家族に申し訳ない
地理的なことを変更しました。
都は大河の南にあるーーーーーーー>北にある
雲嵐は北の山から都に来ていたーー>南の山から
[早急に調べます。しかし、国家のことになりますので、分かったことを全てご報告するわけにはまいりません]
[承知しております。もとより、列強諸国が狙っているという情報を伝えに来ただけですので]
キラと兄は、報告を待ちながら遊びに行くらしい。央の国には南北に走る巨大な運河がある。それを使って海の港、華港を見に行くのだとか。金持ちぼんぼんの本領発揮。
「お兄ちゃんはさー、西の国の服じゃなくて、央の国の服着ればいいのに。その方が目立たないんじゃない?」
「オレ、見えないから、ぶつかられたり、カモにされたくなくてさ。西の国の服着てれば、誰も近寄らねーの」
なるほど。もともと西の方の顔だしね。全く違和感ないわ。
その日、夕食後、私は李氏様の屋敷を出た。
いつまでも置いてもらうわけにはいかない。もう下の下の下ではないから。報酬の証文も貰ってる。
なにより雲嵐に会いたい。
ドラゴン山の馬牧場に行ってみよう。
干してあった洗濯物から使用人の服を拝借。男装してみた。イケる。香香は長身女性ってことになってる。そこが違えば特定されないじゃん? これなら平均的な身長の男性。
堂々と歩いてみた。誰も振り返らない。
夜ってこともある。顔、見えないもんね。
てくてくとひたすら歩く。李氏様の屋敷の書庫で地図を確認済み。ドラゴン山の位置は分かってる。河沿い。
建物が少なくなって視界が開けてくると、月明かりの中、山の黒い塊が、横に長く、まるでドラゴンが寝そべってるように見えてきた。
河から李氏様の家が思いのほか近かったように、ドラゴン山までもそれほどかからなかった。道に迷いながら朝まで歩くくらいの覚悟だったのに。
牧場を探してみた。南側の河沿いにあった。遠くに厩舎が見える。
探したところで、雲嵐はまだ都に着いていない。
バカだなー、今夜どこで寝るか考えてなかったよ。
眠くなってきた。
季節は夏。野宿でも大丈夫。ちょうど草がふかふかしてるとこあるし。寝よ。
ころりん
朝、5歳くらいの女の子に起こされた。
「大丈夫?」
「あ」
よく眠れた。疲れてたんだなー。むくりと体を起こすと、ぐーっとお腹が鳴った。
「お腹空いたの?」
視界に入った服の灰色で男装していたことを思い出す。
「おう。腹減った。ははは」
低い声で喋った。
痒っ。顔や手を蚊に刺されてる。
「うち来る? ご飯あるよ?」
なんて可愛い。
「ううん、大丈夫。あのさ、この辺に雲嵐ってヤツいる? 友達なんだ」
すると、女の子はぱあああっと顔を輝かせる。
「雲嵐おじさんの友達なの? 雲嵐おじさんね、ずーっと帰ってこなくて、みんな心配してるの。ね、ね、ね、友達なんでしょ? なにか知ってる?」
雲嵐おじさんってことは、雲嵐の姪? 偶然……じゃないか。馬牧場の前だもんね。近くに民家はないし。
ぱっちりした目で見つめられると、男装してることが騙してるようで後ろめたくなる。
「いや。ちょっとした知り合いってくらいだから」
「みんなね、雲嵐おじさんは下の下の下を好きんなっちゃって、家族に申し訳ないからいなくなったのかなって言ってる」
家族。申し訳ない。
下の下の下なんてやっちゃいけなかった。
「そっか」
下の下の下って、家族と縁が切れるほどの存在なんだ。
「おばあちゃんはね、最初、若い2人で誰も知らないとこ行けばいいって言ってた」
「……」
「だけどね、今はね、もうみーんな香香のこと知ってるから」
「だな」
「どうせ所帯を持ったら一緒に暮らさないんだから、たまに帰ってくるだけでいーのにって泣いてる」
「おばあちゃん、泣いてるの?」
「うん。雲嵐おじさんは香香と一緒にいるかも」
「ぁりがと」
声が震える。鼻の奥が痛くなって。涙が溢れる前に立ち去った。
異世界ファンタジーではありますが、香香(麗)の辿った往路の一部はシルクロード、都の場所を南京でイメージしておりました。復路は途中から長江。海港である華港が長江の河口辺りの寧波。
ですが、ガオが香香を匂いで辿るには、都が大河の北になければなりません。なので、都を大河よりも北という設定に変更しました。頭の中で地図を描きながら読んでくださった方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。




