貧乏国家戦争弱々
[列強諸国は、央の国が戦争の準備をできないと踏んでいます。央の国の兵士の殆どは戦争の経験がありません。素早く対処できないと]
そう話し始めたのは兄だった。
さらに補足する。
海から攻められた場合、地理的に央の国は、都周辺から軍を送ることになる。国境にいる兵士は戦争経験があるが、都近辺の兵士は平和な街を警備してるだけ。央の国土は広大で、陸続きの北、西、南の国境にいる軍が東の端にある港に到着するには何日もかかってしまう。
[陸ならまだ情報が届く。だが、海から来られたら。灯台から見つけたすぐ後には大砲が飛んで来てしまうな]
李氏様は閉じた扇子を額にやって考え込む。
[もう1つあります]
[もう1つ?]
[財政難です]
[財政難? そんな話は聞いたことがない]
[北部で多くの民が餓死したと聞きます]
[[餓死?!]]
初耳。李氏様も驚いている。
話手はキラに移った。
[北の国から得た情報ですが、北の国への支払いが滞っているとか]
なんのことか分かんなくなってきた。国同士の事情って難。
[賠償金ですか?]
と李氏様。賠償金?
分からない私に、兄が説明してくれた。北の国はチート。何年も前に央の国に勝って、毎年、賠償金として貢物を得てる。北の国としては、現在、金品や食べ物でなく、お嫁さんをご所望だとか。第七皇女が「僻地だから嫁ぐの嫌」って言ってた話ね。
つまり、
[嫁代わりの賠償金も払えなくて、民を飢え死にさせちゃうよーな貧乏国家だし、戦争なんて弱々だよねって?]
もし私が他の国でも、そう判断するわ。
「麗、もう少し言い方はないのか?」
久しぶりに兄に嗜められたし。
キラは碧眼を光らせる。
[李氏様、幾つもの国を植民地にした列強諸国の軍は強いです。長い航海で疲弊しても尚。迎え撃つには準備が必要です。兵の増強だけでなく、武器を揃えなければなりません。船で戦うことも想定して]
そこはきっと大丈夫。大河に浮かんでた央の船はめっちゃでかかったし、水軍は伝統的。軍記物では水軍が大活躍してたよ。
[央の船、大きいですよね?]
他の国の船は知らないけど。
戦争を体験した兄は意見した。
[船は、央の国の方が大きいと聞いています。ですが、央の国の船は物資運搬用。戦になると小回りが効きません]
キラも警鐘を鳴らす。
[情け容赦なく無差別に人を殺します。その様子を見せつけて言いなりにさせる]
そして兄が静かに語り始めた。
[昔、チスタンという国がありました。国民の誰もが自分達の国のことを考えて政治に参加し、平和に穏やかに過ごしていました。平和だったのと、誰もが武力での抗争を良くないと考えていたのとで、軍を持たなかったのです。あっという間に滅ぼされました]
兄のチスタンの話に場が固まった。
[[[……]]]
[小さくても豊かで栄えていました。けれど、半日で国はなくなりました。逃げるか殺されるかしかなかった。それでも上が変われば、民には普通の暮らしが戻ります。植民地は違う。民が奴隷になります]
澱んで焦点の定まらない目のまま語る兄には、凄味があった。
私達がもし元チスタン人なら、5歳の兄は国が滅びていく様を見ていたことになる。殺され、逃げ惑う人々を。
キラは航海でやってくる船は8〜10隻と予測。そのうち3隻くらいは、天候や海賊で到着しないと。
[海賊?]
東の国のアウトローな人達が、かなりヤバいらしい。金銀ざくざく採れるんだから、海まで出てこなくていーのに。
キラと兄は、状況が分かるまで、皇帝に謁見するか否か決めるのを待つことにした。
・北部の飢饉
・北の国への賠償金未払い
・財政状況
・軍の状況
調査急務。




