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私達は死にません

「あのさ、オレにはいつも通りに喋ってよくね?」



 燈実(とうみ)様は私の言葉遣いに我慢できない様子。



「一度戻すと、もう、上品に喋れなくなるんだって」



 ああ、一瞬で戻っちゃったじゃん。そんな私に「香香(シャンシャン)」と李氏(りし)様が注意する。



 ばさっ



 机の上に地図が広げられた。やった、地図! 課題だったんだよね。



「ここが私達がいる都。ここが西の国境、調印する場所だ」



 李氏様は地図の2つの点を指差した。いやもう全く分かんない。ひょろっとした線と字と。



「これはなんですか?」



 私は所々に描かれている絵のようなものを指差した。



「山だ」



 と李氏様。



「じゃこれは?」


「道」



 李氏様は地図の見方を教えてくれた。特定の範囲を平面で表してある。用途に合わせて様々な地図を使う。地図によって、範囲、大きさ、表示されているものが異なる。今見ている地図は、国内全土を表したもので、主に旅に使うもの。山、川、主要な道、大きな街が載っている。へー。ついでに、検問所ってゆー、通る人をチェックするところがあるって聞いた。


 そーいえば、(さら)われてここへ連れてこられるとき、「静かにしろ」って言われた場所あったっけ。私は荷車の上の籠の中にいて、それを布で覆われた。

 例えば逃げたら、私は検問所を避けなければいけないわけね。



「第七皇女の御一行は明日出発する」


「え、もう?」


「大丈夫だ。第七皇女の馬車は遅い。護衛や侍女を引き連れての大移動だから。国境に着くまでに何日もかかる。その間、燈実から護身術を習えばいい」


「はい」


「私達は3日後に出発、御一向より少し早く到着する。私の仕事という名目なので、途中、何箇所か地方支部や裁判所に寄るが」



 裁判所?



「李氏様って、どんな仕事なんですか?」



 聞いてみた。



「法部門の官僚だ。だから、そういった関係の場所に顔を出す」



 そこに燈実様が情報を付加。



「さっき来てた大臣はさ、後ろめたいことやってんだよ。たぶん。祖父は法の大臣。だから怖くてペコペコしてたんだろな」



 へー。李氏様の父親は法の大臣なのか。で、身内を自分とこに就職させた。皇帝が世襲制なら貴族も世襲制で、官僚も半ば世襲が(まか)り通ってるってわけね。



「まあ、危険なのは後だから。行きは楽しもう」



 と、李氏様はまるで死ぬ前に楽しんでおこうとでも言いたげ。燈実様はやや深刻な表情。そんな2人を安心させるために予言を1つ。



「私達は死にません」


「は?」「何言ってんの? 香香」


「李氏様が死なない理由は、その異能がまだ李一族に()()を与えてないから。燈実様が死なない理由は、子供がまだいらっしゃらないから。玄孫に受け継がれるという予言が燈実様の孫と仮定した場合ですが。私は運がいいから死にません」


「アホだ」



 李氏様が呆れる。



「李氏様とオレは分かった。香香の理由、根拠なくてウケるわ」



 バカにしてるし。



「運、いいのですよ。本当に。まだ1歳だったのに戦で生き残りました。それに、ここへ来たではありませんか。暮らしぶりは格段に上がりました」


「いやー、それはどうなんだ?」



 李氏様は首を傾げ、燈実様は私に問う。



「調べたら、ここに来る前、結構稼いでたじゃん。もっといい生活できたんじゃない? なんで」


「兄を待っていたのです。国境は、治安の悪い場所。いい暮らしなどしたら狙われます。雪で山が閉ざされる冬は収入0。それに備える必要もありました」



 女ってだけで危険。両替の仕事のときは用心棒を雇ってもらった。スネに傷持つ荒くれ者。幸い、用心棒達は、私のことを「仕事をさせられてる可哀想な女」と思っていただろうし、彼らは私の儲けに興味がなかった。


 隠しておいた金と仕事関係の店のオヤジに預けた金、まだちゃんとあるかな?






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