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金持ちの青年と居候の少女  作者: 燈華
第一章 とにもかくにも日常編

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少女と青年4

「勝手に会うなんて。あいつ出禁にしてやろうかな」


話を聞いた青年の口から不穏な言葉が飛び出す。


「駄目ですよ。お友達なのでしょう? お友達は大切にしないと」


少女のせいで友人間に波風を立てるわけにはいかない。

しかし青年は首を横に振る。


「僕に許可なく君に会っただけじゃなくて口説いたんだよ? 出禁じゃ生温(なまぬる)いくらいだ」

「いえ、口説かれたわけじゃありませんよ? それに、会ったのは偶然です。廊下を歩いていた時に偶々(たまたま)

「君は偶々かもしれないけれど、向こうは狙っていたかもしれない」

「いえ、本当に偶々だと思いますよ」


あそこをあの時に少女が通るなどと予測するのは難しいだろう。

だが青年は疑っているようだ。


「そもそも僕がいないのにあいつはこの屋敷に何しに来たんだ」

「それは私も思いました」


あの後も何か用事があったようだったから本当にちょっと寄っただけのようだった。

青年が少し考えるように黙った。

だがすぐにあっさりと言う。


「まあそれは後で聞いてみればいいか」


確かにそれは本人に聞かないとわからない。

青年が少女を見る。

いつもと変わらない表情。

だが目だけはどことなく真剣だ。


「それで君はあいつに会ってどう思った?」

「どうって?」


どういう意味だろう?


「格好いいと思った?」


少女はきょとんとする。

それから昼間会った男性の姿を思い出してみる。


うーんと首を傾げる。

まあ、確かに、格好いいと言えば格好いい人ではあった。

だがそれだけだ。

特に思うことはない。


少女の反応の薄さに青年はあれ? という顔をする。


「あいつ、格好いいって女性から人気なんだよ」

「そうなんですね」

「興味なさそうだね」

「貴方の友人としか」

「そうなんだ」


青年はどこかほっとしているように見える。

何故だろう?

もしかして友人が格好いいと持て(はや)されているからコンプレックスを持っているのだろうか?

少女としてはむしろーー


「貴方のほうが格好いいですし」


ぽろりと言ってしまった。


「え……?」


そんなことを言われるとは思っていなかったという顔だ。

少女は慌てる。


「あ、あのっ、今のは」

「……もう一度言ってくれる?」

「え?」

「もう一度言ってほしい」


青年は真剣だ。

きっと、少女のわからない何かがあるのだろう。

それなら少女のやることは一つだけだ。

自分の恥ずかしさは置いておくべきだ。

心の中で覚悟を決める。

少女は青年を真っ直ぐに見て告げた。


「私には貴方のほうが格好いいです」


ふわりと青年が微笑(わら)う。


「ありがとう。誰に言われるよりも嬉しい」

読んでいただき、ありがとうございました。

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