遠くで暴利を貪る
[香香、あなたは先入観なく考えることができます。1つの考えとして聞かせてください]
キラに連れられて入った皇后の部屋は、簡素だった。
身に纏う黒い布、はっきりした二重の目、香。全てがエキゾチック。顔の大部分が見えなくても分かる。美人。西の国は美形しかいないんだよね。
高貴な方との謁見と構えていたら、テーブルを挟んで正面に着席するよう促された。
命を助けてもらえたことの礼に続き、私は自分の推測を語った。
[2つの可能性があると思います。
1つは、私達の国に、私服を肥やそうと企む者がいる可能性です。西の国から銀で受け取る賠償金は、央の国が銅で受け取るはずの賠償金の150倍の価値があります。銀で受け取ってから一部を銅に変えて政府に渡し、残りを自分のものにする……]
国境に関しても、国境線が変更された部分に検問所を作り、通行料や密輸で私服を肥やそうとしているのではないかと説明した。
そして、もう1つ。
[2つ目は、戦を望んでいる者がいる可能性です]
[戦を?]
[両国が和平条約を結ぶ理由の1つは、甚大な戦費です。逆に言えば、それだけ誰かが儲けているのです。儲かっている者からすれば、戦を続けてほしいでしょう。和平条約が締結されると、今後、戦はなくなり、莫大な収入源を絶たれてしまいます。ですが、調印でトラブルが生じて、そこから戦に発展すれば、これからも儲けることができます]
戦は儲かる。10代の小娘ができる程度の仕事ですら法外な値段だった。武器、火薬。流通が商いだったら、笑い止まんないと思う。小娘は戦場近くで命を張って小金を稼ぐ。黒幕は遠くの安全な場所で暴利を貪る。
[分かりました。私が皇帝に直接伝えます。事態の収拾を図らねばなりません。調印はやり直すことになるでしょう]
調印の方法を考えた。
1枚の紙に西の国と央の国、2つの言語で条約を綴ったものを用意し、それに調印する。それぞれの国が保管できるよう、同じものを2枚。
2枚が同じであるという証に、割印を行う。商人が金銭のやり取りでこの方法を使う。
[割印というのは、央の国の文化ですね]
皇后は、皇帝に提案する文を書いた。
キラは心配する。
[今回のように、また偽物だったらどうするのですか?]
確かに。
[どんな方法で調印をするにせよ、次回は2人の顔を知っている者に立ち会ってもらいます。こちらには央の国の第二皇女がいますから]
ナイスアイデア!
そうだよ。そーゆーときのための結婚じゃん。前に友好関係目的の結婚のこと、クソみたいな方法って言ったの取り消す。
ナイスアイデアには違いないけど……。
[そしたら、私が偽物とバレてしまいます]
さーせん。私の所為じゃないけど何だか申し訳ない。
[香香。それについては考えさせてください。但し、偽物であることは絶対に明かしません。あなたの命は守ります。まず、貴方が第二皇女と会う機会を設けましょう]
[ありがとうございます]
2日後、大臣が言ったよりも1日早く、捕虜が解放された。
同時に西の国の皇帝により、偽条約の内容が央の国へ伝えられた。
いやぁ、どーなんだろ、それ。だってさー、1番怪しいの外交の大臣じゃね? じゃなかったら、その側近。
[央の国に伝えたってさー、握り潰されるかも]
キラに言うと、それくらいは考えてるんだって。国境に待機している央の陣に伝えると同時に、遥か彼方、都にいる皇帝に使いを送ったらしい。
[どっちなんだろな。銀の149/150を横領しようとしてるのか、戦争を続けて欲しいのか]
キラは碧色の瞳で忌々しそうに鈍色の東の空を見た。
今ごろ、央の国はどうなってるんだろ。本物の第七皇女は身を隠してるのかな。




