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第26話 眼鏡外すと美人に見える?


「おっ夜野、日誌か?」


そうです、と言い日誌を担任に渡す。


今週は私が週番。


下校時刻になったら職員室まで行って日誌を提出しなければならない。

別にそこまで大変な仕事でもないけど、休み時間に黒板を消さないといけないから、

貴重な睡眠時間が削られてしまう。


今日は収録をしなくてもいい日だから、家に帰って早く寝よう。


担任は日誌を確認しながら、口を開く。


「そういえば夜野って、深山と仲が良かったよな?」


なんか面倒なこと頼まれそう。


そんなことないですよ、と否定したらしたで面倒なことになりそうだし。


素直にはい、と応える。


「今日、深山休みだっただろ」

「そうですね」


深山が学校を休むのは初めてだった。


「できればこの宿題を家までもっていってほしいんだよ」

「宿題なら明日とかでもよさそうですけど、なんでですか?」


そういうと先生は頭を搔きながら続ける。


「宿題の確認とかって何も考えずに作業できるんだけど、いきなり先週のヤツとかが混じってくると、面倒くさいんだよ」


先生になればわかるとおもうんだけど、と付け加える。


いや私、先生じゃないからわからないです。

っていうか、宿題のチェックを脳死でしてるって生徒に言っていいのかな。


「本当に悪いんだけど、深山のところまでもっていってくれないか?」

「まぁ、わかりました」


不承不承頷く。


あとついでに、と言って別のものも取り出した。


まだ何か頼まれるの?

