過去のちゃっかり
「あれは私もびっくり」
たくさんの農民が武装してて。めちゃくちゃ心強かった。絶対的な味方。
「香香のこと知ってるって人らからいろいろ聞いた。田んぼや畑、こっそり広くした話とか」
「あ、うん」
税は、田んぼや畑の広さから決まる。同じ場所を使っていれば、もう役人は測量しない。で、田んぼや畑の隅の方は空間がある。例えば、稲の苗をあと1列から3列植えられるほど。見落としがちなその部分は意外と広い。そこも農地にすると、今までより一周り広くなり、その分多く収穫できる。地味だけどさ。
「もー、喋っちゃダメって言ったのに」
以前、銅山跡の洞窟で燈実様は「調べに行った人は農民の口が固くて教えてもらえなかった」って李氏様に報告してた。なんで雲嵐には教えちゃうわけ? きっと、調べに行った人はイケメンじゃなかったんだ。
「計りの錘変えたのとか」
「あれは、役人がズルしてたから」
クソ役人は、米や小麦を測る錘を重くして税を多めに徴収してやがった。でもって、その分をこっそり自分の懐にIN。私は、正しい錘にしただけ。ちょっと人気のないときに不法侵入。だから喋っちゃダメって言ったのに。
正しく測った分から懐にINし続けて上にバレた。クソ役人はいなくなった。
「村中の家を回って、納税用の絹織物を集めた話も聞いた」
「うん。たまたま知ってたから。西の国では絹織物が高く売れるって」
農民にとって税の負担は重い。嵐、日照り、冷害、イナゴ。それでも税を納めなきゃならない。米や小麦がなければ、布や特産品や金。それもなければ、兵役。兵役は家族と離れるし、農作業をする男手が減る。
(注:このお話は異世界ファンタジーです)
私は、みんなが税として収めようとしていた絹織物を、村中から集めた。それを西の国で売って、銀に替えた。
西の国は、絹織物を央の国の都で仕入れて自国に運ぶ。都から西の国までは何日もかかるほど果てしなく遠い。当然、商人たちはその分値段を高くする。
住んでいたのは西の国境付近。
絹織物は、すぐ傍の西の国へ直で売ると、商人達がつり上げた高い値段で売れる。
私は絹織物を売って入手した銀を央の国で銅に替えた。西の国で銀は銅の100倍、央の国では150倍だから。央の国で銀を銅にに変えると、西の国で変える場合の5割増。更に銅を金に替え、絹織物の値段に応じて1軒ずつ配った。もちろん、自分の取り分はちゃっかりがっぽり貰ってる。
農民達はそのお金で税を納めた。
これは規約違反スレスレのかなりグレーなこと。税は原則物納だから。用意できなかったらお金でもいーよって感じ。とりあえず役人には知られない方が安全。
なのに雲嵐に。ま、分かるよ。雲嵐はどう見ても平民仲間。農家のおばちゃんらは、けっこうイケメン好きのミーハーなんだよね。警戒心もなくなる。
「香香のこと守るって言って、武器持ってきたみたいだった」
「すっごくいい人達なんだ」
米や野菜をいつでもお裾分けしてくれる。
「香香、本当に命、狙われてるの?」
「たぶん。憶測でしかないんだけど。殺されるかも」
「そんなことさせない」
がっと雲嵐が私を抱く。骨が軋むほどの力で。
体を離すと、雲嵐は気まずそうに「ごめん」と小さな声で謝る。
再び同じ方向を向く。
訪れた小さな沈黙。
二人きりの空間が妙に気恥ずかしい。それは雲嵐も同じなのか、地面を見てる。
狭い小屋の中。ぴったり隣に雲嵐。体温が伝わってくる。
「綺麗になった。香香」
「第七皇女の身代わりだったから」
自分の薄桃色の袖口を見つめる。窓からの光が刺繍を浮かび上がらせている。結い上げて両側に二房垂らした髪。
檻の格子越しにお喋りをしてたころ、いつも思ってた。綺麗な姿を見せたいって。




