表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/253

銀終着特殊関係人

[いくつかの箱、別の船に積み替えてる]



 木箱が運ばれた先は、今乗っている船より大きい。怪しい船と同じくらいの大きさの河川物資運搬用タイプの帆船。



 旅の最終日、偶然、華港で見た帆船が私達の船の少し前を進む。

 帆船は、都の港に寄らない。もうに都の隠し港は通り過ぎている。時は太陽が落ちるころ。私達が乗る船では、船員達が、この後どこに遊びに行こうかと相談している。



[気になるな。後をつけよう]



 兄が船長に交渉した。あ、嫌がってる。やっと帰れるって喜んでたもんね。そこへキラが近づいて、太い金の指輪を外して船長に渡す。即刻OK。金かよ。


 帆船は大河の北側にある支流に入っていった。急に川幅が狭くなる。支流に入った帆船はすぐに停泊。そこには帆のない、竿で進む小船が3艘。今度は帆船から小船へ積み替えられる。

 小船が箱の重みにちょい沈んでるじゃん。

 $_$

 その様子を、少し離れたところに船を停めて見守る。


 すっかり日が暮れて、空には星が瞬き始めた。

 兄は船長に小船の後を追うよう指示した。が。



「これ以上はムリだ」



 ニュアンスから、キラは船長が拒否したのを察したらしい。懐から銀の入った袋を出した。



[これでもダメか?]


「嫌だ」



 船長は首を横に振る。そんなやり取りをしてる間に、小船は支流のまた支流に入って見えなくなった。帆船は大河へ戻った。


 キラは懐からもう1つ銀の袋を取り出した。エゲツな。それでも船長は首を横に振る。そばにいた船員達まで一緒に。



「あの船はもっと小さい水路に入る。この船じゃでかすぎる」



 そう言った船員に兄は詰め寄った。



「どこに行くか知ってんのか?」



 兄の澱んだ眼球から目を逸らす船員は、ゴクリと唾を嚥下する。船長が、兄と船員の間に割り入った。



「これ以上は。首がなくなる」



 キラは追跡を諦めた。


 停泊していた船を動かそうとしたとき、風が荒れ、操舵に手間取った。それでもなんとか大河に向かって進む。船尾から景色を眺めていると、すぐ横の小さな水路から、さっきの小船が現れた。船体が沈んでいない。積荷を下ろした後!

 首がなくなるような件だから、気づかないふりをした。




 その夜、キラと兄が泊まる高級宿に身を寄せた。


 時々視線を感じる。

 焦げつきそうな。

 それはキラから。


 雲嵐(うんらん)

 心の中で名を呼ぶ。

 たったそれだけで、きゅうぅっと胸が痛くなる。会いたくなる。こんな風になるのは雲嵐だけ。特別。

 



[後つけようとしてた小っさい船、変なとこから出てきてた]



 報告すると、キラは都の地図を広げた。観光用の色付き絵地図。大河の支流の支流がループする場所を探す。地図には描かれていない。



 翌日、その場所へ向かった。


 途中、人だかりで馬車が立ち往生。



「自分らの街は自分らで治め、

 自分らの税は自分らで決め、

 自分らの国は自分らで考える!

 貴族に民のことは分からない。結果、政治は賄賂と利権と増税。貴族と民の分断をなくすために、身分制度を撤廃し貴族から既得権益を引っ剥がせ。我が革命の英雄、香香(シャンシャン)に誓いを」



 なんつー恐ろしい演説。聞いてる人たちは拳を振り上げてる。

 

 自分の言葉が語られているからか、兄は静かに口角を上げた。キラも「ふっ」と笑う。 


 誰かが香香の歌を歌い始め、そして合唱。勘弁。



 なんとか通り抜け、目的の場所へ行った。 

 通りから支流の支流は見えない。地図と照らし合わせると、それは家々の後ろにあるはず。

 馬車を待たせ、歩いていく。でーんと、とんでもなくでかい屋敷があった。塀は高くどこまでも続き、門扉はぴたりと閉じている。


 兄が道行く人に尋ねた。



「この近くに船着場はありますか?」


「お屋敷の裏にありますよ。でも、あれはあのお屋敷専用だから、えーっと、この道を……」



 兄は説明を遮る。



「どなたの屋敷ですか?」


「さあ、分かりません。もと僧侶で、還俗(げんぞく)された方みたいですよ」


「さぞ高名な方でしょうね」



 兄の言葉に、通行人は口を手で覆う。



「高名な方の妾って」

 


 ああ、(かね)の匂いがする。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