あれじゃん、フットインザドアっていうヤツ。


「もし教室に残っていれば、で」

「はい」

「楠本にこの宿題を吉川のとこまで持っていってくれないか、って頼んでほしいんだけど」

「・・・はぁ」


結局、2人分の宿題を抱えて職員室から出た。

この調子で20人分の宿題を渡されるのではないか、と危惧していたがそんなことはなかったので一安心。


面倒な仕事は押し付けられたけど。


日差しの差し込む廊下をゆっくり歩く。

教室に戻ると数人の生徒が残っていて、その中に楠本くんもいた。


帰る準備をしてから近づく。


「ねぇ楠本くん」


声をかけると、楠本くんはすぐにスマホをポケットにしまった。


「いや、別にスマホを使ってることを言いたいんじゃなくって」

「よかった」


少しほっとした顔を見せる。

一応、スマホの目的外使用は校則違反だからね。


守ってる生徒はほとんどいないけど。


「担任の先生に、楠本くんに宿題を吉川くんの家まで届けるように、って頼まれたんだけど」

「あぁ、なるほど」


どうして私が話しかけたのかを理解したようだ。


「私も深山のとこにもっていくように頼まれてるから、お願いできる?」

「そういえば深山さんも今日休みだったな」


そういうと、気になることを楠本くんが教えてくれた。


「同じクラスの寺田っているじゃん」


あぁ、いつも授業中に寝ている。


「あいつがさ昨日の放課後、吉川と深山さんが歩いているのを見たって言ってたんだよ」

「吉川くんと深山が?」


楠本くんは頷く。


ほとんど接点ないと思うんだけど。


「それって本当?」

「あぁ、サッカー部って雷が鳴らないと基本的にグラウンドで練習するんだよ」

「そうなんだ」


練習をしているときに、豪雨の中で傘もささずに歩いてるヤツいるじゃん、って思っていたら吉川くんと深山だったらしい。


雨に濡れたから今日学校を休んだのか。

同じく雨に濡れたはずの寺田くんは学校に来て居眠りしてるけど。


色々と聞きたいことはあったが、詳しくは本人に直接聞けばいい。


楠本くんは寺田くんと一緒に宿題を届けるから、もう少し待っておくとのこと。


一応要件は伝えたので、もう特に話す必要もなかったのだが、もう教室に私と楠本くん以外残っていなかった。


「そういえばさ、楠本くんってゲーム実況者のミューって知ってる?」

「まぁ知ってるけど、なんで?」

「いや、なんか前に話しているのが聞こえたからさ」

「へぇ、夜野さんもゲーム実況とか見るんだな」

「まぁ偶然知ってただけなんだけどさ、どういうところが好きなの?」

「やっぱり声かな。なんか聞いてて気持ちが良いんだよ」

「声ねぇ・・・」


ごめん、面倒なこと頼んじゃって、と言って私はそそくさと教室から出て行った。


収録した自分の声を聞くとなんか変な声してるな、って思うけど、何も知らない人が聞くと、特に違和感を感じないみたい。

骨伝導によってどうこう、みたいな話は聞いたことあるけど、詳しくは知らない。


気持ちがいい声か・・・

ASMRでも始めてみようかな。





夜野さんの声、めっちゃ好みの声してるんだけど。

そう思いながら、俺はサッカー部の部活が終わるまで適当に時間をつぶす。


夏が近づいているためか、6時過ぎでもそこまで暗くなっていない。


「お待たせー」


しばらくすると、寺田が教室の入り口で声をかける。


俺は鞄を手に取り、教室から出た。


寺田と一緒に帰るときは、教室で宿題を終わらせる。

そのため、家に帰ってからは取り立ててすることもない。


時間があるんだったら勉強しろよ、と言われるかもしれないが、まぁそこはうるせぇってことで。


「今日はそのまま帰る感じ?」


たまにどこか寄り道をしよう、と提案することもある。


「なんか吉川の家に宿題を届けないといけないらしいから、吉川の家に行くぞ」

「おっいいね!人の家に行くの高校生になってから初めてかも!」

宿題届けるだけだけどな、と付け加えて俺たちは校舎を出た。


空が明るくてはっきりとは見えないものの、三日月がうっすらと出ていた。


「今朝も聞いたけどさ、マジで吉川と深山さんが一緒に帰ってたのか?」

「雨がすごかったから視界が悪かったけど、多分合ってると思うよ」


セットプレーの練習してて、地面に倒れて泥水が口に入ってきたときに2人の姿を見たから、と付け加える。


むしろそういう状況で見たものの方が信用できない気もするけど。


本当かどうかは後で聞けばわかるだろう、と思いこの話は終わった。

帰り道の途中にコンビニでおやつを買い、吉川の家に着いた。


吉川の家に来たことは数えるほどしかない。

俺が中学校の頃に何回か来た程度。


チャイムを押すと、吉川の弟が出てきた。


「あっ楠本さん、久しぶり」

「吉川兄に用があってきたんだけど」


そう言うと、ドアを開いて中に入れてくれた。


「ちなみに横のコイツは寺田な」


サッカー部の、というと吉川弟は少し驚いた様子だった。


「お兄ちゃんにサッカー部の友達がいるの?」

「アイツはサッカー部のキラキラしてるヤツが嫌いってだけで、サッカーガチ勢の寺田は問題ないらしい」


自分で説明していても、よくわからないが。


「僕が好きなのはサッカーをしている自分で、サッカーがめっちゃ好きなわけじゃないよ!」


ややこしいこと言うな寺田。


とりあえず吉川兄は気にしてないらしい、と言って吉川の部屋に向かう。


コンコン、とドアをノックすると、あっ、楠本くん?と言う返事が聞こえた。

一応、吉川の家に向かうということは伝えていたからだ。


部屋に入ると、吉川は本を読んでいた。


普通に元気そう。


「ごめん、来てもらって」

「まぁいいよ」


俺はそう言って、コンビニで買ったゼリー飲料と夜野さんに頼まれた宿題を渡す。


「吉川くん、めっちゃ本持ってるねぇ~」


本棚を見ると、確かに俺が来た時より小説が増えている。


「まぁ最近は電子書籍を読むことの方が多いんだけど、どうしても手元に残しておきたいって本は買うことが多いかな」


あと、書店で表紙を見て買うこともたまにあるらしい。



「それでお前、なんで今日休んだんだ?」


さっそく本題に入る。


「普通に雨に濡れたから休んだだけだよ」

「でも昨日、寺田が部活中にお前と深山さんが一緒に帰ってるのを見たって言ってたんだよ」


だよな、と寺田に聞くと頷いた。


「あ~・・・」


何か気まずそうな顔をしている。


マジで何かあったの?


「ほら、やっぱり僕が見たのは合ってたんだって!!」

寺田は声を上げ続ける。


「よく言うじゃん、雨に濡れた二人、何も起こらないはずもなく・・・みたいな!!」


よくは言わねぇよ。


「今日さ、深山さんも風邪で休みだったんだよ。それでお前も休みだった中で寺田が昨日ふたりを見たって言ってたからさ、ちょっと気になってな」


深山さんも休みだったんだ、と呟く吉川。


やっぱり昨日、何かあったじゃん。


いつの間にか、外はすっかり暗くなっていた。





まだ夕日の名残が差し込む時間帯。


深山の家に着いた。


さっさと終わらせようと思い、チャイムを押す。


インターフォン越しにはい、と応答があった。先日、深山の家に来たときはいなかった妹さんだろうか。


「すみません、かなでさんの友人の夜野です。宿題を届けに来たんですけど・・・」


すぐに廊下から足音が聞こえ、がちゃり、と音を立てて扉が開いた。


そこには、深山の妹らしき少女が。


深山と似ていて、目がぱっちりしてるな、という印象だった。

制服を着ているから中学生なのだろう。


「担任の先生に宿題を渡すように言われてきました」


今日、風邪で休んでたんで、と言うと、


「お姉ちゃん、なぜか折り畳み傘を持って行ってたのに傘を使わないで帰ってきちゃったみたいで・・・」


帰ってから、お母さんに怒られてましたよ、と妹さんは苦笑いをする。


えっ、傘持ってたの?


