貧富分断心の乖離
本日、李氏様との会合がある。
華港から戻ると、会合を望む文が届いてた。宿の部屋、扉の上に文が挟んであったらしく、部屋へ入ろうと扉を開けたとき、はらりと落ちてきた。それだけ内密にしなきゃいけないってこと。
3人で迎えの馬車に乗り、人目を忍んで李氏様の屋敷を訪れた。通されたのは、翠蘭と私が寝起きしていた別棟。
先の話し合いで、李氏様は、以下のことについて調べるって言ってた。
・北部の飢饉
・北の国への賠償金未払い
・財政状況
・軍の状況
4つのうち1つは分かってる。北部の飢饉。
李氏様は、それについて情報を仕入れるのに、とても苦労したとのこと。北部を治めているのは皇帝の甥。皇帝は、今は亡き弟=甥の父親と仲が悪く、北部の僻地へ追いやった。なので、北部のことについては誰も喋りたがらなかった。
[過去、北部の事情に通じていただけで、何十人も粛清されたことがありましたので]
[[[何十人も!?]]]
李氏様の家にある書庫に、それを記載した書物はなかった。まだ生傷並に新しく歴史の記録になっていないか、あるいは、隠蔽されたんだろう。
[政治に絡んでいると、しばしばあることです]
と李氏様。えー。しばしば?
[どこも同じですね]
とキラ。怖っ。
[上書や議事録を調べたら、飢饉の話がありました。それに関しては、食料を送ったと記されていました]
[食料が送られたのですね。我々は、大運河で旅をしているときに、北部の飢饉の話を聞きました。大運河沿いに飢えた人々が食糧が届くのを待っていたと]
話は次へ進む。
[北の国への賠償金については、皇女をよこせという要求に応えていないことが原因の、噂ではないかとのことです。婚姻の相談のために使者が行き、その際、賠償金の1/3を払ってありました]
1/3。中途半端〜。そんなセコイことしたから、財政難って他の国に思われるんじゃね?
[調査いただき、ありがとうございました。李氏様、実は、全くの個人的憶測なのですが、飢饉のときの北部への食料は届いていないのではないかと疑っております。賠償金についても同様です]
キラは李氏様の調査結果に疑念を抱く。
[私もです]
ええーーっ。李氏様まで?!
[それはどういった理由からですか?]
兄が李氏様に根拠を訊く。
[北部からの情報が少なすぎます。仲が悪いにしても、飢饉などという一大事。周辺の耳に入っているはずです。なのに….]
上書や議事録があったのに、下には話が降りてきていない。
[上書は大勢の官僚の前で発表されるのですか?]
尋ねずにはいられない。
[それは大きなもののみ。各地からの上書は政府に届くまでにかなりふるいにかけられる。政府に届いたとしても広い央の国全土からの上書は無数。発表されるのはほんの僅か。それ以外は内閣が問題解決の部署をふりわけ、内閣府長と大臣らが検討する]
[そうだったのですね]
納得。
[北の国の賠償金についてもそうです。私は一官僚に過ぎませんが、知らされるべきことです。それが皇帝と外交の大臣、内閣府長のみで処理されていました]
[情報の出所は?]
とキラ。
[外交の大臣]
言いながら、李氏様は眉を顰めた。手をにぎにぎされたのかも。
[確実な情報ですね。央の国は大き過ぎる故、皇帝は勢力維持に大変なのでしょう]
キラはしれっと皇帝を侮辱。つまり、内輪揉めを鎮める程度で統治する器なんてないんじゃね? って。会ったときから分かってたけど、キラって皇帝に、ぜんっぜん敬意を払ってないよね。
央の国の財政状況と軍の状況については情報公開が差し控えられた。
ところで1つ気になってることがある。
[央の国の高原の辺りが独立したって本当ですか?]
香香のせいにされてたし。
[正式な独立はしていない。民が蜂起して統治者だった皇帝の一派を幽閉した。軍の兵士達は貧しい農民出身が多かったせいか、民を止めなかった。戦わないどころか城門を開けた]
高原地域は特に土地が痩せていて農作物があまり採れない。なのにノルマの基準は肥沃で温暖な平野部を参考にしていた。西の国境辺りと一緒じゃん。
都は国の最も豊かな場所にある。皇帝も貴族も辺境の厳しさを知らない。
それ知ってる私からしたら、統治者ざまぁってとこ。
李氏様邸での会合は3部構成だった。第1部終了。




