なって当然賞金首
都に着いたらどうすればいい?
雲嵐を探さなきゃ。
もしも会えたら、雲嵐と一緒に暮らす。
もう離れたくない。
都から離れて安全な場所で。
夜、鼻水をすする音で目が覚めた。
「春玲?」
風邪……じゃなくて泣いてる。
「……ぅぅ」
「どした? 嫌な夢でも見た?」
「香香、もうすぐいなくなるの?」
「うん。春玲はどうしたい? 船は積荷を全部、都で下ろすよ」
「アタシ、どーしよ。船長に船にいたいって言ったの。そしたら、ダメって。トラブルが起こるから、船に女はダメって」
「……」
「いい人を探してやるって。そんなんヤだよ。ここがいいのに。洗濯だって飯炊きだってするのに」
春玲は絶対綺麗になる。今ですらこんなに可愛い。きっとトラブルの素になる。
いっそのこと、醜女か、男を手玉に取るようなタイプだったら置いてくれたかもしれない。反対。素直な優しい子。
「ここ、いいとこだもんね」
「アタシ、ここがいいのに。それか、香香と一緒に行きたい」
「私はね、お尋ね者。殺されるかもしんない。……ごめんね」
一緒には行けない。春玲を巻き込んでしまう。
「結局、花街かな」
「ね、春玲。1人で暮らすってできる?」
12歳のころ、私の兄はもう戦争に行ってた。私は一人暮らしだった。
「1人で?」
「寝ぐらを見つけて、いろんなことから身を守って」
言いながら、いろんな男に狙われる春玲を想像した。ダメ。外見良すぎ。
「料理も洗濯も大丈夫」
「ううん。料理なんてしなくても食べれるものを食べるの。洗濯なんてできないくらい服はないって暮らし。一生懸命仕事して、なんとか食い繋ぐ」
「母ちゃんとの暮らしより貧乏ってこと?」
「それは分かんない」
春玲母子の暮らしを知らないから。でもきっと、春玲の母親は男の金で生きてた。私が味わった貧乏とはレベルが違う。家があって寝床があって日常的に料理や洗濯できる環境は、本当の貧乏じゃない。
考え込む春玲を見て、ムリって悟った。
船員が巷の流行歌を歌いながら帆を直す。
「「「うちらのぉ米はうちらで食べよ
取られた米ならぁ取り返せ〜♪
増税官僚太った皇帝
うちらの米でいい暮らし〜♪
香香香香ンンン下の下の下〜♪」」」
恐ろしい歌をBGMに、船長に直談判。
「春玲をもう少しだけ置いてやってください。私が引取先を見つけます」
「情湧いたか?」
「そうかもしれません」
まだ子供で、自分の力で生きていくのは難しい。
「迎えに来れる保証なんてないやろ。船降りたら分かる。香香、香香ってえらい騒ぎや。国のあっちやこっちで農民が暴動起こしとるそーや。お前さん、賞金首やで」
「賞金まで」
「賞金目当てに偽物の首が持ち込まれとるらしいぞ」
ゾワッと腕に鳥肌が立った。それって、私の代わりに誰かが殺されてるってこと。
「酷い」
「期限付きや。都についてから1年。お前さんが迎えに来んかったり殺されたりしたら、春玲は売る」
「ありがとうございますっ」
「あ、そーや、香香」
「はぃ」
「語り部のねーちゃん、お前さんのこと、下の下の下って宣伝しとったぞ」
「はあああ?!」
李氏様は否定してくれるって言ったのに。御者はあの後、語り部の彩雅で補給をしなかったんかな。
「聞いとる客は大喜びやったで。西の国のお姫さんやったけど、後宮の陰謀で央の国に売られて下の下の下んなったって」
「めちゃくちゃ」
フィクションも甚だしい。
「香香が下の下の下やったから、『身分制度をなくせ』って貴族の屋敷に火ぃつけとるのもおるって話や」
え。
下の下の下が住んでたのは李氏様の屋敷。ターゲットが貴族なら、最初に狙う屋敷は……。
翠蘭!




