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第36話 男性向けラブコメのヒロインになろうとしている人に優しい作品を書いてもらいたい。

夏休み!




楠本くん。



宿題だっる。


中学校のときよりも明らかに多い宿題を見て溜め息を吐く。

宿題を8月31日までに終わらせることができるか不安になる。


こういうときは、毎日コツコツやるべきだよな。


俺は宿題のページ数を数えて残りの日数で割り、毎日どの程度のペースで進めればいいか確認する。


いや、待てよ?


よく考えたら宿題を進めるうちにどんどん知識がついていくわけだから、作業効率も日を追うごとに上がって行くんじゃないか?


何だっけ、経験効果とか言う名前だった気がする。


俺は紙に計算式を書いてみた。



前提: 夏休みは残り30日

仮定: 1) 知識が毎日1パーセントずつ増

   2) もし知識が1%増えれば、作業効率は1%上昇


   (1+0.01)^30 = 約1.35



つまり、最終日は今よりも約35%良い効率で宿題を片付けることができるはずだ。

知識をつけるにつれて徐々に作業効率が上がるのであれば、今日するべき宿題は少なくてもいい。


よっしゃ、今日の宿題を軽く捻りますか。


毎日知識を1%増やすのは、日を追うごとに難しくなるから、お前の計画は現実的じゃないだって?


…作業効率が上がれば、一単位時間の増加に対する知識の獲得量も増える、ような気がするから問題ないでしょ。


こっちはどうすれば今日すべき宿題の量を減らせるか考えてるんだから水差すなよ。





深山さん。



一般の人が創作した小説も無料で読めるサイトがあるんだな。

吉川くんが教えてくれたサイトで何作品か読んでみた。


人気なジャンルは『転生したら令嬢だった』系。


思い返せば書店でよく見かけた気がする。

タイトルが長いやつとか。


こういうサイトで投稿された作品が書籍化されたんだろう。


それにしても同じような作品多い。


作者もこのジャンルの作品を読んだうえで執筆しているのであれば、作品のキャラ自体が別の作品で転生してるといえるのでは?


それっぽいタイトルにするのであれば、


『悪役令嬢として転生した私、作品は書籍化・アニメ化されましたがネット小説の中で生きていきます。』


みたいな感じになりそう。





瀬野くん。



「やあ久しぶりだね」

「最近日本に戻ってきたんですか?」

「そうそう、2日前に戻って昨日は実家で過ごしてた」


この人は俺の知り合い、というか親戚。


詳しくは知らないが、アメリカの会計事務所に働いているらしい。


確定申告が3月から4月で、延長申請とかあっても夏ごろは比較的有給が取りやすいとか。

いつも8月上旬に戻ってくるので、この人の話を聞くことが夏の楽しみでもあった。


「で、この1年でなんか面白いことありました?」


毎年言っているセリフ。


「いや、流石にそこまで面白いことはなかったんだけどね」


これも毎年言っているセリフ。



「アメリカで中古車を買うときは気を付けたほうがいいね」



半年くらい前、僕がかねてから気になっていた車があったんだよね。

総走行距離は15万キロオーバー。


どうするか悩んでたんだ。


ある日スーパーに行く途中。


いたんだよ。


この車をもう買いますよ、っていう雰囲気出しながら車見てるヤツが。


僕は焦ってディーラーに行って、「あの車、今買っていいですか」って聞いたんだ。


答えはもちろんイエス。


日本とは違って、アメリカは車を買えばすぐに乗れるんだよ。


浮かれ気分でその車に乗って帰宅したね。

で、問題があったのがそれから数か月後。



多分4月末くらいだったのかな。



その車でハイウェイを走ってた時にね、いきなり重い金属が下に落ちた音が真横からしたんだよ。


音の鳴ったほうを見るとびっくり、

フロントドアが完全に外れてた。


まぁ僕はかねてからオープンカーにも興味があったから、これは好都合と思い…



「オープンにする場所違いません?」


オープンカーって車の天井の部分がオープンになるものでは?


「そうなんだよね。最初はよかったもののハイウェイで故障したのがマズかった」

でも最終的にトラックのおじさんに車をつなげてもらって何とか帰宅できたから助かったよ、と言って笑う。



この人のアメリカであった不運な話は最終的に誰かに助けられて終わる。


運がいいのか悪いのか。





寺田くん。



夏休みってあんまり好きじゃないんだよね。

練習試合がめっちゃ詰め込まれるから。


例えばさ、自分たちが死にそうになりながら走ってるときに顧問の先生がテントで炭酸飲んでるのを見ると殺意湧くでしょ?


