表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/253

異能発揮場所不問




 長い旅が始まった。


 移動は目立たぬように粗末な馬車。但し、中はゴージャス。ふわふわのクッションや枕、高価な膝掛けが用意されている。


 御者は燈実(とうみ)様と同じ部署の武官。但し、御者ファッション。イケメン。ちょっとチャラい。

 李氏(りし)様は私に紹介するとき、またもや「いい仕事しただろ?」的に扇子の下で親指を立てた。

 

 御者は身代わりのことも、()()()がビジネスってことも知っているらしい。



「大丈夫。口硬いから。女癖は悪いけど」



 と燈実様。その2つが同居するって、あんま、イメージ湧かない。



「気をつけます」



 燈実様に答えると、とんだお門違いだった。



「あ”ー。大丈夫。香香(シャンシャン)に……仕事関係に手ぇ出すほど不自由してねーから」



 ん? 言いかけたよね。ホントは「香香に手ぇ出すほど」って言いたかったんだよね?

 離れた場所にいる御者にちらりと目をやると、道行くお姉さん達の視線を集め、それに笑顔を返している。チャッラ。







 異能は場所を選ばない。

 馬車の中から行き交う人々を眺める李氏様は、額に手をやって奥に引っ込み、へたり込む。



「どうなさったんですか?」


「数字が見えすぎる」


「難儀な異能ですね。いつもだって見えてるんですよね?」


「職場はほとんどが男だから、たまにしか数字は見かけない」



 そこで燈実様が茶々を出す。



「職場に出入りしてる年配のご婦人が0で、気の毒がってましたね。オレ、どの人か分かっちゃいました。はははは」



 この異能、女の敵。



「こら、燈実」


「あの人は未婚だから仕方ないですよ。逆に未亡人なのに数字が増え続けてる人の方が……」


「こーら、燈実」



 身近にそーゆー人がいるわけね。

 叔父と甥だからか、上司と部下というよりも、兄弟っぽい。


 馬車が止まった。

 大きな寺の前。高い塀は城壁のよう。分厚い門扉。塀の上に反った屋根が見える。なんだろ。この感じ。めっちゃ金の匂い。



「馬を休ませるんですか?」



 ぴたりと閉じた門扉は侵入者を拒んでいる。たとえ開いたとして、女や馬を入れてくれるんだろうか。



「元上司から頼まれたものがある。ついでに馬に飼葉を分けてもらおう」



 約束済みなら通してもらえるよね。

 御者が門扉の横にあった銅鑼を鳴らすと、塀の上の見張り台から誰かが確認してる。塀の上が歩けるようになってるじゃん。手すり付き。まるで戦いのための砦。


 門扉が開いた。


 馬車で通り抜けると、広大な広場があり、それを囲むように建物があった。馬車はすぐ左に折れて進むよう促され、立派な建物の前で李氏様、燈実様、私を下ろしてどこかへ案内されて行った。


 李氏様、燈実様と共に豪華な部屋へ通された。壁一面に見事な梅と鳳凰が描かれている。勧められた椅子は彫刻が施され、ストイックとは正反対のものを感じる。



 色白の下膨れ、お肌てかてかの住職が現れた。美味しいもの食べてそう。



「おお! 貴殿が李氏様ですか」



 住職は感嘆。駆け寄ると李氏様の手を取り、過剰な挨拶をする。ベタベタと肩や腰に触れ、手をにぎにぎ。李氏様、めっちゃ嫌そう。




「このように素晴らしいものを。なんと趣味の良い。運んでくださりありがとうございます」



 テーブルを挟んで李氏様の正面に住職。李氏様が手渡した木箱には香炉が入ってた。蓮の模様で、てっぺんに金色の獅子が鎮座。縦横高さ1尺(30センチ程)以上。特大。へー。これが元上司からの頼まれもの。



「文も預かっております。とても感謝していると申しておりました」



 李氏様は住職に文を渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