目的は戦費の捻出
燈実様は、一覧を書いた紙を見せてくれた。
2つだけ寺がIN。金満寺と銀満寺。
「金満寺と銀満寺は天下り寺だ。銀満寺には外交の大臣の奥方の親戚が天下っている。燈実が調べてくれたんだが、六零五と六零八の船は、都の河港を使用した記録がなかった。他は全て記録があったそうだ」
東の国へのお土産を運ぶ船は「都の河港から華港まで」とルートが決まってる。だから、華港使用許可証は、都の河港利用許可証を兼ねてるんだって。燈実様が調べたのは、都の港の使用記録だけ。それがなかった=船は出ていない。
「ってことで、麗の推理、採用」
「ただ、疑問なのは、どうしてこんな風に書いたのか、だ。こんな妙な行間がなければ、不審を抱かなかったのに」
同感。
「そうですよね。陳氏様が水運屋と繋がってるなら、全部水運屋に発注して、水運屋からキックバックしてもらった方がバレないですよね」
「うわっ。麗、悪っ」
「あの冊子は誰が書いたんですか?」
質問すると、李氏様が考え込む。
「この踊るような癖字は、経済の大臣だ。なぜだ」
「「?」」
「大臣が自ら資料作成したり、議事録を書いたりしない。普通は」
大人数や大きな会議のとき、議事録専門の者がいる。内々の会議では、一番下っ端が担当。
議事録専門抜きで、大臣クラスが下っ端になる会議などほとんどない。あるとしたら、議事録不要の密談。
こと、予算を握る経済部門は権力が凄まじく、経済部門の大臣にはみんながひれ伏す。つまり、経済部門の大臣より上なんて限られてるってこと。
「上は誰がいるんですか?」
尋ねると、燈実様が指を折りながら挙げていく。
「皇帝、内閣府長、外交の大臣、内閣府人事長、あと法の大臣? そんだけ」
「少なっ」
法の大臣は李氏様の父親。燈実様の祖父。
「私腹を肥やそうとする行為だから、皇帝は違う。身内を庇うわけではないが、法の大臣は死ぬほど不正を嫌っている。内閣府人事長は2年前、都を離れ、新しい領土を整備していた。ということは、内閣府長&外交の大臣&経済の大臣、かあるいは、外交の大臣&経済の大臣」
李氏様が推測。
だったら。
「少人数の間のメモみたいなものじゃないですか?」
「そうだな。通常、こういった記録を読み返す者はいない。ここに書き記すことで、当人達の確約書になっていたのかもしれない」
きっと3人はグル。燈実様が書いた一覧表が正しければ。
生糸&絹織物、陶磁器&芸術品は国内で販売すると利益になる。それ以外の運搬が水運屋に依頼してある。これを決められるのは、内閣府長。
燈実様は気が早い。
「李氏様、船が出てないってことで、捕まえて、財産没収ってできませんか? 戦費を捻出するのが目的です。父が、大砲足りなくて作らせたがってるんです」
「全然ダメだな。まず、『港を利用したとき、うっかり役人に華港使用許可証を見せるのを忘れた』と言われるだけだ」
ホントだ。
仮に船が出ていないことを証明できたとして、捕まえられるのは金満寺と銀満寺の住職。寺が船を所有していなければ名義貸しには辿り着く。そこで終了。誰に名義を貸したのかまでは分からないまま。
2年も前のこと。品物は売り捌かれた後。
目的は戦費の捻出。
どう見積もっても、辿り着くのに困難がありすぎる。
ところで、国庫金が増えたからって、それを勝手に戦費に充てていーんだろーか。ダメだよね。
それをするには、皇帝とか内閣府長とか経済部門に了承もらうんだよね? もらえる?
この辺は管轄外。自分のできることに集中しよ。
珍客登場。
「魅音の忍びの腕は素晴らしいのです」
机を挟んで正面に鎮座する第七皇女は、動きやすそうな全身黒ずくめ。どこかの盗賊みたいなファッションでやってきた。お付きの侍女、魅音も同じく。今、真昼間だけど。
李氏様邸はセキュリティがガバガバ?




