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女の値段は見た目

 4人は、売られたり拐われたりしてここにいる。1人は12歳、他の3人は私と同じくらい。



「この船ってどこ行くの?」


「都にある港らしい」

「そっちで色んな物が高く売れるって喋ってたの聞いたよ」



 都。

 

 じゃ、この船に乗って都まで連れてってもらおう。都に着いてから逃げよ。


 ガオが私の匂いを辿れば、船に乗ったことが分かるはず。そしたら雲嵐(うんらん)は、川下へ進んでくれると思う。


 大河は東西に流れ、都を通る。

 船は、川の流れに乗って下り、常に東から吹いている風を帆で受けて川を遡る。大河には帆船が行き交う。



 大人しく都まで運ばれようと心に決めたとき、問題が浮上した。



「なあ、2人くらい次の港で売ろうぜ。あそこなら若い女はイイ値で売れる。そしたら積荷を増やせる」


「それもそーだな」



 ちょっと待った。私は都まで行きたいんだけど。

 そんな私とは反対に、早く船を離れたい子もいる。でも、希望なんて出せない。ただ決まるのを待つだけ。


 食事を運んでくる下っ端に聞いた。



「あの、どこへ売られんです? 花街?」



 女を売ると言えば花街。



「さあな。船まで人買いが来る」


「値段ってどーやって決めるんですか?」



 ちょっと興味。



「んー。見た目がいいのはそりゃ高い。大きい街の方が高く売れるし、小さいとこだと、嫁代わりくらいかな」


「へー」


「嫁んときは、足腰ががっちりして頑丈でよく働きそうな、……子供をぽんぽん産みそーな、ケツのでかい女がいい値になる」


「……」



 興味深いわ。



「お前は西の方の顔だから、たぶん、都で売られると思うぞ。エキゾチックってやつだ」



 私以外の4人は、細くて華奢な可愛いタイプ。船底の劣悪な環境で、髪はボサボサ、服は薄汚れ、顔の精気は失われてる。それでも整った顔の造形は変わらない。

 自分の行く末は気になるのか「花街よりは嫁がいいな」と誰かがぽつりと溢す。未慈悲にも、そんな微かな望みすら木っ端微塵。



「な、お前ら、嫁がいいと思ってんのか? 買った嫁が大事にされるわけねーだろ。小さいとき、オレんちの近所に買われた嫁いたよ。朝から晩まで働かされて、夜は旦那の相手して、そいつは客まで取らされてた。花街の方がマシだろ」



 この世は愛のない交わりだらけ。そんなの、どこがいいんだろ。



「あの、どっかの屋敷の下女とかにはなれません?」



 貴族の屋敷で雇ってもらうのはムリだとしても、商人の屋敷とか。下女だったら客を取らなくても済むと思う。



「お前らみたいな汚いなりじゃ、下女は無理だろ。そりゃ商人だったら高く買ってくれるだろうがな」


「え、ちょっと待った。だったら綺麗なカッコすればいいだけじゃないですか」


「はあ?」



 会話はそこで終わったけれど、その後、船長が牢の前に来た。体を拭く水と清潔な服を用意するだけでそれ以上の利があることを話した。



「人買いはプロだから、着飾っても器量は見抜かれるでしょうが、買い叩かれないラインがあると思います」


 

 そう提案した。

 人は、金銭を多く出したら、その分大事に扱う。売られた女はマシな生活ができる。


 港に着くと、私以外の2人が選ばれた。セーフ。

 普通の町娘の姿で牢を出た。



「アタシ、逃げる」



 1人はそう言い残した。


 港の活気は船底にいても分かる。しばらくすると、ドタドタと甲板を走る足音が響き、怒号が聞こえた。海に何かが落ちる音。

 船は予定より早く、逃げるように出港した。


 食事を運んできた下っ端が教えてくれた。



「逃げるんだったらオレらから離れてからにしろよ。さっき1人泳いで逃げた、あのバカが。せっかく2倍ちょいの値段で売れたのに。他の物売ってるどころじゃなくなっちまったじゃねーかよっ。金返せって言われる前に船出したし。ちっ」



 へー。身綺麗にしただけで値段の高騰ぶりがバグってる。

 12歳の女の子は「逃げたんだ」とちょっと嬉しそう。それを聞き逃さず、下っ端は鋭い眼光を飛ばす。



「おいおい。逃げたっていいことねーからな。野垂れ死ぬか、襲われるか、もう一回どっかに売られるか」



 神機妙算。ここは身を隠す私にとって安全な場所。




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