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じーちゃん父さん




 不都合勃発。

 第二皇女が後宮で事故。階段を13段転げ落ちて骨折。



[ええーっ。西の国の後宮って、そんな危ない階段あんの?]


[ちげーよ。子供を庇ったらしい。子供が突き落とされそうだったんだろ。あー、痒っ]



 キラはなんでもないことのように、包帯の中に棒を突っ込んで掻き続ける。包帯が蒸れるらしい。



[突き落とされる?]



 なぜ?



[皇后様がここにいるのも、同じ理由。命狙われたんじゃね?]



 皇后様が西の国の都から離れた辺境にいるのは、自分&子供の命を狙われたからだそうな。後宮を出たのは異例中の異例。その甲斐あって、王子は無事に育ち、隣の央の国から第二皇女を妻に迎えた。戦死してしまったけれど。



[この国はさ、夫が亡くなると、女性の立場が弱くなるんだよ。子供がいない女性は大抵自害するのが一般的]


[はああ?]



 なんで?



[子供いたら、育てなきゃいけないから生きてるけどさ、実家に帰って育てる。女が稼げる仕事はほとんどないから]


[王子の妃だったら特別でしょ?]


[で困ったわけ。央の国との関係があるから返せないじゃん。子供もいるしさ。だから皇帝が4番目の妃に迎えようとしてて]



 げー。

 4番目の妃って、第七皇女の嫁ぎ先候補。別のとこでそんな話もあったんだ? 子供が王家だからって、実家に帰ることもできず、その地で暮らすには亡き夫の父親と結婚。なんかもう理解不能。キモすぎる。

 だったら、子供にとって、じーちゃんが新しい父さん?



[……]


香香(シャンシャン)、めっちゃ変な顔]


[うん]


[話の続きしてもいい?]


[うん]


[王位継承権が1番だった王子が戦死して、王位継承権が1番になったのは、別の妃の息子。だけど、第二皇女が皇帝の4番目の妃になると、王位継承権が1番になるのは、第二皇女の息子。だから息子の命が狙われた。で、庇って階段を落ちた]


[複雑ってより怪奇]


[まーなー。央の国だって、似たようなもんだろ?]



 そう言われて、いきなり翠蘭(すいらん)の細い喉が浮かんだ。後宮はどこも魔窟。



[王位か。そんなんでまともなのが選ばれるわけねーじゃん]



 湯圓(タンユエン)ババアに怒られそうな言葉遣いって自覚はある。キラの前では最初から素。



[でもさ、香香。世襲って、国を安定させるために合理的なんだって。政治は官僚がやればいい]


[いつか、決定権も官僚が持てばいいって言ってなかったっけ? キラ]


[それは今でも思ってる]


[じゃ、合理的じゃなくなる]


[王のポジションをみんなで合理的に選ぶんだよ。民主制]


[官僚だって世襲なのに?]


[央の国は科挙があって、優秀な人間しか官僚になれないんだろ?]


[らしい。それもなー。読み書きができるのはアッパークラス。学校に通うのも家庭教師を雇えるのも書物を買えるのも、金のあるヤツだけ]


[それのどこがダメ?]


[例えばさ、私が知ってる中で1番頭が切れるヤツは、世を捨てた貧乏な坊さんだった。科挙なんて受けてない。生まれたときから貧乏。1番人望があったのは山賊の(かしら)で、山賊だけじゃなく、近所の百姓からも一目置かれてた。でも金なんてたぶんない]


[国動かすんだから、坊さんや山賊じゃダメだろ]


[言いたいのは、優秀な人材は金持ちだけじゃないってこと。たぶん、あの坊さんと山賊の頭は、政治をしたら凄い手腕だと思う。でさ、貴族が知らないうちらの生活、考えてくれる]


[香香と喋ってると、楽しー]


[へ?]


[オレが通ってこなかった世界、いっぱい見てきたんだな]


[そっか?]



 それって、貧乏な庶民の世界。



[オレ、自分は政治を行う側にいるって思ってたし、民は治めるものって考えてた。ちげーじゃん。民の中に政治をするヤツがいた方がいいのかもな]


[どーでもいい。戦争がなくて食えりゃ]


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