交点に死亡フラグ
李氏様は自分に死亡フラグを立てた。
「とすると、燈実の子供に、私が直接引き継げないってことになる。私は早死にするのか」
玄孫に引き継がれる予言が燈実様の子供のことだったら、そうなる。燈実様は20歳。貴族のぼんぼん。既に縁談はあるだろう。数年のうちに結婚して子供が産まれる。その子が分別のある年齢になる前に、李氏様は他界すると考えられる。
「まさかそんなこと」
と燈実様は李氏様の盃に酒を注ぐ。
記録を読んでいて分かった。異能は本物。異能の役立つ確率は100%。
玄孫の予言があり、人を選ぶ異能が燈実様を選んだ。2つの異能の交点。そして翠蘭。
きっと李氏様に何かが起こる。
不吉さに空気が澱む。
こーゆー時は、強引に別の話。
「あ、他にも色々と面白いこと書いてあったんです。異能の武勇伝はすっごくいっぱいで。洞窟の石についてもありました。あれ、最初は普通に字が掘ってあって、何代か後に受け継いだ人が細工してました」
不自然な会話の方向転換。
「あ、あの水かけたら字が出てくるやつ?」
それでも燈実様は乗ってくれた。李氏様はまだ死亡フラグを引きずっている。
「はい。あれって、字のとこに同じ色の土を埋めて固めてあるんです。水かけると、先に字のとこに染み込んで字が見えるけど、すぐ周りも水が染みこんで字との境目がなくなって、字が消えちゃうってゆー」
「へー。おもしろ」
「でしょでしょ。秘密を守るために、記録した書物は最初、閉鎖した銅山の洞窟にあったみたいっす。でも、カビ生えたりしたから、ここに別荘を建てて書庫作ったって。そのとき、書き直したのもあるみたいで」
「まさか香香、全部読んだ?」
「はい。予言だけを抜き出しました。引き継がれてない予言もたくさんあったんです。えーっと1つ目『北からの蛮族に降伏せよ。さもなくば死体が堰となり血の川が溢れる』って」
李氏様は答えた。
「それは終わった。チンギス・ハーンのことだ」
私は順に予言を読み上げる。
「『山を手放してはいけない。全ての力の源となる液体が現れる』『山を手放してはいけない。黒いダイヤへの道となる』」
「本家の山だ。しっかりと伝えよう」
「『十の国乱れしとき先頭に立つな』」
「え、マジで? そんな昔の記録もあるんだ?」
燈実様が驚いている。
「あ、じゃ、これはもう終わった予言なんですね」
自分の代で完結する予言についてはそのことが記録されていた。でもさ、代を跨ぐときとかずーっと後に持ち越されるときって、何も書いてなくて。予言だけ残されたの多すぎ。
「『海運に制限ができることは李に益をもたらす』ってのは?」
「それは、今のことだろう。確かに李は内陸が拠点。港からの輸入に制限があることで利益を得ている」
「んじゃ、これも終わったやつ」
箸を口に咥えたまま筆を取り、印をつける。それが終わると筆を箸に持ち替え、米を口にかきこむ。
「香香、食べるか書くか、どちらかにしなさい」
お貴族様が何か言ってる。
「次、『世界が乱れるときは李一族誕生の地で静かに学べ』」
「世界? まだだ」
リストアップした項目を読み上げると、半分は終わったことが書かれていた。
しばらく無言で飲み食いしながら他愛ない話で笑う。
「燈実様は新しい出会いとか、あったんですか? モテそうですよ」
尋ねると、燈実様はすんとする。
「出会いがない。職場なんて男ばっか。飲みに行っても知り合うのは玄人でさぁ」
だよねー。武官だもんね。
「香香こそ、推しはどーなった。イケメン猟師の雲嵐」
李氏様は私をイジろうと聞いてくる。
「まあ、ときどき通るんで。ガオをもふもふさせてもらってます」




