女米蔵襲撃破城槌
「まーったく頭くる。ブチ切れ」
野菜を買いに行くと、農家の女の人がぷりぷり怒ってた。
なるべく気持ちを逆撫でしないよう、静かに欲しい物を手に取る。
「これください」
「はい。いらっしゃい。ねー。うちらはちゃんと良心的な値段で売るよ」
「ありがとう」
怒りのスイッチに触れないよう、そっとその場を去ろうとしているのに。
「ねぇお姉さん、聞いてよ。うちらからズルして巻き上げた米を溜め込んで、横流ししようとしてるヤツがいるんだよ」
あ、捕まった。
「……」
訴えてくる目に曖昧に頷くと、なぜか周りに2人、女の人が増殖。
「酷いだろ?」
「ふざけんなよ」
「うちらなんて、米作ってんのに、稗や粟食べてさ。それも尽きてきたから、米売ってくれっつったら、いつもの3倍の値段ふっかけてきやがった」
それは頭にくるよね。どこにでもいるよね。私服を肥やそうと不正をする役人。それと繋がる悪徳商人。
3対の瞳にたじろいでいると、またまた声が増えた。
「ったく。許せん」
「橋なんか壊せよ!」
えーっ。橋は壊しちゃダメ。都に行けなくなる。雲嵐が家族に会わなきゃいけないのに。
「アイツらの家に火ぃつけるぞ」
「っしゃ」
「でかい米蔵燃やしてしまえ!」
「ついでに橋にも火ぃつけるぞ」
「っしゃ」
めちゃくちゃ怒ってるお姉様方は、腕を捲り上げた。
細っ。あの人もこの人も全員。
まともに食べていない腕。相当税を取られてる。この細い腕で重い農具を持って農作業するなんて。
あゝ。私も頭にきちゃったよ。
「米蔵を燃やすのはもったいないです。お米を返してもらいましょう」
「米を返してもらう?」
「どーやって」
「門から入って、米蔵から米を持ってくる。強奪。そこにあるのが不正で取られた米なら取り返す! だって、自分らのものなんでしょ?」
みんながゴクリと唾を飲む。
「そーだ、あれはうちらの米だ」
「見張りがいるよ」
「みんなで行けばいい。見張りは5人くらいだろ」
「よっしゃ、みんなを呼んでくる」
「家燃やすのはかわいそうだしね」
「甘いこと言ってんじゃないよっ」
「米蔵襲うぞぉ」
「「「「おおーーーっ」」」」
大盛り上がり。
「あんた、名前は?」
「香香です」
「香香、行くよ!」
ええーっ、私も!?
20人くらいで商人の屋敷へ行った。歩いているうちにも、女が1人、2人と加わる。
でかっ。遠くに見える田畑の中の粗末な家とは比べ物にならない。商人の屋敷の大きさは異様。堅固な高い塀。中に大きな蔵が3つ並んでいるのが見える。
門はぴたりと閉じている。城門のように頑丈な両開きタイプ。
「香香、こんなイカツイ門、どーやって開けるん?」
みんなで門の前に立ち尽くす。その間にも、人がどんどん増える。女と子供ばかり。男どもは橋を占拠している。
あ。
近くに材木屋があった。太い丸太が積み上げられている。
李氏様の屋敷の書庫で読んだ。丸太で門を破る軍記物。
「これこれ」
「香香、これ借りればいい?」
「「「「おおーっ」」」」
そんな細い腕のどこにそんな力が。驚くほどあっさりと丸太を門の前に移動させるお姉様方。
「これをみんなで抱えて、門にドーンって」
「よっしゃ分かった、香香」
集まってきた女の人はざっと100人。その中の力自慢が丸太を抱える。
私も丸太を抱え、力一杯声を出す。
「せーの!」
ドーン
大きな音だったが門は壊れない。
「そーれ!」
ドーン
みしっと門の隅の方が歪む音がした。
「もういっちょ!」
ドーン
めりっと音がして、門の真ん中あたりが凹んだ。
「よっしゃぁ。そーれ!」
ドーン
バキバキと門が壊れる音。よーし最後だ。最後はテンションM A X、みんなで掛け声。
「「「「そーれ!」」」」
ドーン
開いた!