傘を持ってきてなかったから雨に濡れながら帰ったのだと思っていたが、そうではないらしい。


普通に傘を使えばいいじゃん。


話をしながら、深山の部屋まで案内してくれた。

一応ノックして返事があってから入る。


目の前には、いつも通りの深山。


「ごめん夜野さん、結構遠かったのに・・・」


別にいいよ、と言い宿題を渡しながら、机をちらっと視線を向けた。


「あれ、深山って視力悪かったっけ?」


机の上には眼鏡が置いてあった。


「いや、別に悪くないよ」


ほら、と言って眼鏡の持ち、レンズを見せた。

確かに、レンズの先に見えるものが歪んでいない。


伊達メガネだ。


「なんで眼鏡を持ってるの?」

「ほら、よくあるじゃん、眼鏡をはずすと美人だった?!みたいな展開!」


現実ではよく起こらないけど。


「眼鏡外すと美人に見える?」


どう?どう?といいながら、何度も眼鏡をつけたり外したりする。


「眼鏡があってもなくても、ずっと深山だね」


正直に感想を伝えた。


「そもそも、ずっと眼鏡をつけてた主人公が眼鏡を外すと実は・・・みたいな展開でしょ」


いまさら眼鏡つけても、眼鏡を付けてない深山のこと知ってるんだから印象は変わらない。


そっかぁ、と呟いてケースに眼鏡を入れる。


「私が入学式の時から眼鏡つければよかったのか・・・」


そういう問題でもないと思うけど。



本題に入る。



「さっき妹さんが、傘を持ってたのに使わないで帰ったって言ってたんだけど」


そう尋ねると、深山は苦笑いを浮かべた。


「いや~、完全に忘れてて・・・」


と視線を泳がせながら応える。

嘘つくの下手過ぎない?


「吉川くんと一緒に帰ったって話も聞いたんだけど」


びくっと肩を震わせる深山。


「あぁ、それも知ってたんだね・・・」


吉川くんも今日休んでてさ、と言うと、吉川くんも、と深山は呟く。


「別に傘もってなかったから吉川くんの傘に入れてもらった、とかだったらわかるんだけどさ」


深山の好きな少女漫画っぽいし。


「なんで持ってきた傘を使わなかったの?」


雨に濡れたら風邪をひくに決まっている。


そう聞くと、深山は考え始めた。


その間、本棚を眺めていると、この本棚に不釣り合いなフィギュアがあることに気が付いた。


あっ、という声が聞こえたので深山の方に視線を向ける。


「あそこで傘を使うと負けるって思ったからだ!」


吉川くんと勝負してたの?





ちょうどそのころ、学校に残り脳死で宿題に印鑑を押していた担任。


「そういえば、体育の先生に吉川と深山のクラスマッチの参加競技聞いてくれって言われてたけど、深山に頼むの忘れてたな・・・」


まぁ明日聞いても間に合うか。

すぐに切り替えて無心で宿題に印鑑を押し続けた。





翌日。


「あっ、おはよう深山さん」

「おはよう吉川くん」

「昨日風邪ひいて休んだって聞いたけど大丈夫だった?」

「うん、私は全然大丈夫!」


吉川くんもすぐ治ったみたいだね、と深山さんは応える。


以前よりも話すようになった吉川くんと深山さん。

そのきっかけは、一緒に雨に濡れて風邪をひいたこと。


自分こそ主人公という認識は修正されないまま、少しだけ仲間意識をもった2人だった。





中学校。


「そういえば一昨日、僕のお兄ちゃん傘持って行ってたのに傘使わないで帰ってきたんだよね」


風邪をひいて、昨日はお兄ちゃんの友達がお見舞いに来てた、と隣の女の子に話しかける。


彼女の名前は深山はるかさん。


最近隣の席になって話す機会が増えた。


少し驚いた様子で彼女は話し始めた。


「えっ本当?私のお姉ちゃんも一昨日、傘持ってたのに雨に濡れて帰ってきて、昨日は風邪ひいて学校休んだんだよね」


友達っぽい人が宿題届けに来てたよ、と付け加える。


「へぇ、そんなことってあるんだ」


傘を持っていたにそれを使わずに雨に濡れて風邪をひき、そして友達が家に来るというところまで同じっていうのは驚きだ。



「あっそういえばさ、今日って山口先生の授業あるでしょ? 今日の日付的に私が当てられそうだからさ、困ったときに教えてくれない?」


山口先生は基本的に予習してきているという前提で僕たちに質問するから、間違った回答をすると機嫌が悪くなる。


深山さんと話すようになったきっかけは、授業中に困ったときは助けてほしい、というお願いだった。



いいよ、と頷いた。


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