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国家危機の可能性

[海から戦争仕掛けてくるの?]



 キラに確認する。



[まだ戦争するって決まってはいなさそうだけど、その可能性は大]


「オレは、通訳として同行したんだ」



 と兄。



「他の人は?」



 若者が2人で来て、皇帝に謁見できるんだろーか。



「いない。大丈夫。キラは前にも皇帝に会ってっから」



 そーいえば、都に来てたっけ。()()()してるとき、会ったよね。



[大勢いると目立つし、楽しくねーじゃん。俊熙(ジュンシー)の妹探したかったし]



 そっか。探してくれてたんだ。それと、半分は遊び。

 ちょっと待った。すっごい遊びしてない?



[あのさ、キラ。闇市の商人と一緒に、なんかやった? 流行りの歌歌いながら]


[やったやった。香香(シャンシャン)の歌だろ?]


[自分らの国は自分らで治める的なこと言った?]


「それ言ったの、オレ」


「お兄ちゃん!」


[俊熙、演説めっちゃ上手いんだわ]



 知ってる。人を奮い立たせる力アリ。



[だったら、都、危険かも。『香香は碧眼の異人』って噂も流れてるよ]


[だって、俊熙、どーする?]


[だからやめとけって言ったのに。オレは、『辛いですね、

 自分らの街は自分らで治め、

 自分らの税は自分らで決め、

 自分らの国は自分らで考える、ってできたらいいですね』っつっただけ。香香の歌歌い出したのキラだから]


[俊熙だってノリノリだったじゃん]



 2人ともだね、これ。兄が知能犯ってことは分かってる。商人達にたーっぷり油を染み込ませて、キラに着火させた。


 あれ? 皇帝に謁見する人なのに、隠し港を使う船に乗ってる。



[なんで、その船?]


[暴動めぐりしててさ、さっきの商人の暴動で追われた。金払って運んでもらってんの]


(リー)。」



 兄が新しい名前で呼ぶ。なんか、こそばゆい。



「なに?」


「こんだけ国が乱れるっておかしい。今の治世ってどーなってる? オレが心配するのは、自分が捕まることじゃなくて、皇帝に『外国が狙ってる』って伝えたところで、対処できるのかってこと。あんな歌流行っててさ」



 兄は顎を触りながら考える。懐かしい仕草。



「私、政治のことは詳しくないけど、皇帝は内閣府長の言いなりって話、この船の船長から聞いたよ。船長だって(ちょく)で会ったことあるわけないから噂だけど」


陳氏(ちんし)?」


「うん」


[陳氏? ああ、イケメンじーさんね。前に会ったとき、皇帝と一緒にいた。まず、陳氏がチェックしてからしか会えねーの。土産も陳氏に渡すし。(おう)の国の税で納められる特産品も、陳氏チェックが入るらしーぜ。で、いいやつは持って帰るってさ]


[すごい情報通だね]


[西の国はいろいろ取引してっから。調印のときも和平条約書き換えられてたじゃん? 条約なんて大事な文書、絶対、皇帝の前に陳氏チェックがあるからさ、絡んでると思う。証拠ないけど]



 キラは陳氏を疑ってる。私、外交の大臣かと思ってた。



[ってことは、キラとオレが皇帝に会う前に陳氏と話すってことか。なんか、信用できない人間と大事な話するの嫌だな]



 兄が難色を示す。



[嫌でも、攻め込まれるかもってこと想定して、軍の準備してもらわないと。俊熙、妹がいる国が植民地になるの嫌だろ?]


[私腹を肥やしてる人間なんて、危ないときは逃げるだろ。それか、植民地んなった時のことを考えて、うまく立ち回る。戦争のときに1番厄介なヤツになるかも]



 兄が言う通りだと思う。噂と実像が違うとしても、それが分からない今、陳氏を通すのは危険。だったら。



[あのね、力があるとかないとかは分かんないけど、李氏(りし)様って官僚なら信用できるよ。法の部門の人。父親が法の大臣やってる]


[神様みたいな人?]



 2人とも李氏様の評判を知ってた。噂、恐るべし。


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