第108話 いきなりラブコメ主人公が上半身裸になるの?
「女子の服装検査ってどんなところ見られるの?」
「色々あるねー」
今は服装検査が終わった後の授業前。
星宮さんや吉川くんと雑談をしていた。
ちなみに最近席替えをしたけど、私たち周りの並びはほとんど変わらなかった。
深山さんと星宮さんの席が入れ替わったくらい。
「さっき女子だけ残されてたけどアレは何だったの?」
「ナチュラルメイク以外は禁止、みたいなこと言われたね」
女子だけ残されて、明らかにメイクしてるのはダメって説明を受けた。
「髪型とかはそこまで注意されないかな」
「羨ましいね」
「男子の場合は髪が目にかからないように、みたいなヤツだっけ?」
吉川くんは頷く。
「今のなおきくんの髪型はオッケーだったの?」
「ギリギリセーフって言われた」
「本当にセーフ?」
星宮さんが吉川くんに視線を向けた。
「でもそう言われたからね」
「いま見た感じだと、目にかかってない?」
そう言って星宮さんは顔を覗き込んだ。
本当に距離が近い。
でも吉川くんはそこまで動揺してる感じじゃなかった。
「基本的に見られるのが前髪でしょ?」
「うん」
「そうなってくると、いかに前髪を目にかからないようにするかっていうのが重要になってくるわけ」
だろうね。
「だから前髪をちょっと流したりして調整できるってことなんだよ」
こういう感じで、と吉川くんは前髪をちょっと流す。
「ぱっと見違和感あるけど」
「先生たちはそこまで気にしないからね」
意外と大丈夫らしい。
先生たちも本気で服装検査をしているわけじゃないからだろう。
「で、そのときにちょっと思ったんだよね」
「なにを?」
「ラブコメの主人公たちはどうやって服装検査を乗り切ってるのかなって」
ラブコメ主人公と言えば前髪長めの男の子が多い。
目が前髪で完全に隠れている主人公も昔はけっこういた。
「自由な校風っていう設定で色々オッケーになってるのもあるじゃん」
ラブコメに対する解像度が高い。
星宮さんってほんとにラブコメ読んでるんだな。
「そういえば星宮さんの前の高校はどうだったの?」
「ほとんど変わらなかったけど、色々やってる生徒もいたかな」
インナーカラー入れてる女子が何人かいたらしい。
「そういう生徒たちはどうしてたの?」
「視線を誘導してたね」
再検査になってもそこまで痛手にならない箇所に先生の注意を向けさせるようだ。
「他の箇所に注意を向けさせるって言うのが大事なんだね」
吉川くんが腕を組みながら呟く。
「ラブコメ主人公が他に注意を向けさせる箇所って、帰宅部なのになぜか割れてる腹筋くらいしかないでしょ。だから、腹筋を見せるって言うのが有効だと思う」
「いきなりラブコメ主人公が上半身裸になるの?」
失うもの大きすぎない?
「よく考えたらさ、ヒロインも校則的に結構怪しくない?」
「怪しいっていうかほぼアウトだろうね」
私は吉川くんに応える。
髪はがっつり染めてるし、スカートの丈も相当に短い。
ウチの高校ならヒロインたちは歩く校則違反になるはずだ。
「でもさ、ヒロインが普通の女の子だったら挿絵とか困りそうじゃない?」
「やっぱりいつもベストコンディションでいてもらわないと」と星宮さん。
「普通の女の子が不意に見せる可愛さっていうのも刺さるけどね」
「彼女が見せた笑顔がずっと忘れられないみたいな」と吉川くんは補足する。
それは少女漫画寄りだと思うけど。
でも吉川くんが普通のそう言ってくれて少し安心した。
今の私の見た目は普通な女の子ではないかもしれないけど。
授業開始数分前になったので、私たちはそこで話を終えた。




