シンボル下の下の下
「準備 積荷 華港」という項目には、野菜、塩漬け肉、鶏、などが書かれている。
行間のある方が「河港」、それに並ぶ「華港」という項目。
これ、「河港」ってのは都の河港で準備して船で運んだ積荷で、「華港」の方は陸から載せた積荷?
キラと兄と3人で遊覧したとき、1日では到着しなかった。野菜は少しでも新しい物を船に積みたい。肉だって塩漬けでも新しい方がいい。鶏は華港付近で調達する方が楽。
そう仮定すると、「河港」で準備するものは、華港使用許可証を持った船で運ばれることになる。もし行間で区切られた部分が、船1隻に載せる積荷のことを示すとしたら。
金満寺の金獅子香炉の中に入っていた華港使用許可証の「六零八」は未使用だった。金満寺が載せるべき積荷は、河港から華港へ運ばれていなかった可能性がある。
李氏様が出勤する前に考えたことを知らせた。
そして、今更だけど質問した。
「下の下の下って、もう、次の人探さないんですか?」
「今、下の下の下の檻は、身分制度撤廃の演説台になっている。とてもじゃないが、次の下の下の下なんて選んだら、私の身が危ない」
「じゃ、もう、下の下の下はいらないんですね」
「だな。国が変わるかもしれない」
「国が?」
「麗、覚えているか? 『最も下位の女の声が国中に響くとき、この国は新しく生まれ変わる』という予言を」
「あ」
「実際の香香とみんなが作り出したシンボルは違う。だが、民の中では、下の下の下の身でありながら民主制を訴えるのが香香なんだよ」
異能の予言。異能は導きとなり、李家を繁栄、存続させてきた。
あの予言が現在のことを指しているならば、国が新しく生まれ変わる。
窓を開けて風を通していた夕方、雲嵐によく似た声が聞こえた。似てる。けど違う。
未だしつこく冊子を読み返してた翠蘭と私は、2人で顔を見合わせる。使用人が対応してる。李氏様は帰宅前。
あれ? 獣の匂いがする。と思ったら、窓の下にガオ。
「ガオ、帰るぞー」
雲嵐によく似た声に呼ばれると、ガオは塀をぴょんと飛び越えて行ってしまった。
なんだったんだろ。誰だったんだろ。ガオが来たってことは、雲嵐の家族? 訊きたくても、私は屋敷の者に姿を見られないようにしてる。
早く知りたいよ。
李氏様が帰宅。
「麗。私が帰る少し前に雲嵐の兄が来たそうだ。弟が世話になったとお礼を頂いた。『雲嵐は休養させている。いつでも会いに来てやってほしい。安全が第一だけれど、どこかへ行くときは、必ず雲嵐に知らせてやってくれ』だそうだ」
「ありがとうございます」
「よかったな。泣くな、麗」
「……」
「家族公認ってことだ。まあ、麗がいなくなってあんな姿になったのを見たら、周りは認めざるを得ないだろう。ここに来たときは、もっと凄かったな」
李氏様は笑った。
「本当にありがとうございます」
「男とは情けないな。私はケツの皮が剥けても馬で狂ったように走った。家に帰ったとき、翠蘭は普通に寝ていた。雲嵐はあんな姿になって麗を探し求めた。お前の方はぷくぷくしている」
「ぷくぷく?」
「いや、言葉のアヤだ」
「……」
私だって泣いたんだから。確かに冷麺食べたりして楽しんでたけど。
「ところで、新しいことが分かった。来てくれ」
ついて行くと、別棟の一室。夕食中の燈実様がいた。それに同席。私はもう夕食を終わってるから、軽く、点心とデザートを。
箸を止め、燈実様がバサっと紙を広げる。
「もう一度、華港使用許可証の登録を調べてきたんだわ。あの港の使用許可証は、貿易のときだけ発行されて、そのときしか使えない。で、今朝、麗が李氏様に言った推理を当てはめてみた。李家の銅銭を運んだのは水運屋の船。だから、六一零から六一三を基準にした。
六零一、水運屋、 穀物、薬、縄、その他諸々
六零二、水運屋、 書物
六零三、水運屋、 書物
六零四、布市、 生糸&絹織物
六零五、銀満寺、 生糸&絹織物
六零六、舟商、 生糸&絹織物
六零七、舟商、 陶磁器&芸術品
六零八、金満寺、 陶磁器&芸術品
六零九、宝組、 陶磁器&芸術品
六一零、水運屋、 銅銭
六一一、水運屋、 銅銭
六一二、水運屋、 銅銭
六一三、水運屋、 銅銭
ってなった」




