行間が示すものは
御者は賠償金に関する冊子をまとめて大きな布に包む。
「これ、今日中に返します。明日は夏世界について調べます」
「どうやって調べるんだ?」
「美術商にでも当たります」
「待て。陳氏様が絡んでいるなら役人として動かない方がいい。私が香炉を求めていることにして、元上司に聞いておく」
「では、よろしくお願いします」
御者が発つと、李氏様は持っていた冊子でポンと燈実様の頭を叩く。
「風邪をひくぞ」
「あ、帰ります」
「港の許可証、調べてくれてありがとう。燈実」
「あ、はい。あれ? アイツは?」
「もう帰った」
李氏様と燈実様は退室した。半分の冊子を残して。
これ、調べとけってことだよね?
腕、鳴るわ。何かありそーだもん。
陸続きで面識のある北の国への賠償金をちょろまかすようなヤツ、海の向こうの東の国との貿易なんて、ちょろまかしてるに決まってる。だってさ、何を送るか決定権もあれば、目録的なもの作るにしても、内閣府長が自分で作れちゃう。
東の国から届いたものだっていただき放題。よーし。
記録を見ていく。
貢物の目録は東の国の使者から皇帝が直で受け取ってる。じゃあ、誤魔化せないか。
何貰ったんだろ。そーだ! 金銀なんじゃね? 東の国といえば金銀ざっくざく。
うきうきと冊子に目を落とす。
金銀なし。
思い出した。東の国は儲け重視。だったら金銀を差し出すわけがない。もとより央の国と東の国は主従関係。主人から従者に下賜はあっても逆はない。なんか、テンション下がったし。
やる気を削がれ、ぼーっと冊子を捲る。
現れたのは、皇帝から貴族達への労いの言葉。貢物を貴族達に下賜している記録。東の国の刀を1本ずつ。その他、扇子や漆器を渡してる。
なんてことを。お土産代や船を出すのにべらぼーにお金かかってるのに。売ればいいじゃん。ってか、売れよ。
へー。寺にも渡してるんだー。ずらーっと寺の名前が並ぶ。あるだろうなと見ていくと、やっぱりあった金満寺。
東の国からの大量の硫黄は、火薬を作るところへ譲渡されてる。だからぁ、売れよ。
別の冊子に費用の工面についてが記録されていた。貴族がたくさんの費用を寄付してる。用意したお土産の多くも貴族の寄付。寺も同様。だから下賜したのね。納得。
寺の寄付金額はそれほど多くない。金満寺と銀満寺以外は。金満寺と銀満寺は他の寺より二桁多く、貴族と同等かそれ以上。寺って金持ちー。
李氏様の実家、つまり、法の大臣は、銅銭を寄付してる。李家といえば銅銭なんだろーなー。
金満寺は大量の書物。そして金獅子香炉2つ。
え?
明け方不思議な夢を見た。
小さな船が2艘並んでやってくる。そして、1つは左の大きな船に、もう1つは右の大きな船に入って行く。それが続く。
花を積んだ船2艘、輝く金の屋根の船2艘、ずっしりと銀を乗せて船体が少し沈んだ船2艘、冷麺を作る船2艘、馬&ガオが乗った船と馬&わんこが乗った船。片方は左の、もう片方は右の大きな船にすーっと入って消えていく。
起床。
即、自分のメモを見た。
穀物 薬 縄 その他諸々
書物
書物
生糸&絹織物
生糸&絹織物
生糸&絹織物
陶磁器&芸術品
陶磁器&芸術品
陶磁器&芸術品
銅銭
銅銭
銅銭
銅銭
書物2、生糸&絹織物3、陶磁器&芸術品3、銅銭4。
夢を思い出す。大きな船が2つ。それに分けて乗せるよう船が準備されていたとすると、生糸&絹織物、陶磁器&芸術品が小船1つ分ずつ余る。
仮説:東の国へ行く船の積荷は、そこへ運ぶ船に分けられて記載されていたのではないか。そして、生糸&絹織物、陶磁器&芸術品の船1艘分は、出ていなかったのでは。
もう一度冊子の方を見てみた。
行間のある部分。項目は「準備 積荷 河港」。
その先に、「準備 積荷 華港」という項目があった。




