ほじくり返すぞ!
燈実様と御者は笑う。
「っつーことで、質より量で賄賂を狙うのはムリムリ」
「だいたい、賄賂貰ったこと、証明できねーって」
「賄賂天国じゃん」
「そんなん取り締まる法できたら、政治する人ほぼいなくなるって」
「確かに」
「牢に入りきらねーぞ。はははは」
ホラーじゃん。
「じゃ、横領をほじくり返しましょう。あるじゃないですか。北部の飢饉の食料が横領されてるかもしれない。北の国の賠償金が横領されてるかもしれない。西の国との和平条約が書き換えられて、賠償金が横領されるところだった」
「和平条約の賠償金については、未遂」
ご指摘の通りでございます。李氏様。
「そーですね。殺されかけたんで、つい。どれも陳氏様が絡んでそうじゃないですか?」
それを掘って掘ってほじくり返すぞ!
「国家よりいっぱい持ってるかもな」
燈実様は軽く言う。
私は壮観な蔵の眺めや、華港の蔵の中に、絹織物、陶磁器から東の国の刀やアヘンまであるらしいことをご報告。
「硫黄、火薬もです。あるとこにはなんでもあるんですね。そういえば、陳氏様の蔵に積荷を入れた船、一部、荷物を都に運んでたんです。きっと銀がた〜んまり入ってたんですよー。運んでった先にめっちゃでかい屋敷がありました」
私は昨日の感動的な金の匂いを思い出す。全ての侵入を拒むかのような高い塀と閉じた門扉。
$_$
銀の重みに少し沈む船。
屋敷には還俗した元僧侶が住んでいて、それは高名な方の妾だという話も加えた。
私は、貴族の熟女がイケメン僧にしなだれかかる様を想像。背徳の香りがぷんぷん。気に入ったイケメン僧を還俗させて囲うーーーいーかも。きっと熟女は陳一族の有閑マダム。
「元僧侶、妾?」
御者が妙な顔をした。
「どうかしたんですか?」
「調印に行くときに立ち寄った寺、思い出した」
「お前がNo.1になれるってスカウトされたとこ?」
燈実様が茶化す。
寺で御者は、「僧になったら儲かる」「No. 1になれる」とスカウトされた。高位僧は、寄進された土地に女や男を囲ってるらしい。御者は「肉も酒も囲った女のところで味わえばいい」とまで言われた。
「金満寺か」
へー。寺の名前、気にしてなかった。
「通行人が言ってた高名な人って、陳氏様じゃないか? 陳氏様の蔵に積荷を運んだんだろ? だったら、元僧侶が陳氏様の妾」
御者の言う通り。そう考えるのが自然。恋愛に男女の垣根はない。自分、頭硬かったわ。
「じゃオレ、明日にでも土地台帳で誰の家か調べます。麗、詳しい場所教えて」
「はい」
燈実様に地図で説明している隣で、御者が李氏様に視線を送る。
「硫黄、火薬、穀物、です、か」
「分かってる。分かってる。武器、兵糧。陳氏様のところに全ての物があるのはみんなが知ってる。けれど、それが不正な商いの物だと誰が言える?」
李氏様は悔しがる。
ところで、
「もっとゆっくり遊びながら帰っていらっしゃると思ってました」
私は燈実様と御者を見た。
「こいつが早く帰りたがっちゃって」
と燈実様が御者をつつく。
「旅先の女より都の女の方が好みとか?」
何気なく言った私の言葉に、御者はごほっごほっごほっと喉を詰まらせ、胸をとんとんしながらお茶を飲む。
「コイツ、なーんか変なんだよ。第七皇女御一行と一緒になってから」
ぶーーっ
今度はお茶を噴いた。
動揺してる。珍し。いつもクールなのに。
御者は言い訳する。
「ごほっごほっ。ほら、調べることもあったし。なんだっけ、とにかく、仕事は忘れないうちにやらないと」
なんだっけって言ってるし。忘れてっじゃん。
「あ、それそれ。調べましたよー」と、燈実様が思い出したように懐から紙を出す。




