第24話
某Q&Aサイトにて。
KICHIKAWAさん
20XX/06/YY 10:14
急ぎです。
今は授業中で、隣の人と話し合う時間です。
隣の生徒とはそこまで話したことないんですが、
先日の席替えで少しあって、とても気まずいです。
話している雰囲気は出したいっていう気持ちは多分一緒だと思うんですけど、相手は話しかけようとする体裁をとりながらも話しかけようとしません。
こういうときって僕から話しかけるべきですかね???
それとも、相手が話すのを待つべきですか?
できるだけ早い回答をお待ちしています。
ベストアンサー
KUSUMOTOさん
20XX/06/YY 10:15
なるほど、それは大変ですね。
私にも似た友人がいるのですが、彼も正に今、同じような状況なんです。
先生が教室にいない今、彼はスマホを操作しているので、あなたが私の友人である可能性が高いかと。
それを前提に解答いたしますと、
そのスマホ、今すぐ引き出しにしまえ。
あと俺がスマホを触ってることは絶対先生に言うな。
あなたのお役に立つことができれば幸いです。
ベストアンサーKUSUMOTOに視線を向けると、普通に隣の人と話をしていた。
せめて、まともなアンサーしてよ。
一応ベストアンサーにしたけど。
僕は今、深山さんとのペアワークに苦戦していた。
先日の席替えでなぜか隣の席になってしまった。
沈黙が3分ほど続いている。
おそらく僕たちはこういうループに陥っているはず。
1. 「全然話しかけてこないじゃん」
2. 「仕方ないから、もう自分から話しかけようかな」
3. 「でも、もし同じタイミングで話しかけたらさらに気まずくなりそう」
4. 「よし、相手が話しかけてくるのを待とう」→1に戻る
このループ、20周くらいしていると思う。
これから先の1か月はペアワークがあるわけだから、普通に話し合う体裁はとっておいた方が良い、というのもわかる。
でも、自分から話しかけるのは勇気が必要だった。
「あー」と言いつつ、深山さんの様子を伺ってみる。
もし反応して「どうしたの?」みたいに声をかけてくれれば、そこから話し合いを始めることができるはず。
僕の声を聞いた瞬間、深山さんは僕の顔を見る。
かかった。
でも何も話しかけてこない。
深山さんが話すのを待ちながら、僕は深山さんの瞳の奥に映る自分を見る。
とても困っていた。
それは隣にいる吉川くんのこと。
クラスの人たちは話し合いをしているのに、私と吉川くんの間には見えない壁があるみたい。
話し合いの雰囲気だけは出そうと思って、身体を吉川くんの方に向けているけど、一向に話しかけてこない。
スマホを取り出して、何か文字を入力したかと思ったら、廊下側の方に視線を向けた。
やっと先生が帰ってくるのかも。
助かった、と思って気を抜いた瞬間、
「あー」と言う声が横から聞こえた。
今から何を話し合うの?
そう思って吉川くんの方を見ると、
『えっ、話しかけてこないの?』みたいな顔をされた。
いや、いま話しかけようとしたのは吉川くんのほうじゃないの?
そのまま十数秒、私たちは無言で見つめ合った。
何の時間、これ?
ヒーローなら別にいいけど、吉川くんに見つめられても・・・
いやちょっと待って。
もしかしてこんなに見つめてくるってことは、
私のこと好きになったんじゃないの?
主人公補正ってヤツじゃん。
メインキャラに好かれるのは難しいけど、モブには好かれやすいって本当だったんだ。
好かれる相手を間違えているような気もするけど、キャラクターランキングで5位くらいに入り込みそうな見た目してるし、末席に加えても良いかな。
深山さん、めっちゃ僕のこと見てくるんだけど。
普通に気まずい。
いや待てよ。
『最近あの子とよく目が合う』みたいな描写はヒロインが主人公に好意を向けているときのヤツじゃん。
間違いない。
窓側で後ろの席にはならなかったけど、僕が主人公であるということは疑いようのない事実。
でも深山さんがメインヒロインというのは、ちょっと荷が重いかも。
せいぜい4番か5番目くらいのキャラだね。
互いに品定めをしているなか、先生が教室に帰ってきた。
そして何事もなく授業が終わる。
下校時間。
雨脚が強くなってきている。
折り畳み傘を持ってきてよかった、と思いながら自分の靴を取り出す2人。
吉川くんと深山さんはいつも友人と一緒に帰ってるわけではない。
週に一度か二度、ひとりで帰宅している。
そして偶然にも、今日はどちらともひとりでの帰宅であった。
玄関に出た瞬間、2人は相手の姿を確認する。
どちらとも「相手は自分のことが好き」という思い込みを全く疑っていない。
理由は単純。
自分は主人公だから。
しかも相手はメインキャラではなく、せいぜいモブ程度。
加えて2人は、格下にだけは強く出る内弁慶気質であった。
主導権を握っているのは、間違いなく自分。
その圧倒的な優越感を胸に、同じ言葉を口にする。
「「あっ、傘持って来るの忘れた」」
「「・・・え?」」
雨の勢いは、更に激しさを増していた。




