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思ってたのと違う!  作者: 夏野恵


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第111話 もし告白されたらどうするの?

「学校には慣れた?」

「お母さんみたいなこと聞くねー」


「2週間もしたころにはなれたかな」と星宮さんは付け加える。


今は星宮さんと2人で校門に向かっているところだ。


「そういえば、なんで明空さんは一緒に帰ろうって?」

「星宮さんへの誕生日プレゼントを買おうと思ったからだね」

「えーマジ?」


「ありがとー!」と星宮さんは手を合わせた。


「今なにか何か欲しいものある?」

「正直ないかな」

「あはは、困ったね」


困った雰囲気を出すため、目線を少し下げる。

星宮さんがそう応えるのは想定の範囲内だった。


「そういえば星宮さんってラブコメ読むんだっけ?」

「読むね」

「これまで興味はあったけどなんとなく買ってなかった作品とかある?」

「それはたくさんあるかも」


星宮さんは少し上を見る。


「なら書店で本を買うとかでもいい?」

「明空さんは大丈夫?」

「もちろん」


予想通りの展開になった。


さっそくバスに乗って、一番近い書店に向かう。


「星宮さんってラブコメ好きそうなイメージじゃないんだけど」

「ぱっと見はそうかも」


「私も見てラブコメ好きそうな見た目してないなって思うし」と付け加える。


「でも学校で読んでる感じじゃないんだね」

「そうだねー」


学校だと集中できないから、家で読んでいるらしい。


バスから降りて少し歩くと、すぐ書店に着いた。

店内に入り、ラブコメが陳列されている本棚に向かう。


「そういえば星宮さんって紙派?」

「いつもは電子書籍かな」

「もしかしてそっちの方がよかった?」

「いや、こういうのは形に残しておきたいし」


紙の本でも問題ないようだ。


一緒にラブコメの本棚を眺めてみる。

長めのタイトルの作品が所せましと並んでいた。


「明空さんはラブコメとか読まない感じ?」

「私はほとんど読まないかな」


「でも、」と言って、私はすぐに続ける。


「吉川くんが読んでるって話を聞いたから興味あるね」

「なおきくんと明空さんって話したことあるんだ」

「ちょっとだけね」


ふたりだけで直接話したことはそこまで多くないけど。


「私の知ってる頃は、だよ?」

「うん」

「なおきくんってあまり人と話してなかったんだよね」

「へーそうなんだ」


ちょっと意外かも。



*



数年前に発売したラブコメを買って外に出る。


「今日は本当にありがとね!」

「私も星宮さんが喜んでくれて嬉しいよ」


せっかくだから同じ本を一冊購入した。

家に帰ってから読んでみよう。


「ここからバスで帰る感じ?」

「うん、明空さんも?」

「そうだね」


帰りの途中までは一緒のバスに乗って帰ることになった。

雑談をしているとバスが来たので、すぐに乗り込む。


「そういえば星宮さんって彼氏いるんだっけ?」


バスが動き始めてから、私は口を開いた。


「いないねー」

「ほんとに?」

「それを言ったら明空さんもだけど?」


現時点で、誰かと付き合うつもりない。

付き合いたくないってことではないんだけど。


「星宮さんのこと気になってる男子とか結構いると思うけどなー」

「えーマジ?」


私から見ても、星宮さんは魅力的な女の子だ。


「そうなってきたら、なおきくんの出番かなー」


少し間が空いてから、星宮さんは続けた。


「ほら、年頃の男子って、女の子に優しくされたら勘違いしちゃうじゃん」

「たぶんそうだろうね」


ちょっとしたボディータッチでさえ、好意を寄せられるきっかけになりうる。


「でもあの距離感を見れば、私に告白する男子ってだいぶ減ると思うんだよね」


そういう意味で、吉川くんは防波堤的な役目があるらしい。


赤信号になってバスがゆっくり止まる。

星宮さんの話を頭の中で整理してから、私は口を開いた。


「でもさ、もし吉川くんに告白されたらどうするの?」

「なおきくんにってことだよね?」

「うん」


星宮さんの距離感は、吉川くんを勘違いさせてもおかしくはない。


「その時も同じように断る感じ?」

「そうだねぇ……」


信号が青になってゆっくりバスが動き始め、景色がどんどん移り変わっていく。


しばらくして、星宮さんが顔を合わせずに呟いた。


「まあ、そのときは責任とるかな」


星宮さんは、さっき買ったラブコメの本の表紙を優しく撫でた。

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