暴動で橋破壊危機
恋って、こんなに毎日楽しくて苦しいのかな。片想いして会えなかったときよりも苦しい。気持ちを確認しあったときの舞い上がるようなハッピーは束の間。あの後、会えないことが辛かった。今は一緒にいて嬉しいのに、こんな近くにいても喉の奥が締めつけられる。ときどき泣きたくなる。
数日後、御者が文を届けに来た。早馬って、簡単に追いつかれるの? ビビる。荷馬車を止めると、馬に乗ったままの御者が私に文を手渡す。「じゃ」と道を戻って行った。一瞬。あっけな。
「香香、なんて書いてある?」
「んーっとね、西の国にいたとき大変だったね、調印ご苦労様ってのと。あ、李氏様と燈実様と御者で私の噂流したんだって。私がまた、西の国境で道案内して暮らせるように。そしたら、御者が、私が雲嵐と一緒のとこに会ったって言ってたから、おめでとーって。そんな感じ。あ、報酬の証文入ってる。え。すっごい金額なんだけど」
「そりゃ、命賭けたから。今だって」
「そっか。そーだよね。拐われちゃったんだもんね」
美味しい物食べてぐーたらしてただけだけど。ちょっと太ったんだよね。雲嵐はやつれたのに。
雲嵐が「必要な人とは会える」って言ってたように、2日後、私は再会してしまった。李氏様、燈実様、御者の一行に。
李氏様には会いたくなかったんだよなー。だってさ、今まで「0」だったのが「1」になったわけじゃん。恥ずいじゃん。早速かよって感じじゃん。男性の経験人数が分かるってあの異能、マジ勘弁。
なぜ再会したかというと、橋が占拠されていたから。暴動。
簡単な迂回ルートはなし。あるとすれば、3日分ほど道を戻って、北か南に向かい、都とは別方向へ果てしなく迂回するルートになる。
橋の手前で馬車や人が溜まり、その先には竹のバリケードがある。バリケードの前には多くの人々が集まって怒りの渦が巻き起こっていた。
「橋壊すぞ!」
「「「そーだそーだ。都への橋を壊せ!」」」
え? 橋壊す? まさか。
「米を返せ」
「悪徳商人」
「役人もグルだ」
「家に火を放て」
「そーだそーだ」
いったい何が起こっているのやら。
雲嵐は速やかにその場を離れ、荷馬車を停める場所を探した。馬を休ませ、馬宿で飼葉や塩を貰う。馬宿の主人に訊いた。
「何かあったんですか?」
「役人と商人がグルんなって米や小麦の値段を釣り上げたんだよ。税で米や小麦を余分に搾り取ってさ。食べる分がなくなった農民らに、今までの3倍の値段なら売ってやるってさ」
「酷っ」
「米や小麦を、商人は都の方へ売ろうとしてる。そしたら、怒った農民が都への橋を占拠したんだよ」
役人って私服を肥やすことしか考えない生き物なんだろーか。商人が拝金主義なのは理解できる。人ってそーゆーもん?
「困ったな。オレらまで通れないなんて」
雲嵐は、農民の怒りはあまり気にしていないっぽい。
暴動にぶち当たったとき、冷静に道を戻った。私なんて、荷馬車から降りて「なになになに」って事情を聞きに行こうとしたのに。雲嵐に止められた。
雲嵐は、当事者に聞く前に少し離れた場所にいる人に尋ねるらしい。いきなり当事者に訊くと、感情的に同調を求められるからって。兄弟喧嘩で学んだって。
「雲嵐も兄弟喧嘩するの?」
「んー。ほとんどしない」
「なんか分かる」
雲嵐と私は仕方なく、荷馬車の中で泊まった。2泊。
雲嵐は飄々としてる。
私が知ってる男の人の誰とも違う。李氏様は優しく穏やかな方。でもって、実は自信のないヘタレの一面がある。燈実様は誠実。兄に似てる。御者はチャラくてクール。仕事絡みの用心棒や山賊のおっちゃんらは喧嘩っぱやくて直情的だった。商人は狸ジジイ。
キラは? 子供っぽい。政治とか国とか理想を語るのにね。




