恋旅路陽キャ参上
長旅の疲れなのか、食べたものが傷んでいたのか、雲嵐がお腹を壊した。安静のために宿をとった。
「ごめん。同じもん食べてて、香香が大丈夫なんだから、風邪かも」
「ゆっくり休んで」
答えながら、食べ物のせいだろうって思った。どういうわけか、私のお腹は頑丈。兄といたときも、何度かこういったことがあった。
『古い饅頭があるんだけど』
売れ残りの饅頭をもらったことがある。腐った饅頭やカビの生えた饅頭。
『腐ってるのはムリだな。カビだったらカビ以外のとこ食べれば大丈夫』
ホントは、カビが生えるほど古いって時点でアウト。中身は小豆餡なんだから。結果、兄だけがお腹を壊した。
「一緒にご飯食べれなくてごめん」
「ううん。ぜんぜん」
ちょっとやつれた雲嵐は色っぽい♡ 何してても色っぽい。悪戯して笑ってても、起き抜けでぼーっとしてても、ガオや馬と遊んでても。
自分がおかしくなってる自覚あり。
「雲嵐、空気の入れ替えするね」
窓を開ける。と。通りを挟んで向かいの豪華な宿の窓に燈実様がいた。嬉しそうに手を振ってくる。
「香香じゃん! シャンシャーン」
アホかー! 外交の大臣の追手に見つかったらどーすんだよ。なんで挨拶もなく西の国境を去ったのか分かってんの?
ぱたん
窓、閉めました。しばらくすると、ドタドタと階段を駆け上がってくる音がする。そして。ノック音。
「香香、オレオレ。オレオレ」
病人がいるというのに。じゃなくても、雲嵐をこれ以上煩わせたくない。
「雲嵐、ちょっと行ってくるね」
声をかけて部屋を出た。
「おー。香香。会えた会えた。米蔵襲ってたときいたんだって? 声くらいかけてよ。全然気づかんかったし。やー、元気? 飯食おーぜ」
燈実様は相変わらずテンション高め。
「お久しぶりです。いろいろお世話になりました。でも、一緒にいて、雲嵐まで危険な目に合わせたくないんです」
「飯くらいいーじゃん。じゃさ、個室。別々に入って。雲嵐も連れて来いよ。あの宿、1階で食事できるんだよ。待ってる」
言いながら、バタバタと階段を下りて行ってしまう。ま、話くらい。私も会いたかったし。
ということで会食。雲嵐は具合が悪いことを伝えた。
「そっか。心配だな。なんかさ、この間の暴動といい、今回の雲嵐が体調崩したことといい、オレらと一緒に旅しろってことなんじゃない?」
燈実様の思考回路が謎。単になかなか旅路を急げず再会しただけ。
旅は思い通りに進まない。暴動で2日足留め。それは李氏様一行も同じ。私達が出発した後、李氏様一行は役人としての仕事をしなければならなかった。
「あはははは。お会いできてよかったです。直接お礼を言いたかったんです。いろいろお世話になりました。前いたところに噂を流してくださってありがとうございます」
「あーあれ。あそこまで効果があるとは。想定外。オレらはさ、香香が戻ってきたら、元いた場所に連れて行こうって計画してた。命の危険があるかもしれないから、2ヶ月くらいは、オレが残って護衛するって話んなってた」
「そこまで考えてくださったんですね。ありがとうございます」
「したら、男といたって聞いて。しかも雲嵐」
どうやら御者も雲嵐の顔を知っていた模様。そーだよね。文官の李氏様が知ってたくらいだから、武官の御者なら知ってるよね。
「まあ、そーゆーことに」
「おめでと。雲嵐、すげーな。ここまでどーやって来た? 誰かに伝言頼んだの?」
「ガオが。灰色狼が匂いを嗅いで、西の国まで来てくれたんです」
「ええっ。西の国まで?!」
「匿われてた屋敷に」
「すげー。そこまで」
燈実様は感心しきり。愛されてるアピールしちゃった♡ 自分らしくない。