いや湧くんだよ、マジで。


今日も練習試合。


でも人工芝のコートで助かった。


サッカー部の人が全員嫌いなのはクレイコート。

砂のところだね。


スライディングとか絶対したくない。

石が転がってたら普通に怪我しちゃう。


それなりに規模が大きい大会だったら、クレイコートはほぼないんだけど、練習試合になるとクレイコートが半分くらい。


一時間当たりの利用料が安いらしいからって顧問の先生が言ってた。


ちなみに、クレイコートの場合は対戦相手と一緒にコートを作らないといけない。


メジャーを使ってピッチの大きさをはかって、ラインを引く。

それはもう和気あいあいと協力する。


特に、何度も対戦している相手とかだと普通に雑談しながらコート設営をするね。

試合になったら悪口言われるけど。


今日は人工芝だから、コート設営もグラウンド整備もなくてラッキー!


でも夏の人工芝は1つだけ問題が。


人工芝に埋め込まれてるチップが黒いから熱を吸収するんだよね。

地面に倒れたらめちゃくちゃ熱い。


こんなに大変な思いをしてるというのに、普通のラブコメってサッカー部をチャラそうなヤツらっていう先入観で見るよね。


あれ結構気に入らなくって。


他の人はそうかもしれないけど、僕は違うから!!

サッカーをしてる自分が好きなだけだから!!





夜野さん。


あー今の時間、カットしたい。


収録中なんだけど、ゲームが難しくって動画のテンポが悪くなりつつある。


というかすでに悪い。


そこまで編集をしたくないんだよね。

収録するのは気持ちいいんだけど、編集は面倒くさい。

時間が空くと、どこをカットすればいいのか忘れて最初から見返すこともある。


もし自分の中で今はカットするって決めてるときに成功したら、そのシーンを使わないといけない。


それも嫌で、間を埋めるトークをする必要があった。


こういうときって、どこまで話していいのかな。


年齢の話はしていない。


だってもし年齢を公開すれば、20年後のネットニュースにミュー(35歳)とか書かれることになりそうだから。


ネットニュースの記事書いてる人、マジでそこらへん気を使ってよ。


必然的に学校の話もできない。


趣味の話とかでもいいけど、視聴者層が私の好きなゲームをしてる世代とちょっとずれてるんだよね。


できるだけ、視聴者の興味がありそうな内容がいいか。


「あー…私がなんでホラーゲームをメインにやってるか話したいと思うんですけど、」


そういって話を続けようとしたとき、運よく敵から逃げ切ることができた。


「すいません、今の話なかったことにしてください…」


めっちゃ恥ずかしい。

無言でやってクリアしました、っていう方が多分良かった。

視聴者に、この人ゲーム詰まってるから話をしようとしたんだろうなってバレるじゃん。


でも楠本くんみたいに寝ながら聞いてるとしたら、このシーンが来ることにはもう夢の中?


これまではちゃんと画面見てよって思ってたけど、このシーンだけ全員眠ってくれないかな。





吉川くん。



「調子はどうだい、なおきくん」

「いつも通りですね」


連休のときにも家に来た親戚のおじさんはすでに酔っぱらっている。


「おじさん、酒弱いんですか?」

「若いころから酒が弱くってね、一杯でも飲めばすぐに顔が赤くなるんだよ」


酒を飲んでるというより、酒に飲まれてるよ、と笑うおじさん。


普通は酒を飲めば強くなるらしい。

個人差があるらしいけど。


「まだそういうこといえるってことは大丈夫なんじゃないですか?」


そういえば、ミラーリング効果ってヤツを聞いたことがあるぞ。

相手と同じような行動をすると、親近感を覚えるって言ってたっけ。


「僕も作品を読んでるというより、作品に読まれてるって思うときがありますよ!」

「なおきくんは物語の登場人物?」


はい、主人公です!と自信をもって応えた。





秋谷さん。



好きな人から連絡が来たとき、どの程度のスピードで返信するのが良いのかな。


早く返信しすぎると「この人、自分のこと好きなんじゃないか?」って思われるかもしれない。

逆に遅すぎると「この人、自分に全然興味ないんだな…」って思われる可能性も。


そういう描写は男性向けラブコメでほとんど出てこない。


この点について、青春をあこがれているうちにいつの間にか自分の青春が終わってしまった人たちが物語を書いているからだろう、と私は睨んでいる。


男性向けラブコメのヒロインになろうとしている人に優しい作品を書いてもらいたい。


そもそも私が吉川くんのこと好きなのはどうせバレてるし、どのタイミングで返信しても関係ない?


自分を納得させてから、私は送信ボタンを押した。




私:    『一緒に水族館に行きませんか?』既読19:27

吉川くん: 『2人で?』19:28

私:    『ふたりで』既読 19:30

吉川くん: 『オッケー』20:10

私:     『じゃあ1時に水族館前集合で』既読 20:12

特別なあなたへ。

ご覧いただきありがとうございます。

リアクションや感想、本当に嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。


夏野恵

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