第38話 デスゲームピエロも脱出に協力するらしい。
「僕とゲームをしよう!」
「デスゲーム主催者みたいな物言いだな」
スクリーンに映るピエロじゃん。
俺たち4人は通話アプリ上で話をしている。
どうしてもしたいゲームがあると吉川が言っていたので、夜に集まることになった。
吉川がゲームの説明を始める。
「僕たちはある建物の中に閉じ込められている…」
僕『たち』?
参加者と一緒の場所にいるのか?
「なんとその中には人間のフリをした人狼が! 人間側は人狼から逃げながらいろいろなタスクをこなして脱出しよう!」
聞いてる感じ、デスゲームピエロも脱出に協力するらしい。
そもそもだけど、と黙っていた瀬野が入ってきた。
「このゲームって4人でできるのか?」
調べた感じ、8人くらいでやってるぞ、と付け加える。
「4人だとギリギリでき…ない」
「だめじゃねぇか」
でも最低人数は揃えられたから、と吉川が言ってゲーム開始。
知らない人のためにゲームルールに関してもう少し説明しよう。
人狼に狩られた場合は通報ボタンが出てくる。
発見したメンバーはそのボタンを押すと建物内の全員が招集されて議論開始。
それ以外の時間はマイクをミュートにして、粛々とタスクをこなす、って感じ。
人狼と人間が同数になったら人狼の勝利。
人狼を追放できれば人間の勝利だ。
大体見ればわかる。
「ゲームが始まったらマイクミュートにしてね」
吉川がそう言うのとほぼ同じタイミングでカウントダウンが。
3. 2. 1.
ゲームスタート!
「あっ僕人狼じゃーん!」
やべ、ミュートにするの忘れてた、と言い残してマイクを切る寺田。
もうアイツを吊った方が良いだろ。
最初が少しごちゃっとしたものの、その後は何も起きずに淡々とタスクをこなす。
突然、招集されるカットインが。
画面には、寺田のアイコンに×が付けられていた。
寺田が人狼に狩られていたらしい。
じゃあ、マイクのミュート忘れは何だったんだ。
「見つけたのは瀬野?」
マイクをオンにして議論を始める。
「あぁ、発見した場所は左側の…」
場所とそれまでにすれ違った相手などをわかりやすく説明してくれた。
俺と吉川はときどき相槌を打ちながら話を聞く。
こういうのってさ、と言って吉川は話始める。
「初回からすぐに通報するムーブってできなくない?」
瀬野は人狼側ではない、と断定する吉川。
一戦目からそんなメタな推理するか?
「だから犯人は僕か楠本くんのどちらか!」
「自分も容疑者に入れてるけど」
吉川に応える。
自分がやったかどうか分かるはずだろ。
「吉川はデスゲームピエロみたいなこと言ってたから楠本が人狼だな」
「最初の設定がここでも生きてくるのか?」
その消去法間違ってるだろ、と俺は反論する。
まぁ実際、人狼は俺だから瀬野の楠本人狼説は正解だ。
いや、ちょっと待って、と言って吉川は瀬野を止める。
「死んだ寺田くんが実はデスゲームの主催者側で、終盤くらいに拍手しながら近づいてくるみたいな可能性もあり得るのでは?!」
だから僕も人狼の可能性があるはず、と真面目な雰囲気で言う。
コイツはさっきから何がしたいんだ。
容疑者リストの中に入って得することなんて1つもないぞ。
瀬野はなるほど、呟く。
何を理解したんだ。
「まぁ僕は誰が犯人かなんて一発でわかるけどねー」
あ、マイクオンになってた、と言って寺田はすぐにミュートする。
狩られた寺田が邪魔すぎる。
「とりあえず今わかってることは…」
事実確認をしたりして空気感を元に戻す。
人狼だからそういうことする必要ないと思うが、ついクセでやってしまった。
「やっぱり犯人は僕か楠本くんかのどっちか、ということだよね」
「そうなるだろうな」
俺は頷く。
「どうする、瀬野くん」
どっちに投票する? と吉川。
俺と吉川はお互いに投票した。
だから瀬野が俺たちのどっちに投票するかで勝敗が決まる。
議論の残り時間はあと5秒。
5.
4.
3.
2.
1.
