穀物独占価格操作
今回の船は正規の港から出航したそうな。船の持ち主が貴族だから、港の使用許可証は不要。
[へー。誰の船なんだろーね]
[陳氏]
とキラ。件の人じゃん。
[あのさ、都ら辺の河の港にCって印の倉がいっぱいあったんだよね。あれの中身が気になって気になって。陳氏の船の人だったら何か知ってるかな。訊いてみる]
訊きに行こうとすると兄に止められた。
[オレが訊く。麗は喋るな。声で女ってバレる]
兄が船員の方へ歩いて行く。付き添わなくて大丈夫なんだろうか。見守っていると、キラが[心配?]と笑う。
[俊熙なら大丈夫。あいつ、敵意とか攻撃してくる気配に敏感]
[お兄ちゃん?]
[人間って、匂いがするし重みがあるんだってさ]
それを聞いて、思わず自分の匂いをくんくんチェック。うーん、季節がらちょっと汗臭い。
[キラ]
[ん?]
[いろいろありがとう。今日、連れてってくれることとか、央の国が狙われてるって教えてくれたこととか、兄のこととか]
[オレはやりたいことやってるだけ]
[ありがとう]
[なぁ麗。家族って、厄介だな]
[その優しい言葉もありがと]
兄が戻ってきた。
[お兄ちゃん、C印の蔵には何が入ってるって?]
興味津々。
[都にある河港の傍の蔵には穀物が入ってるってさ。米とか小麦。米はネズミに狙われるし、小麦にはダニが湧くし、困ってるって言ってた]
[あんなにいっぱい?]
[農民は税の米で手一杯なんじゃないかって訊いたら]
[ら?]
[そんなことは知らないってさ。とにかく、ほとんどは河の上流から運ばれてくる穀物。陳氏は市場の穀物をほぼ独占状態で、値段の上下が思いのままって笑ってた]
そこで米蔵を襲ったときのことを思い出す。
農民は、商人が米を都に運ぶのを阻止するために、橋を占拠してた。あれはここへ運ばれる米だったりして。
んーっと。あのとき疑問を持たなかったけど、どーして商人の蔵に米があったんだろ。税って役人が取り立てて都に運ぶから、役所の蔵にあるはず。しつもーん。
[それは、税を余分に取り立てた役人が、ちょろまかした分の米を商人に売った。それと生活用品を買うために、農民は米を商人に売って金に変える。だから商人の蔵に米があったんだよ]
[お兄ちゃん、物知り]
そーいえば「3倍の値段で売ってやる」って言われたって、お姉様方が怒ってたっけ。冷静に考えると、悪いことしてたのは役人で、その米がたまたま商人のとこにあっただけとも考えられる。物の値段は水もの。需要が高ければ上がるもの。ま、飢えてる人に3倍は、良識的じゃないけど。
[陳氏、穀物を抑えてるなんて、皇帝よりも力あるんじゃね?]
キラはパタパタと団扇で扇ぎながら笑う。
[海の方にも陳氏の蔵あるって。私がお世話になってた船の人が言ってた。貿易で仕入れた、見たことないよーなものが入ってるって噂なんだって]
華港は遠い。1日では着かなかった。夜は港で停泊した。船から下りて散歩していると。
パープー♪
ラッパの音。それと共に河から美味しい匂いが漂ってくる。なんて魅惑的な。
[あれ、食いたい!]
私がキッチン船を指差すと、キラは思いきり嫌な顔をする。
[えー。器を河の水で洗ってっじゃん。この河って、すっげー汚そうじゃね?]
[いいもーん。じゃ、キラは食べなきゃいーじゃん。私、食べる。お兄ちゃんは?]
[うっ。オレは、今は、いらない、かな?]
[じゃ、私だけ? すいませーん]
私は船を呼び寄せて冷麺を1つ注文。この暑い季節、いーねー。野菜もいっぱい入ってる。鶏肉もいっぱい。
麺を作ってくれているときに兄がキッチン船の主人と世間話。
「景気はどう?」
「悪いね。最近はカップルが1人分しか買ってくれない。仲がいいのはいいが、こっちは商売あがったりだよ。
へー。




