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変更しました。往路の章、
エピソード「寒春荒野の謎要塞」を
エピソード「異能発揮場所不問」「六零八」「エリート天下り寺」「寒春荒野の謎要塞」に変更しました。
嵐が去った。
甲板にはどこからか飛んできた木の枝や死んだ魚が転がる。船体は所々傷み、帆は惨憺たる有様。
修繕費に頭を抱えていると、どこからか船員達が小船で何かを運んでくる。
「おーい。あっちの港から持ってきたぞー」
あっちの港って、正規の港?
小船には大きな布。長い木の棒。まさか、帆の部分、盗んできた?
「おうおうおう。こっちこっち」
「早く直そうぜ」
「木の板も盗ってこいよ」
「そりゃムリ。船切ってたらバレる」
モラルの欠如、激しすぎ。
トンテンカンテンと修理が始まった。船体をチェックする船員、木材や竹を調達しに行く船員、帆を縫う船員。みんな働き者。春玲と私は食べ物を用意した。
青空は気持ちいい。握り飯を配りながら辺りを見渡す。正規の港の方向に、立ち並ぶ蔵。壮観。
都が近づくにつれて川幅は広がり、大河という名に相応しくなる。正規の港は大きくなり、港町は派手になる。蔵の数の大きさは行き交う物資の量。
「あっちの港、蔵がすごいですね」
「ああ。望遠鏡で見るか?」
船員が望遠鏡を貸してくれた。おおーっ。見える見える。「C」って印がついてる蔵多数。
「同じ印の蔵、いっぱいありますね」
「陳家の蔵だ。都の港にはもっといっぱいあるぞ。Cだらけ。華港にも陳氏の蔵がある」
「大金持ちですね」
「そーさね。内閣府長の一族さね」
「それって大臣をまとめる内閣の長でしたっけ?」
「おうおう。皇帝の側近中の側近。皇帝は後宮にも行かず、陳氏を寝所に入れてるって聞いたぜ」
「えー。皇帝ってお爺さんですよね。想像したくないぃ」
「ははは。陳氏だってじーさんだろ。権力者なんてじーさんばっか。面白おかしく言ってるんだよ。それくらい、皇帝は陳氏の言いなりってことさね」
「そーゆーことですか」
陳氏。どっかで聞いた。確か、旅の最初に寺へ行ったとき。ヒゲの薄い人。んーっと。あ、思い出した。李氏様の元上司で、法の部門から外交の部門に異動した人。
香炉に「華港使用許可証」と「河港使用許可証」を入れて、元経済の副大臣だった住職に渡した人。
李氏様の元上司は外交部門だから、皇帝の側近、内閣府長の陳氏とは別人。親戚かな?
「香香、この次の次に停まる港は、もう都だぞ。どーすんだ? 船まであのイケメンらが迎えに来るのか? どこに停泊するかも知らねーのにムリだよな? こっちの方が早いし」
「まだ考えてません」
自分だけじゃなく、春玲のことも考えたい。春玲が自由になりたいなら、私が春玲を買えばいい。金はある。船員達はホントに無欲で、私の身体検査をしなかった。証文、お札、銀を持ったまま。
春玲はどうしたいんだろ。
「帳簿、つけてもらったけどな。あれ、もう使えんな。誰も読めんし書けん」
「そーですね」
一緒に積荷整理をしていた船員は、数字を読めるようになり、そろばんで簡単な四則演算ができるようになった。凄い早さで覚えた。でも、文字は読めないまま。時間が足りない。
「あれつけると、金、貯まるんか?」
「わかりません。安く仕入れて高く売れば儲かるんです」
シンプル。
「帳簿つけると、貯まるぞ」
積荷整理を一緒にしている船員が会話にIN。
「そうなんですか?」
両方の場合を知ってる人の言葉は説得力あり。
「今まで、足し算や掛け算分からんで、損しとったのもあるし、仕入れ値忘れて安く売ったのもある。そーゆーのなくなってええ」
「やったらお前、字ぃ覚えいや」
「な、絵で描くわ。ほんで、積荷の箱に数字の紙貼るやん。その数字と絵で分かるって」
「それ、いいですね」
「なかなかやろ」
「おお、なかなかやな、お前。やるやん」
「香香、残っとる商品、読んでくれ。オレ、絵ぇ描くで」
「分かりました」
着々と別れの準備をする。




