国境で利を得る者
今までの国境は山の尾根。空から見ると山の真ん中あたりが国境。西の国の条約はそのまま。
央の国側の条約だけ、山全てと、山の麓に流れている川までが央の国の範囲。
[バレないかも]
[なんで? 香香の国、どーなってんの?]
[山賊がいる山。どっちの国のもんでも気になんない辺鄙なとこだから]
[へー。だったらいらねーじゃん]
ホントだ。欲しがる意味が分かんない。
[なんでだろ]
実は銅が採れるとか。銀が採れるとか。そんな話、聞いたことない。
[香香、詳しー]
[その辺に住んでたから]
[へー。ここより、もうちょい北だっけ]
[うん。そこで道案内してた]
[ええっ、危なくね? 山賊いるんだろ?]
[山賊、知り合い。私がいたら客は襲われないの。用心棒もいたし]
私を守ってくれる、わんこもいた。
[グルかよ]
そんなとこ。だってさ、両替商のオヤジやその辺に住む人は、旅人に道を訊かれたらこう答える。
『ああ、あの山は獣道ばっかで案内がないと抜けられないよ。山賊もいるし。その辺で女の子が道案内してる。あの子が一緒なら大丈夫』
で、山賊のおっちゃんらには、ときどき酒や野菜を渡す。Win-Win。
[顔見知りってだけ]
山賊のおっちゃんらはバイリンガル。西の国の言葉も央の国の言葉も話す。お客様(?)は両方の国の人だから。自分がどっちの国の人間か気にしていないし、国境が山のどこかなんて、ってより、国境って認識もナシ。
[ちょっと南にメイン街道あるのに。道だって広くて街も大きいじゃん。なんでわざわざ北を通る人がいんの?]
[メインの方は検問所があってさ]
正規の商人は裏で役人と繋がってるから通れるけど、普通に通ろうとすると袖の下が要る。
検問所には両国の兵士がいる。通る人、積荷は調べられ、通行料+袖の下を払わなければならない。チェックは厳しい。袖の下が多ければすぐに通れる。なければ、半日から1日足止め。通れない場合もある。
そんな場所を避けて、少し北のルートを使う者が多かった。細い山道で、慣れてない者には道案内が必要だった。私は、検問所のない国境を勝手に行き来していた。これ合法。要するにガバガバってこと。無理っしょ。地続きの国境全部を見張るなんて。
キラは[役人、悪いことやってんなー]と飽きれた。
[西の国は違うけどさ、央の国は、賄賂天国だから]
自分で喋りながら、ん? と気づく。
もしも、国境が山を含めた川のところになったらどうなるのか。
北に検問所がなかったのは、国境が山だったから。川沿いだったら検問所ができてしまう可能性がある。
そもそも、政府が国境を決めたからといって、下々の者まで通達が行くのは、大きな街があるようなメインの場所だけ。うちらの国の下々は、政府の施設ができたところで「ふーん。そーなんだ」と受け入れるだけ。
これはこれは、検問所をもう1コ作って、通行料と袖の下を取ろうとしてたのでは?
[どした? 香香、黙っちゃってさ]
[ね、西の国って、条約で国境を決めた後、チェックする?]
[チェック?]
[仮にもし、今回調印されちゃってたら、西の国と央の国で国境違うじゃん。それ、気づく?]
[あの山だったら気づかねーし]
[じゃ、あの山の麓の川んとこに検問所ができたとしたら?]
[気づかねーかも。ただ、気づかねーから、検問する兵士をこっちから派遣しない]
[それ狙ってるかも。好き勝手できる]
[好き勝手って。せいぜい通行料と袖の下くらいだろ。検問所まで作ってするほどのことじゃ]
[そこで、賠償金を銀で受け取る]
[あ、それだ]
それと、
[武器や火薬]
何度も運んだことがある。ロバを借りて。
メインの検問所では絶対に見つかってはいけないもの。




