと合ってた。
これで間違ってたら、後で恥ずかしい思いをするのは私。
それは困る。
体育祭の日、吉川くんにメイクの話をした時も帰ってからちゃんと正しいか確認をして、計算も正しいかやり直して胸をなでおろした。
「やっぱり、普通じゃつまらないよねー」
ぽつりと呟く。
今日はいつもより特別な日になったと思う。
食事を済ませ、お風呂に入る。
お風呂に入っているときはなるべく何も考えないようにしている。
頭の中をリセットできる感じがするし。
お風呂から出た。
ヘアオイルをつけてからドライヤーで髪を乾かす。
この時間が好き結構好きだったりする。
ミディアムだから、そこまで時間はかからないけど。
明日の準備をして本を一冊取り出す。
ジャンルは少女漫画。
そこまで詳しくなかったけど、深山さんと話すようになってからおすすめを何冊か教えてもらい、自分で買った。
貸してあげようか、と言われたけど本を集めることも好きだったので丁重にお断りした。
「この主人公の心境の変化、もっと理論的に説明できそうだなぁ」
そう思い私はノートPCを起動して検索する。
『脳波 周波数』
私はいくつかの記事を見ながら、頭の中で仮説を組み立てる。
所詮、仮説にすぎなくって、検証する方法がないんだけど。
「主人公が常にEEGヘッドセットをつけて、セリフの横に脳波の比率とか出してほしいなぁ」
姿がちょっと滑稽になりそうだけど。
そういうことを考えながら漫画を読むと、一冊読み切るのにとても長い時間がかかる。
長い時間かけて味わって読んでいるから漫画家は喜ぶかもしれないが、「これ、学術的におかしくないですか?」とか言われたら悲しいかも。
「内容も結構面白いじゃん」
満足して本を閉じた。
今度1-Cの教室に行ったときはこの話でもしようかな。
どんな風に言おうか考えながら、私は自室の電気を消した。




