純粋培養興味津々
「都に戻られたのですね」
「いえ。まだ都へは入っていないことになっています」
後宮に帰ったら、もう抜け出してこんなことできないもんね。
「なぜここへいらっしゃったのですか?」
李氏様の屋敷の中、別棟の私の部屋。
「香香の元気な顔が見たかったのです」
「恐縮です」
なんかもう、麗って名前に変えたとか、私は身を隠しきれていないのかとか、男装に関してツッコンデほしいとか、昼間に黒ずくめは目立ちますよとか、言いたいことはいっぱいあるけど、黙っとこ。
それにしても、魅音さんって。お胸で服がぱつぱつ。
「では、魅音」
「はい」
魅音は部屋の外へ出た。
「ずっと香香の身を案じておりました。どこでも歌を聞きます。小さな子供達まで歌っていました。お尋ね者の紙も見かけました」
「誤解しないでください。私は民主制など掲げておりません」
自分が過ごしやすければ、体制なんてどーでもいい。
「分かっていますよ。本人が行方不明ということは知らされていましたから。そして、どう考えても移動できない距離のところで暴動が起こっていたのですから」
「信じてくださり、ありがとうございます」
「元気な姿を嬉しく思います」
「ご心配をおかけしました」
「実は、お話があるのです」
「はい」
なんだろ。
「香香、女の先輩として訊きたいの」
「女の先輩、ですか?」
首を傾げる私。ぽっと頬を染め、俯く瑞華様。
「ほら。香香はカレシが助けに来たのでしょう? そして手に手を取り合って逃げましたね? そんな、女、である香香に訊きたいのです」
「な、何でしょう」
「実は、私、どうしても殿方を知らずに嫁ぐのが嫌だったの」
「殿方、ですか?」
「女の扱いに慣れた人にいろいろしてもらいたくて」
「いろいろ」
「襲いました」
「ええ?!」
男を? まさか、ね。皇女だよ。お姫様だよ。
どきどきどきどき
「酔わせて」
「酔わせて?」
ま、まさか。
「縛って」
はい、OUT。
「……」
「服を脱がせてみたりして」
「たり」
「無差別に選んだわけではありません。遊び慣れて後腐れない、女とスルことなんて挨拶程度にしか思っていない人です」
クズい。そんな男どーやって見つけたんだろ。
「そうですか」
「侍女達が噂していたのです。あの人になら遊ばれても楽しそうと」
環境に問題あるわ。「遊ばれても楽しそう」なんて、純粋培養興味津々のお姫様だったら、好奇心がムクムク膨らんじゃうって。
「魅力的な言葉ですね」
「相手は私が第七皇女だと知っている人です。やめてくださいと懇願されました」
「しますします懇願しますよ」
恐ろしい。
「でも、私、衝動が抑えられなくて」
ゴクリ
思わず唾を飲み込んじゃったよ。
「……」
「柔らかい、殿方の、ああ」
どうしよう。鼻血が出るかも。
「……」
「無理矢理、唇を」
なーんだ。だよねだよね。皇女だもんね。
「そうだったのですか」
「私、言いました。ハジメテを身の毛もよだつようなジジイや生理的にムリな男に捧げたくないと。痛いと聞いてます。体だけじゃなくて、心まで痛いのは嫌。だから、1度でいいから抱いてくださいと」
抱っ!
「瑞華様。まさか」
「たった1回の思い出でも、それがステキなら、見知らぬ場所に嫁いで生きていけます。そう告げたら、縄を解くように言われて、、、忘れられない時間が始まりました」
「……」
「コトが終わったら、その人は冷静さを取り戻しました。謝って、脱兎の如く逃げました。それからは、遠くからでも私を見つけると、姿を消すのです」
うっわー。気持ち分かるー。逃げるよね。相手が相手だもん。




