またかよLO V E
「あまりお一人で出歩かない方が良いのではありませんか? お送り致します」
私が述べると、燈実様が耳打ちする。
「香香、あれくらいの金額、取り戻そうとすんなよ」
宿までついて行って、金を取り立てると思われてるし。燈実様の心ない発言を無視し、宿まで送り届けた。案の定、宿はざわついてる。女の子の姿を見た侍女が半泣きで飛んできた。一見落着。
「綺麗だったなー。すっげーいいとこのお嬢様なんだろな。いーなー。あーゆー俗世を知らない感じ。どこの子か聞いておけばよかった。嫁にするなら、あーゆー子がいーなー。家帰るの楽しみじゃん。あの子が嫁だったら、側女作んない。なーなー、さっきオレ、結構カッコよかった?」
と燈実様がハートを飛ばしまくる。呆れるほど面食い。翠蘭と同じ系統の美人かも。
「男らしかったです」
「だろだろ?」
マジで気づいてない。それとも私の勘違い?
2日後、再び女の子を見かけた燈実様はテンションあげあげ。
「ヤッバ。あの子じゃん。めっちゃ偶然。もうこれ、運命なんじゃね?」
燈実様は大喜び。女の子はまたも1人。それこそヤバいって。
燈実様と私を見つけると、花が咲いたようにぱあああっと笑う。その笑顔が燈実様の心をブッ刺していることは間違いなし。あ〜あ。
女の子は、手を振る燈実様を笑顔で通り過ぎ、私の前に立つ。
「先日はありがとうございました」
深層の姫君は殿方に慣れていないのか、私の方を見て話す。そこへ侍女が登場。年齢は私より2歳くらい上に見える。
「あ! 探しましたぁぁぁ。お願いでございます。勝手にいなくならないでくださいぃぃぃ」
抗議する侍女に、女の子は口の前で人差し指を立てて「しっ」と言う仕草。
漢燈実様が果敢に挑む。
「やぁ、また会ったね」
ニコニコする燈実様に「そのような口の利き方……」と言いかけた侍女が、女の子にこっそり脇をつねられている。見ちゃった。
「ごきげんよう」
「オレ、燈実。君の名前、聞いていい?」
「魅音と申します」
「魅音か。素敵な名前だね」
燈実様がアルトボイスで優しく微笑むと、侍女が「そんな」と頬を赤らめる。あ、この人の名前遣ったっぽい。
「いつまでこの街にいるの?」「偶然が2度も続くなんて縁あるよね」「今日も綺麗」。道を歩きながら、燈実様はハートを大量生産。2人の後ろを、侍女と私がストーキング。私は帰ってもいーんだけどさ、どのタイミングでアホ燈実様が女の子の正体に気づくか興味あるじゃん。女の子の正体は単なる私の憶測。答え合わせもしたいし。
不意に女の子が振り向いた。
「ご一緒の方のお名前は?」
え、私?
「香香と申します」
「香香……」
女の子は私の名を口の中に閉じ込めるように唾を飲み、私と並んで歩いていた侍女は一瞬だけ固まった。知ってるんだ。身代わりのこと。きっと、私が殺されることまで。
燈実様だけが同じ速さで歩を進め、女3人で遅れた分をかき消すように追いつく。
先日と同じ、街で1番大きな宿の前まで送った。
同じ通り、少し離れた大きくはない瀟洒な宿に帰る。燈実様は部屋に戻ると急いで恋文を書き始めた。
一応、燈実様に軽くジャブを打っておいた。
「第七皇女様御一行はどの宿なのでしょうね」
アホ燈実様は普通に返事。
「この街で1番大きい宿。今日、魅音を送ったとこ」
「じゃ、魅音様は、御一行の一人って可能性もありませんか?」
「まさか。どこの子か聞きたかったけど、こっちの身を明かせないじゃん。だから聞いてない」
「ごもっとも」
「家は都って言ってたから、上手くいったら、帰って結婚する♡」
「……」
一人でここまで盛り上がれるなんて。もはや才能。




