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思ってたのと違う!  作者: 夏野恵


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第112話 おしゃれなジャンルだね。

「で、今から何について話し合えばいいんだっけ?」

「さっき山下先生が言ってたけど、ちゃんと聞いてた?」


アイドリングみたいなものだって、と言って吉川くんは腕を組む。


今は総合的な学習の時間。

総合的という名前の通りテーマが広い。


今回の場合は地域活性化をどうやって行うか、みたいなヤツ。

生徒4人でグループになり、その中で話し合った内容を最後に発表するらしい。


この班は私、吉川くん、星宮さん、深山さんの4人だった。


「とりあえず、いつ発表するんだっけ?」


みんな一斉に時計を見る。

時計には終了時刻書いてないけど。


「あと10分後くらいだね」

「あ、そうだった」


吉川くんが応える。


「まずは話し合いの進行を決めるべきじゃない?」

「じゃあまずはそれをじゃんけんで決めようか」


じゃんけんをした結果、深山さんが負けた。


「私はお飾りな存在だから」

「進行がお飾りだったら、話し合い自体がお飾りにならない?」


冗談だって、と言ってから深山さんが話始める。


「でもちょっと待って?」

「なに?」

「リーダーだからって私、発表はしないからね?」


そういって深山さんは目の前の吉川くんを見る。


「……なんで僕の方見てるの?」

「いや別に?」

「なんか発表の圧がかかってるんだけど」


だから何も言ってないって、と深山さん。


「とりあえず、話し合いを始めようか」


本当に時間が少なくなってきたので話を変える。

私が進行してるけど。


「話し合う内容は地域活性化だね」

「そうだね」


星宮さんが頷く。


「最後に『こうすれば地域活性化ができると思います』って言う感じかな」

「1人ひとりが輝ける街、みたいなスローガンを具体的にすれば良さそう」


あれ、もう正解出ちゃった?


この時間はスマホの使用が許可されていたので、他の地域のイベントを調べながら、自分たちの地域にあった事例を紹介すればいいでしょ、ということになった。


「で、結局誰が発表するの?」


おもむろに星宮さんがみんなに尋ねると、このグループに冷たい沈黙が生まれた。


「こういうとき、全然他の人と目が合わなくなるよね」


そういって星宮さんは吉川くんの顔を覗き込む。


「僕ね、発表するのを決めるヤツに前々から違和感があったんですよ」

「違和感?」


ていうか話し方なに?


「こういうときだけ『男子が発表して』って雰囲気はおかしくないですか?」

「一石を投じるような言い方だね」


吉川くんはそれがほんとに気に入らないらしい。


「だから今回、僕はナシでお願いします」


なんか真面目な雰囲気で言われたから、それでもいいかなと思っていると……


「吉川くんがグループワークで発表してるの見たことないんだけど」


深山さんからのタレコミがあった。


「だから吉川くんが発表するべきだと思います」

「いや、僕が発表するって言うのおかしくない?」


「せめてじゃんけんでしょ」と吉川くん。


それなら、と私たちは再びじゃんけんをしようと手を出す。


「ちょっと待って、さっき深山さんがじゃんけん負けたじゃん」

「絶対それ言うと思った」


じゃんけんしようって吉川くんが言った時点で怪しいと思っていたらしい。


どっちとも発表したくないから相手に押し付けている。

この感じならどっちか発表してくれそう、と思いながら星宮さんに視線を向けた。


「……ん? どうしたの秋谷さん」


こちらの視線に気づいて私に尋ねる。


「いや、なんか面倒臭くなってきたから私が発表してもいいかなって」

「え、マジ?」


吉川くんと深山さんは話すのをやめて私を見た。

ちゃんと聞いてるのね。


「別にいいけど」


どういう内容を発表するかくらいはちゃんと考えて、と付け加える。


3人が発表内容をまとめて発表順になるのを待ち、すぐに私たちの番になった。



*



授業が終わって下校時刻になった。


「秋谷さんって今帰る感じ?」


鞄を手にしたタイミングで星宮さんに声をかけられた。


「とりあえず図書室に行こうかなって」

「へぇ、図書館」


「まだ図書室行ったことないんだよねー」と言って、星宮さんは鞄を手にする。


「私も一緒に行っていい?」

「もちろん」


教室を出て渡り廊下を通る。


「秋谷さんは図書館によく行くの?」

「週に1回行くかどうかかな」

「ちょっと意外かも」


星宮さんから見ても、私は読書をするようには見えないらしい。

私も星宮さんが読書をするようには見えないけどね。


図書室に到着していつも通り扉を開けた。


「あれ、星宮さんじゃん」


こちらに視線を向けて明空さんが呟いた。

今日の図書委員は明空さんみたいだ。


「私は秋谷さんの付き添いだよ」


すぐ机に荷物を下ろして本棚に向かう。


「秋谷さんってどういうジャンル読むの?」

「こういうジャンルかな」


私は海外文学をコーナーを指さした。


生徒はほとんどいなかったけど、図書室なので小さい声で話しを続ける。


「おしゃれなジャンルだね」

「その表現あってる?」


「翻訳された本を読んでるってなんかおしゃれじゃん」と星宮さん。


「でも最近は日本の作品も読んだりしてるよ」

「へーなんで?」

「なんとなくかな」


この辺の作品も大体読んだし、と応えた。



*



「本当に本を借りなくてよかったの?」

「うん」


図書室から出ていつものボリュームで会話を続ける。


明空さんはまだ仕事があるとかで、一緒に帰ることはできないと言われた。

そのため、私と星宮さんのふたりで途中まで帰ることになった。


もう一度同じ渡り廊下を通って階段を下り、靴を履き替えて玄関から出た。


「そういえば星宮さんってさ、」

「うん、なに?」

「今住んでるところと中学校のときに住んでた場所って違うの?」

「ほぼ同じだよ」


マンションの階が違う程度らしい。


中学校からも高校からも比較的近い、丁度いい場所に住んでいるらしい。


「めっちゃ羨ましいんだけど」

「そんなことないよ?」


雨の日はきついという。


「秋谷さんってバス通だっけ?」

「うん」

「じゃあここでお別れかな」



「またねー」と手を振って私たちは別れた。


バスを待つ間、ふと疑問が生まれてこの地域のマップをスマホで検索し、高校と中学校からちょうどいい近さの場所を調べてみた。


徒歩ということは高校と中学校からそれぞれ半径1キロ圏内の場所なはず。

地図上になるべく丁寧に円を書いて、二つの円が重なる箇所を見る。


私も詳しく知らないけど、吉川くんが住んでいる方面の場所だった。


中学校の頃に仲が良かったのであれば、お互いの家に行っていてもおかしくない?

いや流石に思春期の中学生が異性の家に行くってのはハードルが高いかな。


もやもや考えているうちにバスが来たので、アプリを消してすぐに乗り込んだ。

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