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身長6尺怪力麗人

「ね、ね、雲嵐(うんらん)、昼間ならいーの?」


「昼間は人目があるから。香香(シャンシャン)の裸が誰かに見られるとか、オレ、耐えられん」


「そんなふーに思ってくれてありがと。嬉し」



 こてっと雲嵐の肩に頭を乗っける。


 ん? ちょっと待って。夜もダメ、昼もダメって。だったら温泉入れないじゃん。めくるめく愛欲に溺れるとか、愛の深淵を覗き見るとかめっちゃ憧れてるのにぃ。心の中で地団駄。



 メインの街道はひっそりとしていた。

 何もない草っ原にただ土が剥き出しになった道があるだけ。カエルの鳴く声が聞こえ、それは人里が近いことを知らせていた。


 広い空。満天の星。



 星の夜も月の夜も、雲嵐の肌は熱かった。



「すごく……好き」



 雲嵐の腕の中で漏れ出る言葉。



 吐息と一緒にキスをして、(じょう)を告げる。



 夜の片隅。二人で一つの熱の塊になる。

 


 慣れない。



 早く大人になりたくても、恥ずかしさにぎこちなくなる。それでも服が剥がれる度、そんなところが溶けてくる。


 好き。雲嵐との時間が好き。雲嵐の肌が好き。眼差しも唇も指もおへそも戯れる脚も。







 宿場町には噂が蔓延(はびこ)っていた。



「香香ってねーちゃんが『不正で取られた米を取り返す!』っつって小指で丸太を持ち上げてよ。そんでもって米蔵襲うぜって女共を引き連れてったんだと」


「6尺(180センチ程)の怪力の麗人って聞いたぜ」


「すげーな、そりゃ。香香って女」



 ちがーう! 何その話。そりゃ私は背が高い方だけどさ。6尺もない、5尺半ちょっと。



「で、神様みてぇな綺麗なお役人様が、見事な裁きをなさった」


李氏(りし)様だろ? 李家っていやぁ法の大臣のいる名家。貴族の役人でもオレらの味方してくださるんだな。さっすがだ」



 李氏様、評判良すぎ。



「その話聞いた近くの村も、商人の家を襲ったんだってな」


「役所の蔵ぶっ壊したってのも聞いた」


「増えたよな。暴動」


「ま、ここら辺は街だけどさ、農村はキツイもんな」



 聞こえてきた話に雲嵐が訝しげな顔。



「香香、なんかやった?」


「小指で丸太持ち上げてないよ。話に尾鰭がびらびらくっついてるだけ」



 私は橋を守りたかったの! 雲嵐を家族に会わせるために。



「なんでもよぉ、香香って女は西の国との戦を止めたらしいぜ」


「みんなが見てたってゆーから確かだぜ」



 違わん?



「西の国の軍を小指で止めたのか?」

「きっとそーだ」

「「「すげー」」」



 おーい。

 どう考えても大ボラ話の中に真実が紛れ込む。



「軍が香香を追ってきたらしいな」


「なんでだ。戦を止めたのに」


「米蔵襲ったからだろ」


「農民らは、香香を守るって方向らしい」


「小指で戦を止める女なら、守る必要ねーじゃん」



 ホントはか弱いんだからね。

 ぴょーんと聞き耳を立てている私の袖を雲嵐が引っ張った。



「急ご。軍が来る」



 速やかに人だかりを後にした。

 雲嵐は言う。第七皇女の身代わりをしたことは知られている。顔バレしてなくても、旅をしている16、7歳の長身女性というだけで限定されると。そして、私を追っている追っていないに関わらず、軍は近くまで来ているだろうと。




 そんな危うい状況で、油断。

 雲嵐が食べ物の調達に行っていたとき、私は1人だった。川の傍、荷馬車の横で洗濯物を干していた。そこに偶然、李氏様一行が通りかかった。



「おお、香香」



 李氏様が馬車から顔を出す。馬車はそのまま通り過ぎ、しばらく進んで止まった。李氏様と燈実様が降りてきた。


 2人から、私が暴動の煽動者としてよろしくない立場にあることを聞かされた。



「気をつけます」



 変な噂になってたもんね。


 そんな話をしていると、御者が辺りの様子を窺いながら「急ぎましょう」と李氏様に声をかけた。李氏様一行は去った。









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