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燈実様絶賛傷心中

 訊きたかったことがある。興味本位なんだけどさ。



燈実(とうみ)様は第七皇女の瑞華(ルイホァ)様のこと、いつ気づいたんですか?」



 調印のとき、燈実様は瑞華様の輿(こし)を担いでた。そのときは瑞華様の正体を知ってたってこと。



「2回目の調印の日の朝。いやもう。自分の鈍さに呆れたし。香香(シャンシャン)が西の国にいたときも会ったんだよ。本物が拐われたことんなってっから、国境の小さい街に隠れてたらしくて。でも、1人でホイホイで歩いてた」


「侍女の方、かわいそー」


魅音(みおん)な。侍女の名前だったわ。オレらは別の街に宿とってたんだけどさ。噂流すためにそっちの街にも行ったから。また会って、マジで運命って思ったのに」


「頑張ろうって思わないんですか?」



 文官だったら結婚できるかもしれないですよー。それって、家柄はギリOKって意味じゃん。



「実家太過ぎ」


「帝国1番ですもんね」


「ま、振られたんだろーなー」


「だろうな?」


「後宮にいるから、男の人から文をもらったのは初めてで、とても嬉しかったんだってさ。一生大事にするって言われた」


「それはフラれていないのでは?」


「オレも『イケる』ってちょっと思ったわけ。家柄は今ひとつかもしれないけど、一応、大臣出してる名の知れた家じゃん。したら。女に慣れた師匠が『綺麗にフラれたな』って」


「あ”ー」



 御者ね。言葉のニュアンスとか場の雰囲気ってあるもんね。あの手練れが言ったなら間違いないわ。



「絶賛傷心中」

 

「そーですか。どんどん食べてください」


「なんだかなー。翠蘭様といい、魅音といい。あ、魅音って名じゃなかったけどさ」


「あーゆー、色白細身美人が好みなんですね」


「みんな好きだろ」



 雲嵐は違うもん。



「まあ。ところで、条約のことなんですけど」


「ああ」


「秘書が自白の遺書残したんですか?」


「そ。李氏様から聞いた?」


「いえ、西の国で」


「もちろん、誰も秘書のせいなんて思ってねーし」



 やはり黒幕は外交の大臣。実際には、秘書に罪をなすりつけて殺し、自殺に見せかけたってとこ。



「李氏様でも手出しできないんですか?」


「ん。ムリ」


「じゃ、私も危ないままなんですね」


「そこは分かんない。今のとこ、怪しい気配はなくてさ。もう、秘書が犯人になって一件落着かも」


「え、そーなの?」



 だったら雲嵐と堂々と旅できる。



「でも、言い切れないじゃん。だからさ、この際、一緒に旅した方が良くね? 大丈夫大丈夫。オレ、守るし」



 守れなかったよね? キラに拐われたんだけど。それに、私は、雲嵐と2人がいーの♡



「燈実様方には役人としてのお仕事もおありでしょうし、私達は私達で旅をします」



 丁重にお断りした。

 ……のに。






 間もなく雲嵐は回復した。宿の外まで行けるようになると、雲嵐は真っ先にガオに会いに行った。ガオは心配してた。言葉が通じなくても不安げな瞳で分かった。雲嵐に会うと、めちゃくちゃ跳びついてた。


 途中、温泉で有名な地があるから寄って行くことにした。その地には、山の所々に温泉が湧き出ているという。



「香香、見つけたら、一緒に入ろ」


「そんな」



 両手で熱くなる頬を抑える。誰かに見られたら恥ずかしい。雲嵐に見られるのはもっと恥ずい。



「ガオも一緒に入るか?」



 雲嵐はガオにも尋ねる。

 え、そーゆー感じ? なんかエロいこと期待した私の心がしゅるしゅると萎んでいく。

 と、私の顔を見た雲嵐が「ははは」と笑う。その後、耳元で囁く。



「二人で入ろ」



 ズギューン



 あ。もうダメ。言葉の殺傷力すごい。一撃。

 今すぐ温泉見つけたくなっちゃった。出てこーい、温泉。


 目を皿のようにして湯気を探していると、温泉の案内看板を見つけた。荷馬車を停め、雲嵐と2人、いそいそと獣道を進む。


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