タイムアップ。
結果:
吉川: 1票
楠本: 2票
瀬野: 0票
俺が建物から追放されてゲーム終了。
人間側の勝利という表示が出てきた。
おっ、勝ったじゃん、といつも通りのテンションで3人は喜ぶ。
「どうして瀬野は俺に投票したんだ?」
瀬野に尋ねる。
「投票する直前で一学期の休み時間に吉川からお菓子貰ったことあったな、っていうのを思い出してな」
議論、全然関係ないじゃん。
そういう要素を除いたうえで議論するものだと思うんだけど。
じゃあもう一戦、と言ってすぐにゲームが始まる。
その後は俺たちは1時間近くこのゲームで遊んだ。
「いやぁ、まさか楠本くんが騎士だったとはね!」
「それ本当の人狼ゲームの話だろ」
そんなことやってねぇぞ。
ゲームが終わったあとも何となく通話をつないだまま喋っている。
そういえば、と言って寺田が続ける。
「来週末に花火大会あるじゃん、あれどう?」
「どうって?」
吉川が尋ねる。
「僕はその日、普通に練習試合なんだよね」
夏祭りは行けないけど、他の人達はどうなのかなって、と補足する。
「サッカー部、マジで夏休みサッカーしかしてねぇじゃん」
「本当だよ」
夏休みとはって感じ、と寺田が溜め息を吐いた。
「サッカー部がサッカーしかしてないって、そんなのサッカー部?」
「サッカーしてるからサッカー部なんだろ」
で、どうなの? と寺田が尋ねる。
「まぁ、俺は行かないな」
人込み嫌いだし、と付け加える。
最後に夏祭りに行ったのは小学校くらいで親と一緒に行った記憶がある。
「俺は行くかもしれないな」
「え、意外だね、誰と?」
「中学校のヤツだよ」
と瀬野。
それで吉川はどうなんだという流れに。
「僕はもちろん花火大会に行くよ!」
「行く相手いるのか?」
「現地で見つけることができるはず!」
「花火大会アポなし現地集合は流石に無理だろ」
「ほら僕ってラブコメ主人公じゃん?」
作者なら花火大会で誰とも会わずに帰る展開にはしないはず、と吉川。
「そもそも吉川、お前自分がラブコメ主人公だと思ってるらしいけど、多分違うぞ」
行く相手がいないと、そもそもラブコメっぽい展開にはならねぇだろ、と付け加える。
「いや、行く相手はいるよ?」
「マジで?」
寺田は興味を持ったようだ。
そして吉川が話始める。
吉川の弟は同級生と花火大会に行くらしい。
そしてその行き帰りは吉川も一緒だとか。
行き帰りwith 弟であれば、花火大会に「行く」相手はいると言っても過言ではないとのことだった。
花火大会の往路復路はメインじゃねぇよ。
しばらく話してから俺たちは解散した。
「最近よく人狼系のゲームやらないんですか、って聞かれるんですけど…」
ゲームをしながら話始める。
DMに返信することは基本的にない。
ただ聞かれることが多いものは動画内で間を埋めるために答えたりする。
「私がそういうゲームしないのには理由が2つあって…」
そう言って私は説明を始めた。
1つ目は、他の人とコラボするのって結構しんどいからっていうこと。主催者を立てないといけない、とか暗黙のマナーがごちゃごちゃしてるから。
2つ目は、流行してるゲームに一度乗らなかったら、もう自分はやらないぞ、っていうモードに入ること。
一度コラボを断ったのに、他の人とはコラボするってなったら、最初誘ってくれた人に悪いじゃん。
「だから人狼系のゲーム、というかコラボは基本的にしないですね」
その後は滞ることなく収録を終えた。
収録が終わって、深山から連絡が来ていたに気が付いた。
『来週末の花火大会一緒に行かない?』
『一緒に行ってどうするの?』
『おしゃれな浴衣を探すんだよ!』
『私いる?』
『一人でいくのはアレだから一緒に来て!』
なんだ『アレ』って。
『夏休み入ってから一回も外出してないんだけど』
『それなら外に出るいい機会だね!』
詳しい話は後で連絡するから、と送られてきた。
断る言い訳を考えているうちに涙目のウサギが感謝しているスタンプが送られ、断る流れが終わってしまった。
「はぁー、マジか…」
アプリを閉じてスマホをベッドに放り投げる。
人がたくさんいるところとか、あんまり好きじゃないんだけど。
とりあえず動画の編集をしようと思い、来週末の花火大会は忘れることにした。




